『暗黒女子』飯豊まりえ&千葉雄大 単独インタビュー
女の子は自分を使い分けてる
取材・文:高山亜紀 写真:尾鷲陽介
お嬢様たちの集まる女子校で、全校生徒のあこがれの的である美少女・いつみが謎の死を遂げる。他殺か、自殺か。犯人はいったい誰なのか。外見はキラキラ見えても、その中身は邪悪過ぎて暗黒な女子たちが繰り広げる「裏切り」エンターテインメント。主人公・いつみ役は飯豊まりえ、彼女が慕う男性教師には千葉雄大がふんしている。秘密のシーンを乗り越えて、互いの絆が深まったという二人が大変だった撮影の日々を振り返る。
女の子は誰だって自分を使い分けてる
Q:観ていくに従って、女子の暗黒さが如実に現れてきます。脚本を読んでどう思いましたか。
飯豊まりえ(以下、飯豊):キラキラして見える世界観だからこそ、あっと驚く想像もつかない裏側があったら本当に怖いし、逆に面白いんだなと思いました。こんな話、実際になくはないのかもしれないって妄想が働きました。
千葉雄大(以下、千葉):どの役をどなたが演じるのか聞いてから脚本を読んだので、「この人たちがこんなことをやるのか」というギャップに驚き、作品に対して期待がふくらみました。できあがった作品もその期待を裏切らない出来栄えになっていると思います。
Q:飯豊さん演じるいつみは所属する文学サークルの女子それぞれの持つイメージで印象が変わる少女。5~6役を演じるくらいの大変さがあったのではないですか。
飯豊:事前に監督と話し合い、「この子の前ではこういういつみちゃん」というように彼女がどう見られたいのかを整理してから撮影に臨みました。実際に演じる難しさはありましたが、逆にいろいろできて楽しかったです。
Q:いつみのように普段から自分を使い分けていますか。
飯豊:はい。使い分けてます(笑)。「この人の前ではこう見せたいけど、この人にはこう見られたい」とか、誰にでもあると思います。特に私はそうかもしれません。
千葉:僕はそんなこと考えたこともありません(笑)。女子と男子はまたちょっと違うかもしれませんが……でも、一緒にいる人によって、自然と違う自分が出ていることってありますよね。例えば、会話の中で、ボケ担当になるときもあれば、ツッコミに回ることもある。そういうことってみんなにあることだと思います。
女の子だらけの現場は居心地が悪い
Q:飯豊さんは『きょうのキラ君』のときは寺田心くんの可愛さをテーマに役づくりしていたと聞きましたが、今回は誰をイメージしましたか。
飯豊:今回はなかなか見つけられなかったんです。でも、太陽のようないつみちゃんは森泉さんのようなお嬢様だろうなと思いました。誰にも分け隔てなく接することができて、誰からも愛されるキャラクターを目指しました。
Q:参考にした映画はありましたか。
飯豊:『Wの悲劇』を観ました。ナチュラルなお芝居をするというよりは、文学サークルという一つの舞台で、“白石いつみ”をいつみちゃんが演じているという感覚。台詞の言い回しなども、ちょっと舞台っぽくやった方が怖さも出るかなと意識しました。普段の自分の話し方には抑揚がないので、映画の劇中劇などが参考になりました。
Q:千葉さんは今回、先生役ですね。女子校の男性教師って、男子のあこがれじゃないですか。
千葉:もうちょっとキャピキャピした青春映画の女子校の先生なら、「お前ら、しょうがないなぁ~」みたいなテンションになると思うんですけど、今回は全然そういうこともなく……。一見無気力というかすごく居心地が悪そうな役どころで、うらやましがられるようなことは何一つなかったですね(笑)。ちょっと気恥ずかしくて、緊張しました。
Q:相手役が女子ばかりというのはどんな感覚ですか。
千葉:居心地が悪かったです(苦笑)。みんなのことはよく知っているんです。まりえちゃんは前から顔を合わせていたし、清野菜名ちゃんは仕事を始めたばかりの頃に「桜蘭高校ホスト部」で共演して以来。昔から快活な子でしたけど、今回も「千葉さん~!」って真っ先に声をかけてきてくれて、平祐奈ちゃんは『ReLIFE リライフ』でも一緒。それでも、女の子たちの仲が良すぎて入っていけなかったですね。映画の内容が内容だけに、普段の明るいみんながすごくすてきでほほ笑ましかったです。
飯豊:「先生だ~」とか茶化したりするシーンもあったので、こちらも距離を置いていました。あんまり一緒にお話したりするといった空気でもなかったですね。
Q:女子の中でも清水富美加さん演じる小百合はいつみの親友。二人は月と太陽のような存在です。二人で何か話し合いましたか。
飯豊:現場での富美加ちゃんは本当に頼もしかったです。役柄とは逆に私が富美加ちゃんにずっとあこがれていたので、一緒の場面ではスイッチが入りました。
千葉ファン必見のリアルでなまめかしいシーンとは!?
