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『ラストコップ THE MOVIE』唐沢寿明 単独インタビュー

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『ラストコップ THE MOVIE』唐沢寿明 単独インタビュー

変な踊りにちょっと心が折れそうになった

取材・文:早川あゆみ 写真:高野広美

30年の昏睡(こんすい)から目覚めた昭和の熱血刑事・京極浩介と、草食系だったはずが京極とバディを組んだことで暴走系に進化した(?)ゆとり世代刑事・望月亮太。ハチャメチャな凸凹コンビぶりと抱腹絶倒なギャグで人気を博した「THE LAST COP/ラストコップ」が映画化された。2015年の地上波スペシャルドラマ、Huluでのドラマ、さらに昨年秋クールのテレビドラマを経た先に待っていたのは、人工知能と戦う骨太ミステリー&まさかの涙!? 型破りで破天荒な作品にどんな心境で挑んだのか、唐沢寿明が語った。

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真似のできない作品

唐沢寿明

Q:「THE LAST COP/ラストコップ」が映画になることを最初にお聞きになったときは驚かれましたか?

僕自身は映画化の驚きというより、地上波とオンデマンドのHuluの両方でやる先駆けになった作品という印象のほうが強いんです。そこでそれなりの反響があったからこそ、映画になったんだろうし。最初にやるときは当然いろいろなリスクがあるけど、そこにチャレンジした作品ですよね。ガチガチに決まって絶対ズレないってものより、そういうほうが面白いです。

Q:ガチガチで始まっていたら、こんな楽しい作品にはならなかったかもしれませんね。

こういうハチャメチャなものって、いまの時代なかなか作れないので、本当は少し心配でした(笑)。普通はもっと塩梅するよね。だって、さっきまで血だらけだった人が次のシーンできれいな顔で出てきても、人間を人間が振り回しても、ヘリコプターを手でつかんで引き寄せても、もはや誰も突っ込まないし、あらゆる意味で「いいんだこれで」って思うしかないパワーがある。他では真似のできない作品ですよ(笑)。

Q:そのパワーはどこから来たんでしょうか。

製作サイドの思いと、あとはキャストのパワーかな。ちゃんと脚本はあるんですけど、あるところでは寸劇っぽくなったり、みんなとても自由にやっています。特に、窪田(正孝・望月亮太役)を筆頭に若手の俳優たちの弾けっぷりはすごいですね。彼らには彼らの世界観があって、自分たちが持っているいい部分を出そうとするのはすごくいいこと。いくら僕のほうがキャリアが上でも、言うことは何もないです。僕が何か言ったことで彼らが萎縮しちゃったら、僕の責任になっちゃうし(笑)。

Q:若手に助言するようなことはないんですか?

まずないです。たまに売れない俳優が「どうしたら有名になれますか」って聞いてくることがあるけど、自分のことを知ってる者が勝つんだと思うんです。自分は何ができて、何ができないのか。勝つための武器は何か。僕の場合だと、コメディーもシリアスもやりますっていうのが武器だよね。自分のできることがわかっていれば、そこを伸ばすことができる。これは俳優に限らず、どんな職業でもそうだと思います。

お客さんを信じている

唐沢寿明

Q:本作のお芝居の見どころはどこでしょうか?

キャストはみんな弾けてて面白いんですけど、やっぱり竹内(涼真・若山省吾役)の“キモ山くん”じゃないかな。彼はもともと才能があるけど、この作品で真面目な二枚目から弾けたと思います。(三島菜々子役の桜井)日奈子ちゃんとのシーンでは、本番直前まで2人で練習をしてる真面目さがあるしね。でも、彼が変な踊りを踊っているシーンをモニターで観たときは、本当にこれでよかったのかなってさすがにちょっと心が折れそうになったけど(笑)。

