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『ラ・ラ・ランド』に劇的勝利した『ムーンライト』のここがすごい!

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 いま世界中で大ヒットしている『ラ・ラ・ランド』ですが、そんなすごい作品を押しのけてアカデミー賞でメインである作品賞を劇的に受賞した映画『ムーンライト』。この映画って一体何がすごくてアカデミー賞作品賞を受賞したのでしょう? そして何がここまで絶賛されているのでしょう? 『ムーンライト』の何がそんなにすごいのかご説明しましょう!(文・構成:森田真帆)

■世界中が驚いた! アカデミー賞での劇的な受賞劇がすごい

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世界中が驚いた劇的な瞬間! 真ん中がジョーダン・ホロウィッツ Winter / Getty Images

 今年のアカデミー賞授賞式に激震が走りました。授賞式で最後に発表されるメインである作品賞を『ラ・ラ・ランド』が受賞したということで、出演者や関係者が総出でステージに上がっているときのこと。

 「『ムーンライト』! きみたちが、Winnerだ!」、映画『ラ・ラ・ランド』のプロデューサーのジョーダン・ホロウィッツが壇上で突然そう言い放ち、世界中がどよめきました。運営側のミスにより、受賞作の間違えがあったのです。しかし、『ラ・ラ・ランド』の関係者をはじめ、多くの人が、『ムーンライト』に大きな拍手を送りました。それは全員が、本作が作品賞に値すると確信を持っていたからでしょう。エマ・ストーンもこの受賞に「『ムーンライト』は大好きな作品なの! だからすごくハッピーよ!」と笑顔で祝福。LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)のラブストーリーがアカデミー史上初めて作品賞を受賞した歴史的な瞬間でした。

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圧倒的な存在感を見せたマハーシャラ・アリ

 アカデミー賞助演男優賞に輝いたマハーシャラ・アリは、実は作中前半の数十分しか出演していないにもかかわらず圧倒的な存在感でこの映画に大きな影響を与えています。偶然出会った少年リトルを父親のような優しさで見守りながらも、<ドラッグ>のディーラーである自分自身への呵責という繊細な感情を素晴らしい表現で見せたマハーシャラ。彼の助演男優賞受賞は、黒人俳優として12年ぶりであり、イスラム教徒として史上初の受賞ともなりました。

 もちろん、素晴らしい演技を見せたのはマハーシャラだけではありません。『ムーンライト』は、マイアミで生きる一人の少年が成長する姿を、三つの時代に分けて追うのですが、幼年期、少年期、青年期はそれぞれ別の俳優が演じています。この3人の役者をタイム誌が「2016年の映画で最も印象に残った演技1位」と評価しています。無名の俳優たちの素晴らしい演技が世界で高く評価されているのです。

■居場所がない…自分は何もの? 少年の青春物語がすごい

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少年リトルはどんな大人になるのか

 本作の主人公は、内気でやせっぽっちの少年で<リトル>と周りから呼ばれ、いつもいじめられっ子に追いかけられていては、泣きべそをかいています。シングルマザーの母親はリトルを愛してはいますが、ドラッグへの依存がやめられず、時に中毒症状からくる焦燥感と怒りをリトルに容赦なくぶつけます。少年リトルは、口答えをするわけでもなく、目の前の状況をただただ受け入れるだけの日々。リトルのように複雑な環境にあるティーンエイジャーを主人公にした作品は、ヨーロッパの映画にはよくありますが、ハリウッド映画ではあまり描かれてきませんでした。日本の映画もハリウッドの映画も、人気者の男の子と女の子のキュートな恋愛ドラマや、コメディーはたくさんありますが、自分自身のアイデンティティーに悩むマイノリティの十代の少年に光を当てた映画はめずらしい作品といえます。

■胸が張り裂けそうなほど一途な思い…純愛物語がすごい

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夜の海辺の美しいシーン

 いじめっ子たちから「おかま」と言われても、自分が何者なのか分からない。いつも感情を自分の中に抑え込んでいて、居場所がないリトルは人生の中でとても大切な人たちと出会います。その中の一人が親友のケヴィン。ケヴィンだけは、口数の少ないリトルを全て受け入れていていつでも話しかけてきてくれる、リトルの存在を肯定してくれる大切な存在なのです。月夜の浜辺で肩を並べ、普段は静かなリトルも素直に自分の思いを打ち明けているうち、リトルとケヴィンの間にはピュアな愛情が生まれ、静かな愛が交わされます。それは、誰もが感じたことのある切なくて心が騒ぐような恋心なのです。

■心の痛みをそっと抱え込む人にしみる…心に突き刺さる名言の数々がすごい

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大人になった“リトル”とケヴィン

 あまりにも多くの辛いことを経験しているリトルは、自分の痛みをじっと心の中にしまっています。いじめっ子に追いかけられて、ただ泣いていたリトルは、フアンという大きな心を持った男に出会います。話しかけても一言も言葉を発さず、じっと下を向いているリトルに、苛立つ様子もなくにこやかに彼を見守り続けるのです。泳ぎ方を知らないというリトルを海に連れていき、大きな海の中で彼の体を支えた時、フアンは「俺に手を預けろ、ちゃんと支えてる。離さないから安心しろ。感じるか? 地球の真ん中にいる」と優しく語りかける。父と息子でなくとも、親子を超えた絆を感じさせる言葉です。

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少年リトルは静かにフアンの言葉を聞いています

 フアンは少年リトルに、ある一言を伝えます。「自分の道は自分で決めろよ 周りに決めさせるな」。その言葉を聞いてから、リトルがどのように成長していくか。どんなに辛いことがあっても、自分自身を忘れないことの大切さが、この映画から伝わってくることでしょう。

■プロデューサーにブラッド・ピット!世界の映画祭での受賞数がすごい!

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実はこの方がプロデューサー!James Devaney / Getty Images

 本作が長編2作目の作品となるバリー・ジェンキンス監督は、2008年に超低予算の長編白黒映画「Medicine for Melancholy」を発表してハリウッド映画界から注目を浴びた若手有望株でした。その後2013年にとある映画祭に参加した際に、ブラッド・ピットと出会い、『それでも夜は明ける』をプロデュースしてオスカーに導いたブラッドがバリーとの映画製作に興味を持ったのだそう。俳優としての人気はもちろんですが過去3度オスカーにノミネートされている作品をプロデュースしているブラッドは、映画制作会社プランBエンターテインメントを率いる名プロデューサー。これまで『キック・アス』や『それでも夜は明ける』など才能溢れる若手監督に作品を撮るチャンスを与え続けている同社の製作総指揮の下、本作は完成しました。

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多くの人の心を揺さぶるリトルの物語

 LGBTのみならず、人種、麻薬などトランプ大統領政権で揺れているアメリカが抱えている問題を少年の視点から繊細に描かれた本作は、さまざまな映画祭で上映され、多くの監督、評論家たちが音楽の美しさ、叙情的な映像に心を揺さぶられ、本作を絶賛。その後、300以上の賞にノミネートされ、150もの部門で受賞し、さらにアカデミー賞作品賞を受賞するという素晴らしい結果をもたらしたのです。本作が作品賞を受賞したことで、映画祭などで映画を観た評論家たちの間でしか話題になっていなかった本作が多くの人たちの目に触れるという素晴らしいチャンスになったのは間違いありません。観終わったあと、やわらかなムーンライトに包み込まれるような愛に溢れた本作は、わたしたちの心に一筋の優しい光を照らしてくれることでしょう。

『ムーンライト』は3/31(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他にて公開

オフィシャルサイト

(c) 2016 A24 Distribution, LLC

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