『ピーチガール』伊野尾慧インタビュー
好きな子がほかの人と結ばれるのは見ていられない
上田美和の人気コミックを、山本美月&伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)主演で映画化した『ピーチガール』。色黒でギャル風の外見だけど、実はピュアなヒロイン・もも(山本)、学校一のモテ男・カイリ(伊野尾)、硬派でシャイなとーじ(真剣佑)が織りなす三角関係を、コミカルかつビビッドに描いたラブストーリーだ。一見お茶目でチャラいけど、実は真面目? なカイリを熱演した伊野尾が、映画初主演となる本作について語った。
■映画の撮影は初体験!
Q:累計発行部数1,300万部を超える人気漫画が原作ですが、その登場人物を演じると決まったときのお気持ちは?
まさか高校生の役をいただけるとは思っていなかったので、うれしかったです。原作はオファーをいただいてからすぐに読みました。少女漫画ならではのコミカルな感じがとても面白くて、「これを自分がやるんだ!」というドキドキ感がありましたね。それまで読んだことのなかった少女漫画の世界に魅了され、演じていても楽しかったです。
Q:映画出演は本作が初めてとのことですが、撮影現場はいかがでしたか?
舞台、ドラマ、そして映画と経験させてもらいましたが、それぞれ違う楽しさがあります。今回の映画撮影は、江の島とか横浜とか、景色のきれいなロケ地が多かったんです。その空気感が心地よかった。完成した映像を試写室という没入感のある場所で観たときは、演じていたときとは違う不思議な感覚を味わいました。ロケをしてからかなり時間が経っていることも、その感覚の理由なのかな。映画はドラマよりも費やす時間が長いのだと、改めて思いますね。
Q:共演された山本美月さん、真剣佑さん、永野芽郁さん(ももの友人・沙絵役)とは、休憩中にトランプで盛り上がったとうかがいました。
そうなんですけど、誰が強かったかとか詳しいことは覚えてないです(笑)。トランプもですが、神徳(幸治)監督が撮影のひと月くらい前からキャストのみんなでコミュニケーションを取れるようにしてくださったんです。だから、初日からすごく演じやすかった。高校のクラスメイトという近しい人間関係を作る上で、実際の距離感も近くなれてよかったです。
■好きな女性の幸せを願いたいけど…自分には無理!
Q:今回演じたカイリは、チャラ男風だけど、実は繊細な心の持ち主なんですよね。
カイリを客観的に見ると、とてもやさしい人。自分の好きな女の子がほかの男子を好きなのに、彼女の背中を押してあげる。それって、本当に心が広くないとできないことだと思うんですよね。そのやさしさは、自分が家族と仲良くできないさみしさだったり、愛されたい気持ちから生まれているような気がします。やさしさとさみしさを持ち合わせた人なんだけど、普段はバカでチャラチャラしていて、チャーミングな愛されキャラ。ももちゃんを元気づけるところとか、テンションはかなり高めでやりました。
Q:多面性を持つ難しい役だと思いますが、撮影現場で迷うことはありませんでしたか?
演じているときはそういったことをあまり意識していなくて、監督の演出にゆだねた感じです。考えてみると、監督、カメラさん、メイクさん、衣装さんとか、スタッフの皆さんが思っていることって、それぞれ違うじゃないですか。そこをすり合わせていって、徐々にカタチにしていった感じです。いろんな人の意見を聞くと、ハッとすることもあって面白い。ただ、最後に選択するのは自分なんですけどね。
Q:神徳監督の演出で、一番印象に残っていることは?
「カイリはもっと子どもでいい」と言われたことです。僕ととーじがももちゃんを取り合うシーンで、「冷静に怒っている。もっと感情的でいい」と言われて、「ああそうか」と気づきました。カイリは他者から一歩引いていて、どこか冷めた部分がある。その内面の大人っぽさを出し過ぎていたのかもしれません。
Q:そんなカイリと自分が重なる部分はありましたか?
やっているときは似ているところがあるような気がしたけど、終わってみると全然似てないなあって思います。
Q:大好きなももの幸せを願うカイリ。自分も同じようにできると思いますか?
いや、無理(キッパリ)。相手の幸せはもちろん願いたいとは思うけど、好きな人がほかの男性と結ばれるところは見ていられないですよ(苦笑)。
■自分を信じなかったら結果に出てしまう
Q:女の子同士のドロドロとした部分も本作の面白さ。ももに嫉妬してとーじを奪おうとする沙絵の描写は、女子のあるあるだと思うのですが(笑)、男性から見るとどうなのでしょうか?
知らなかった……。男に生まれて本当によかったです(笑)。ただ、そんな女子のコワい部分も愛せるくらい、心の広い人になりたいとは思います。
Q:不器用で天真爛漫なももと、小悪魔的な愛らしさを持つ沙絵。伊野尾さんのタイプは?
不器用のほうが好きですけど、小悪魔にだまされちゃうのかな(苦笑)。カイリを演じているときは山本美月さんのももが魅力的で、本当にドキドキと胸キュンしていました。
Q:山本さんと伊野尾さんが同じ明治大学出身ということも話題になっています。
そうなんです。同じ大学出身でご一緒するなんて、ご縁があるんですね。明治の先生方もよろこんでいるのではないでしょうか(笑)。山本さんは負けず嫌いなところがあって、現場で疑問点があると監督にぶつかっていくんです。カッコイイなあと思いました。
Q:ちなみに、大学時代の伊野尾さんは、カイリのようなモテ王子感は……?
なかったです! あの頃は勉強とか仕事とかやることが多かったし、必死だった部分がありまして、ドンヨリしていたような感じですね。ただ、友だちと一緒に徹夜で課題をやったりするのが楽しかったな。僕にとってはすごくいい思い出です。
Q:本作で高校生を演じていて、青春の思い出がよみがえったのでは?
それはありますね。特に芽郁ちゃんがリアルな高校生だったので、「ああ、高校生ってこんな感じだったよなあ」とか、現場で思い出していました。僕は26歳なのに制服姿ってどうなの? って思わなくはないけど、自分でイケてるなって信じてやるしかなかったし、制服を着ることでテンションが上がった部分もあります。自分を信じてやらなかったら、その不信感が結果に出ちゃいますからね。
■取材後記
一見するとほがらかで軽やかだけど、自分の立場や見られ方をしっかり意識しながら話している印象を残した伊野尾。登場人物の中で一番客観性を持っている“少年のようで実は大人”なカイリは、彼にとってかなり演じやすいキャラクターだったのではないだろうか。いたずらっ子のような笑顔と軽快なリアクション、ももへの思いや家族との確執を表現する際の真摯な姿、ギャグモードの面白さなど、伊野尾の多才ぶりが存分に伝わってくる作品だ。(取材・文:斉藤由紀子)
映画『ピーチガール』は5月20日より全国公開
(C) 2017「ピーチガール」製作委員会