Q:京極と亮太のバディにグッときました。

特に芝居の相談とかしなかったんだけど、中盤くらいから窪田もテンションが上がりすぎて、何言ってるんだかわからなくなってました(笑)。僕は騒ぐキャラじゃないけど、台本通りじゃないことを本番でいきなり言ったりするから。(窪田が)笑いながら僕に「ほんとにわかんないです、やってることが」って(笑)。しかも、笑ってセリフが言えなくてもNGにならないんだよ(笑)。そういうふうに自由度が高いほうが、キャラクターが生っぽいでしょ? 自然体っていうのを大事にしたいと思ってます。

Q:そこがファンに人気なところだと思います。

でもこの作品、どこにファンがいるのかよくわかんないんですよ(笑)。ただ、ロケ撮影をしていると子どもは僕の周りに寄ってきた。お母さんたちは窪田とか藤木(直人・松浦聡役)くんとかで盛り上がって(笑)。子どもに追いかけられるのは初めての経験でした。

Q:人気の秘密は何だと感じていらっしゃいますか?

僕自身にあんまり気合が入りすぎてないのがいいんじゃないかと思います。「いつかレッドカーペットを歩きたい!」みたいのが、ぜんぜんないんです、僕の中に。何よりも観てくださるお客さんに楽しんでほしいんです。人間って好き嫌いでしか生きられないでしょ? 何かを選ぶとき(誰にとっても)同じで絶対的なものってない。だから、(作品が好きで)お金を払って観てくれる人の意見が一番正しいと思うわけです。観た人がどう思おうが自由。だからこそ一人でも観てくれる人がいるなら、最後まで真面目にやらないといけない。好かれようと思って媚びる人は見返りを求めるから、たとえば視聴率が下がったらとたんにやる気を失う。でも僕はどんな状況でも絶対に投げないで最後まで全力を出すよ。その点では僕は信用があると思います。

Q:真剣に取り組むことが何よりも大切だということですね。

作風はどうあれね。観ている人のためには本気でやらないと。観てくれる人すべてに媚びる必要はないけど、真剣にやれば必ずどこかに観てくれる人はいて、僕はそういうところはお客さんを信じているんです。

いろんな要素が詰まっている

唐沢寿明

Q:この映画のおススメのポイントはどこでしょう?

あまりにくだらないところが山ほどある中で、不覚にも感動で泣いちゃうシーンがあったり。アクションもパワーアップしていて、エンターテインメントだよね。ちゃんと真剣に、締めるところは締めて作っているところはポイントだと思います。でも、「昭和の男」対「人工知能」ってどんな戦いだよと。人工知能が暴走したら勝てるわけがないだろって(笑)。ほんとに弾けてるなって思うんだけど、でも俳優だったら誰でもこういう仕事が来たらやりたいんじゃないかと思います。それくらい、やっていてみんなが楽しめたいい現場でした。

Q:では、たとえばこのお話の続きができるとしたら……。

足が上がるうちは出たいですね(笑)。まあ、ずっと同じことをやっていてもしょうがないから、次は窪田と竹内のバディになってる可能性もあるけど(笑)。でも、こういうコンテンツはこれからもあるべきだと思うし、続けるべきだと思う。にぎやかで弾けてて、いろんな要素が詰まっているからね。


唐沢寿明

常にフレンドリーで、取材中も明るくジョークをはさみながら語り、場を盛り上げる唐沢。だが、確固たる信念のもとで仕事をしていることはひしひしと伝わってくる。若手俳優たちに意見することはないというが、彼らはその背中を見て、おのずとさまざまなことを学んでいるのだろう。真摯に芝居に向き合う唐沢がセンターにいたからこそ、『ラストコップ』は、笑ってあきれて驚いて感動できる、ハチャメチャであったかいエンターテインメントとして成立したのではないか。最高だ。

ヘアメイク:池田慎二(mod's hair) スタイリスト:勝見宜人(Koa Hole inc.)

映画『ラストコップ THE MOVIE』は全国公開中

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