Q:千葉さん演じる北条先生はいつみの目線では理想の男性像のように描かれます。そういったかっこよさは意識しましたか。
千葉:ほかの生徒の前では不器用というか落ち着かないイメージで、二人でいるときは先生というより一人の男性としていようと意識して、その差を出そうとしました。二人で仲良くするシーンもあるので……って、なんか言い方がおかしいですね。キスシーンです(笑)。
飯豊:戸惑いましたが、きれいに見せようと思って演じました。先生の前はいつみちゃんが唯一“女の子”になれる場所なんです。頼れる先生でした。
千葉:絶対にそんなこと思ってないよね(笑)。監督からもすごく細かくご指導いただいたのですが、結果的に本番は「二人でがんばって」って言われてしまって、共同作業でした。僕、さわやかな役が多いので、今回のようなリアルななまめかしい感じのラブシーンは初めてだったかもしれません。だから、監督に「任せたよ、男子」みたいなことを言われたときにはまいりました。
飯豊:その後、違う現場で千葉さんにお会いして、アドリブを求められたんですけど、「千葉さんとなら大丈夫」という安心感がありました。この撮影で絆のようなものが生まれた気がしています。PVみたいにきれいで、千葉さんのファンはドキドキじゃないですか。絶対に観たいと思うと思います。千葉さんの姿、ぜひ観てもらいたい!
千葉:ちょっと、やめて、やめて(笑)。
キラキラして見えるその裏側は…
Q:最後にこの映画で発見した、女の子のいいところ、怖いところを教えてください。
飯豊:女子高生って本当にキラキラしているんです。私も高校生のときは、「何でもできるんじゃないか」って根拠のない自信があったりして、同じ感覚でした。そこは女の子の強みだと思います。怖いのはやっぱり人によって自分を使い分けることで食い違いが生まれてしまうところ。それって、女の子には割とよくあることなのですが、男性から見たら怖いんじゃないでしょうか。この映画を観て、きっとドキドキすると思います。
千葉:僕は男子校で育ったので、女子校って一見、華やかでいい匂いがしそうで、キラキラしているイメージがあります。でも、そのいい匂いがずっとそこにいると、むせ返るような居心地の悪さに変わるのかもしれません。「あのポジションにいきたいけど、あの人がいたらなれない」とか、ピラミッド構造って社会に出てもあることとはいえ、探り合い、崩し合いの残酷さは多感なこの時期ならではお話だと思いますね。
飯豊とダブル主演である清水の突然の不在にも動揺することなく、一人でも多くの人に観てもらいたいとプロモーションに一生懸命だった飯豊。それでも、内心はショックだったのだろう。「友だちにもこの思いが届いてほしい」と熱心にアピールした際には、目にうっすらと涙が浮かんでいた。以前から飯豊と共演歴があり、本作で絆が生まれたという千葉は彼女をしっかりサポート。「実は男らしい」という評判通りのエスコートぶりを見せていた。
(C) 2017「暗黒女子」製作委員会 (C) 秋吉理香子/双葉社
映画『暗黒女子』は4月1日より全国公開