ウーマン村本、会社は辞めてもいいと力説
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、村本が仕事に悩む全ての人たちに熱いメッセージ! 猛烈プッシュの『ちょっと今から仕事やめてくる』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一)
生きる=仕事ではない!
村本:今、AbemaTVのニュース番組(AbemaPrime)で司会やってるんやけど、長時間残業させられた会社員が自殺したとか、そういうニュースってたくさんあるのよ。
中川:すごい身近な話題やんな。
村本:それだけやなく、会社に行きたくないから自分で自分を刺したっていう人のニュースもあったりして、みんなどれだけ会社が怖いんだと。せやからこの映画も特別な人の話じゃなくて、ホンマに氷山の一角やと思う。でもこの映画は、そういう刺さるメッセージを扱いながらも最後はすごくさわやかな気分になって、生きることをもう一度考えさせてくれる作品になってて、世の中の全員が一回は観るべき映画やと思うわ!
中川:観ているだけでサラリーマンの気持ちがわかる映画になっていたな。
村本:ホンマやで。例えば、俺の単独ライブのポスターを作ってくれているような人たちも、ああしているのかもしれないって。一枚のポスターのために、映画の青山君(工藤阿須加)みたいに「うちでやらせてください、お願いします」って頭下げて、さらに彼の下にもプレッシャーで死のうとしている人がいるかもしれない。当たり前に見えるポスター作り一つにもその裏には、死ぬまで追い詰められている人がいるかもしれん。あのブラック企業の人たちみたいに、みんなが死ぬか生きるかって二択を選ぶみたいに、生きる=仕事になってしまっている。仕事って、自分の人生を幸せに生きていくためのお金をもらうものなのに、それがなくなったら死ぬって、動物として一番哀しい気がする。世界は広くてもっともっといろんなものがあるんやから。
福士蒼汰の関西弁が完璧なワケ
中川:ヤマモト役の福士蒼汰くんもめっちゃ爽やかやったな!
村本:この映画、ブラック企業で働いているシーンなんかはどんより空気が重くて病院の中歩いているような気分になるけど、ヤマモトが登場した瞬間、窓を開けて風が吹き抜けたような気分になる。
中川:空気が全然変わるよな。しかし、福士くんみたいなイケメンがヤマモト役でよかったわ。知らん奴に突然「俺や!」って声かけられても怪しすぎるもん。
村本:あと、東京都出身やのに完璧な関西弁! (お笑いコンビ)烏龍パークの加藤康雄さんがちょっと出てたけど……。
中川:福士くんの関西弁指導をしてるんやって。
村本:いい仕事してはるわ~。加藤さんて、大阪の枚方で有名なヤンキーやった人で、東京にいても言うたらバリバリ、きつめの関西弁をしゃべるのよ。たぶん福士くんも加藤さんにうまいこと教えてもらえたんやと思う。関西の人間から観ても違和感がない関西弁で、スッと入ってきたわ!
中川:俺、普段ドラマとかで普通に話す福士くんを見てたから最初はちょっと違和感あったけど、途中からは全然やったわ。
村本:ただ俺的に一番よかったのは、青山隆役の工藤阿須加くんやな!
中川:ミスが発覚したって連絡受けて、会社戻って自分のミスをチェックしてるときの、「はあ、はあ」って顔がホンマに苦しそうですごかった!
村本:「ああ、俺もこんな経験ある」ってなる人、いっぱいおるやろな。どんなに怒られるんだろう……! って。あのリアルな表情はホンマMVPものやで!
これだけは言いたい!ななめ見ポイント
村本:この映画、吉本の人間に観せたらみんな会社辞めるんちゃう?
中川:マネージャーとか、社員さんたちが?
村本:俺らもそうやけど芸能界って、夜中でも常に電話出られる状態にせなあかんかったり、プライベートなんかないやん。俺らの前のマネージャーの中にも、自分の好きなことをしたいっていって辞めていった人おるし。
中川:おったな! 辞めた後、リゾート地の……バリ島で働いてるんやったっけ?
