白ご飯にあう!今日のおかずはおいしい映画で決まり
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日本人の心のフード「白米」。炊きたてのおいしさは言わずもがな。冷やご飯はチャーハンにしてもいいし、レンジでちょっと温めればホッとする香りが広がります。オコゲはオコゲでおいしいし、水多めで炊けば優しいお粥が癒やしてくれます。そして毎日食べてもまったく飽きない! どんなおかずにもあう! そう、気づいてしまったのです、ご飯は映画にもあうことを。この特集では白ご飯にあうおいしい映画を紹介します。(編集部・海江田宗)
■いつも思い出す母の味
まずは挨拶がわりにお袋の味ランキング第1位といえるおかず「肉じゃが」の映画から。母親の優しさを感じ、いつまでも大好きでいられる映画『6才のボクが、大人になるまで。』はまさに肉じゃがです。「肉」と「じゃがいも」というお決まりの食材が必ず入っているという点も、劇中の主要人物4人を同じ俳優が12年間演じているという点と似ていますね? はい、似ています(こんな感じでいきます)。
主人公メイソン(エラー・コルトレーン)の母オリヴィア(パトリシア・アークエット)はいつも子どものそばにいてくれて、あたたかな愛情を注いでくれます。でも少し男運が悪く、子どもたちは辛い状況に陥ることも……。喜怒哀楽を交えて、ある家族の歴史を壮大かつ繊細に描いたこの作品は、甘辛い肉じゃがのようなのです。
■ご飯の隣はこれで決まり
続いては白ご飯の隣というポジションを不動のものにしている「みそ汁」。いつも変わらず、日本人に愛され続けているのは山田洋次監督の『男はつらいよ』シリーズと同じです。みそと具材だけというシンプルな料理でありながら、その味は家庭によって違い、投入する具材によっても変わります。
渥美清さん主演で49作まで製作された同シリーズも、車寅次郎が恋に落ちてふられてしまうという大筋の構成はとてもシンプルです。しかしそれが話のミソだとすれば、そこには様々なマドンナが登場して、どの作品もその作品ならではの味を出しています。倍賞千恵子が演じた寅さんの妹・さくらや、舎弟の源公(佐藤蛾次郎)、甥の満男(吉岡秀隆)のようにお決まりのメンバーが毎回登場するこのシリーズは、豆腐やワカメなどの定番具材がある「みそ汁」と同じように白ご飯の右隣がお似合いです。
■匂いも見た目も好きな人は好き
強烈な匂いを放ち、苦手な人もいれば、好きな人はカルト的に好き。毎日でも食べられるねばり気のあるご飯のお供といえば「納豆」。その納豆と同じように、カルト的な人気を誇るのがハリソン・フォード主演の『ブレードランナー』です。ハリソンがレプリカントを追う専門捜査官“ブレードランナー”の一員デッカード役を続投する『ブレードランナー2049』には『ラ・ラ・ランド』で日本での知名度を一気に上げたライアン・ゴズリングも出演します。
巨匠リドリー・スコットが1982年に発表したこの伝説的SF映画では、酸性雨がいつも降っており、その“濡れ感”が完全にかき混ぜた後のベトベトした納豆のようです。そして人間社会に紛れ込んだアンドロイド、レプリカントの不気味さは、冷静に観察するとほかのおかずにはない禍々(まがまが)しさを持つ納豆のようです。
■特別な日の夜ご飯
『アバター』の続編が待ち遠しいジェームズ・キャメロン監督が手がけた映画史に残る『タイタニック』の特別感は、「霜降りステーキ」です。こんな豪華なおかずが食卓に出たら、その日は間違いなく自分史に残ります。そして海の上でとけない氷山の白さは、舌の上でとろける肉の脂の白さと酷似しています。
豪華客船タイタニック号の海難事故にローズ(ケイト・ウィンスレット)とジャック(レオナルド・ディカプリオ)のラブストーリーを絡めてキャメロン監督が描き出したこの超大作。撮影のために実物大を半分にして建造されたタイタニック号がお肉であるとするならば、ローズとジャックの恋はお肉にぴったりのソースであり、ビリー・ゼイン演じる恋敵との対決がスパイス、沈没前のタイタニックで演奏する音楽家たちは、お肉が盛られたお皿になくてはならない付け合わせです。
■ステーキの次の日
「のりとたまご」「さけ」「おかか」「たらこ」などいろんな味が入っているふりかけの詰め合わせパックは、“おかず映画界”でいうところのジブリ作品です。子どもから大人まで一緒に楽しめます。『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』などは「さけ」や「たらこ」味のふりかけのように王道で、『風の谷のナウシカ』『千と千尋の神隠し』『おもひでぽろぽろ』といった作品は「おかか」「のりとたまご」と同じくらい奥が深いです。
そしてジブリシリーズとふりかけの詰め合わせパックに共通しているのは、『火垂るの墓』『風立ちぬ』などのように少し大人向けの作品もあること。子どもの頃に食べて激震が走った「わさび風味のふりかけ」のごとくほかの作品と一線を画している部分があり、それでいて大人になってから観ると目を背けることができない魅力に気づかされます。
■食物繊維、不足してない?
シャキシャキと噛み応えがあって、ピリリとパンチの効いた「きんぴらごぼう」的な映画といえば、シルヴェスター・スタローンの『ロッキー』です。特訓中の生卵の一気飲みを連想しがちなこの作品、実は「きんぴらごぼう」なのです。噛めば噛むほど味が出て噛み続けたくなるごぼうのように、観れば観るほど、また観たくなってしまいます。
試合でボコボコにパンチを打ち込まれたロッキーの痛々しい顔は、忘れた頃にやってくる「きんぴらごぼう」の隠し味の辛味です。そして、ごぼうといえば食物繊維。食後に体をすっきりさせてくれるごぼうと同様に、『ロッキー』を観た後は爽快な気持ちが体を包み、明日へと向かう希望を与えてくれます。
ほんの一部しか紹介できませんでしたが、白ご飯にあう“おいしい映画”は世の中にまだまだあります。映画といえばポップコーンといわれがちな世の中ですが、炊きたてご飯が映画鑑賞の際の必需品になる日はそう遠くないのかもしれません。