『スター・ウォーズ』C-3POアンソニー・ダニエルズ インタビュー
1977年に『スター・ウォーズ』が公開されて以来、金色ボディーのおしゃべりなドロイドC-3POを40年にわたって演じ、スピンオフを含む全シリーズに出演し続けている英国俳優アンソニー・ダニエルズが来日。C-3POと過ごした俳優人生と共にシリーズへの思いを語った。(写真:高野広美)
Q:『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)は大成功を収めました。あらためてファンの熱狂的な愛を目の当たりにした思いをお聞かせ願えますか?
全ての『スター・ウォーズ』ファンには、それぞれに最もお気に入りの瞬間があり、あまりお気に入りではない瞬間もあるかと思います。『スター・ウォーズ』は壮大なコンセプトに支えられていて、人それぞれに感じるものが違うのです。しかし、皆さん誰もが望んでいるのは、シリーズがより良くなっていくことだと思います。ある人はダークサイドであるダース・ベイダーが、ある人は決して“正義”というわけではないですけど反乱軍、またある人はR2-D2、ある人は私が一番好きなダース・モール、ある人はC-3PO、ある人はルーク・スカイウォーカー、知的な人たちなどはエピソード5(『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』)が、私はエピソード4(『スター・ウォーズ エピソードIV/新たなる希望』)が、さらにエピソード1(『スター・ウォーズ エピソードI/ファントム・メナス』)が好きという人もいます。私としては、『ファントム・メナス』を楽しむには少々年を取りすぎていたと思いましたけど。皆さんにとって、何かしら思い入れがあるのです。
そんな中、私たちは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でシリーズを再びよみがえらせました。ファンの皆さんが待ったかいのある、期待に応えるより良い映画になっていたと思います。あの作品のプレミアに出席し、撮影に参加できたことを光栄に思っています。そして何より、J・J・エイブラムス監督と出会い、共に働き、話し合い、笑い合えたことが素晴らしかった。なぜなら彼こそが、並ぶ者がないほどの『スター・ウォーズ』ファンだからです。彼のあふれる情熱に創造性が刺激され、もっとがんばって働こう、もっと撮影を楽しもうという気持ちさせてくれてくれる。とても才能にあふれた監督です。
Q:『フォースの覚醒』でC-3POの左腕が、説明もなく赤くなっていたことについて、以前「彼はきっと気に入っていないと思います」とおしゃっていましたよね。
あれはエイブラムス監督が、『フォースの覚醒』に至るまでのC-3POの歴史を皆さんに感じてほしくて加えたものです。映画では触れられていませんが、赤くなった理由は、後にC-3POの冒険を描いたコミックで描かれました。ただおっしゃる通り、私としては他の案が良くて監督に提案もしていたのですが、彼は「絶対に赤にしなくちゃならない」と押し切った。それからは、セットで監督に会うたびに「絶対に許しませんよ」と語り掛けて笑わせていたものです。でも、そのアイデアが『フォースの覚醒』におけるC-3POのある素晴らしいセリフを生んだ。私にとって、それはとても愉快なセリフでした。エイブラムス監督は魔法をかけるように、いつも私を笑顔にしてくれます。彼はいつもたくさんのプレゼントをくれるんです。今身につけている(エイブラムス監督の制作会社)ロボットの靴下も彼がくれたものですからね! そしてあのセリフも、彼からのプレゼントのようなものだったんです。
Q:「腕が赤い」ことが世界的なニュースになるキャラクターを演じることは、あなたの人生にどんな影響をもたらしましたか?
私はこれまで、キャリアのほぼ全てを通してC-3POを演じてきました。彼のいない俳優人生なんて想像できないほどです。同時に、彼が私の人生に与えたインパクトは、私を他の演技の仕事から遠ざけることにもなりました。C-3POを演じるということは、24時間のフルタイムワークをするようなものですからね。皮肉なことに、私は毎日働くのが好きではない。自分の生活というものがありますから。そうは言っても、彼は私に想像もしていなかったようなキャリアをもたらしてくれたのは事実です。映画シリーズだけでなく、ディズニーワールドのアトラクションやアニメーション、書籍といったスピンオフ作品での活動といったね。もちろん、これまでに彼が何をもたらしてくれたのか、自分でもわからなくなった時もありましたが、年齢を重ねた今は得難い贈り物をもらったと感じています。不思議なものです。小さい子供たちを前にした時、彼らが私をただの年寄りと思っているような表情が、C-3POとしてしゃべり出すと途端に笑顔になる。そうして、大勢のファンの皆さんに影響を与えている。とても素晴らしいことです。
Q:C-3POであることを後悔したことはありますか?
もちろん! しょっちゅうですよ! 何せあの衣装は本当に着心地が悪い代物ですからね。それにロボットの役をやりたがる人間なんて、きっと変わり者で、頭が悪いバカ者だと思われているでしょうし、「あの衣装を着てる時はやっぱり暑いの?」なんて間抜けな質問をされることになりますから。イベントのゲストに呼ばれた時、チケットやパスを持たないまま会場に入ろうとしても、止められて「いやいや、私は……彼なんだよ」なんて説明することになるんですからね。しかし同時に、彼がいなければ私はここにいられなかった。彼は公共の財産のようなものだと思うのです。私は今、隣に座っている妻のものですけど(笑)、彼は世界中のみんなのものなんです。
Q:昨年はレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーさんをはじめ、大切な人を失ってしまいました。
私にとって、この悲劇はとても自身の中で処理するのが難しいものでした。どんな家族にとっても、大切な人が亡くなるという出来事はとても悲しいものです。しかし、彼女の死は広く公にされたものでした。本当の家族が亡くなるのも大ごとですが、それはあくまでプライベートなものです。しかし、キャリー・フィッシャーは世界中の人が彼女を知っています。そのため私も、公に哀悼の意を表することになりました。これが私自身にとって、驚くほど難しいことでした。それに、キャリーは死ぬには若すぎましたから。きっとキャスト全員にとっても困難な時間だったと思います。しかし、ファンの皆さんが私たちを前へと導いてくれたんです。
『フォースの覚醒』でキャリーと一緒のシーンを撮りましたが、特にリハーサル時は、私が彼女の目を真っ直ぐ見つめると……ちなみに美しい目ですよ。そうすると彼女は私の目を真っ直ぐに見返します。今何をしようとしているのか完全に理解し合っているのです。フィルムの中にいる彼女を観るのはとても不思議な気持ちになります。これからも時間が経つごとに、多くのキャストが去っていくでしょう。しかし私は、ひとつ理解できたことがあります。それは私にとって実に大きなことでした。彼らはいつまでもこの世界に存在し続けるということです。誰かが『スター・ウォーズ』について語り続け、その子供たちがまた『スター・ウォーズ』語り続けることによって。いつまでも、永遠にね。
Q:『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でのC-3POの登場をファンのみんなが楽しみにしていると思います。
ありがとうございます。『最後のジェダイ』には私自身もとても興奮を覚えました。ただ私としては、彼の役割が大きかろうと小さかろうと、それはどちらでも良いと思っています。なぜなら、作品において最も大事なことは脚本、つまり物語だからです。物語に貢献することさえできれば、彼の扱いが大きかろうと小さかろうと、私自身は気にしません。どちらにしろ、もらえるお給料は同じですからね(笑)。