村本:写真見たらヒゲボーボーで、イェーイって感じで楽しそうで、まさにヤマモト。収入は会社員のころより低いかもしれんけど、幸福度は上がってるわけや。
中川:ホンマ、めっちゃ楽しそうにしてたよな。
村本:自分で居場所を見つけたってことや。無理に合わない場所におるなんて、海水魚が淡水で泳いで、ハーハー言いながら人生をすごすようなもんやで。そんな苦しい思いしたら、趣味にも恋愛にも家庭にも頭が回らない、最終的に死を選んでしまうかもしれんやろ。それに今の世の中って、例えば椅子が5席あったとしたら、座りたくなくても全員が無理矢理その椅子に座らされてストレスをためて心を病んでいく気がする。でも、そうやって決まった数の役割を当てはめるんじゃなく、その人が座りやすい6席目。会社の利益になるような違う役割を、国なり会社なり自分なりで作ってあげるべきやと思うわ。
中川:確かに。その通りやな。
村本:俺かて、福井県のど田舎で育って、学校やめて芸人になりたいって言ったら周りから、「普通はみんな、大体普通の仕事について我慢してやっていくんや」って言われて。その時、ここでは芸人になるって選択肢さえ与えられんのやって思ったのよ。でも、自分で動いて大阪行ったら仕事や自分が生きるための選択肢が増えて、東京行ったらもっと増えて、いろんな人に出会ってもっともっと増えていって……。街を変えるたび、人と会うたびに選択肢が増えていった。その中で一個、これだ! と思うものを見つければいいわけであって、つらければ仕事は辞めてもええと思う。大事なんは、幸福を突き詰めることやと思うから。30歳すぎても、40でも50すぎたって。
中川、会社を辞められない友人を想う
村本:追い詰められる隆だけやなくて、あのブラック企業で働いている人たちも全員病んでいるように見えたわ。吉田鋼太郎さんが演じた営業部長も、隆に「甘いんだよ!」とか「これが仕事なんだよ!」ってめっちゃ怒鳴るけど、俺には、あの人が自分自身に言い聞かせてるようにしか聞こえなくて。世代によっては共感できる人はおるんちゃうかな。せやから、高校生とか大学生が観たら自分の将来に対して、立ち止まってもう一度考えられると思うし、その下の世代は、ご飯を食べさせてくれてる自分の親に対して優しくなれると思うわ。
中川:確かになぁ。俺、むっちゃ仲のええ高校のころの友達が不動産の営業してるんやけど、成績が上がらへんかったら会社にも帰りづらいとか、やっぱりつらそうなのよ。俺なんかは「辞めてやりたい仕事とかやったらいいんちゃう」って言うてまうんけど、やっぱり「おまえはそう言うけど、辞めても次の仕事なんか見つかるかわからへんし」って。
村本:俺なんか高校中退してバイトも何回もクビになって、何もできない人間やったけどお笑いの道を見つけて、今は好きな物食べて好きなところ行って、すごい幸福やで。世の中甘いもんじゃないっていうけど、こんな俺でもできるんだから、絶対に大丈夫やとヤマモトになったつもりで言いたい! ただ俺、あの部長の説教シーンを見てて、常日頃パラダイスに同じ事言っているなと思ったわ……。
中川:そうそう! 俺も思った! カバンでどつかれないだけ、ちょっとマシやけど。
村本:ウーマンラッシュアワーもブラック企業だったんやな……。ただおまえがすごいのは、アホやから響かんとこやで。真面目に考えているフリをして考えてないからな!
今月の激オシ映画はコレ!
『ちょっと今から仕事やめてくる』
第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞した北川恵海の小説を、福士蒼汰を主演に迎えて映画化。ノルマが厳しい企業に勤め心身共に疲弊した青年が、幼なじみを名乗る人物との交流を通じ生き方を模索するさまを描く。メガホンを取るのは、『八日目の蝉』や『ソロモンの偽証』シリーズなどの成島出。福士演じる謎の男に救われる青年に、『夏美のホタル』などの工藤阿須加がふんするほか、黒木華、小池栄子、吉田鋼太郎が共演。
(C) 2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。「AbemaNews」チャンネルのニュース番組「AbemaPrime」(毎週月~金曜日21:00~23:00生放送)にて月曜レギュラー出演。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。