クリストファー・ノーランの新作巨編は3つの物語が交錯するタイムサスペンス!
提供:ワーナー
映画『ダークナイト』『インセプション』など、世界中の映画ファンを魅了するクリストファー・ノーラン監督が最新作『ダンケルク』で挑んだのは、空、海、陸と舞台を変え、それぞれ3つの物語が交錯するタイムサスペンス! 第2次世界大戦で実際に起きた奇跡の救出作戦だ。「え? ノーランが戦争ものの歴史映画?」と驚くファンもいるかもしれないが、安心してほしい。ノーラン流の演出が冴えわたる本作は、監督が自ら語るように、単純に戦争映画に分類される作品ではない、息つく暇もないほどの緊張感に、心打たれる人間ドラマを盛り込んだ一級のサスペンスエンターテインメントだった!(編集部・入倉功一)→林修先生の特別授業!3分で分かる映画『ダンケルク』特別動画
■時間軸を巧みに操る中毒性
『メメント』では時間を逆行させ、『インセプション』では時間の進み方が違う現実と夢の世界を描き、『インターステラー』では時間を超越する次元の概念を取り入れるなど、時間軸を巧みに操るストーリーテリングで観客を魅了してきたノーラン監督。その手腕は実話ベースの『ダンケルク』でも健在だ。
1940年、フランスの海辺の町ダンケルクで連合軍であるイギリス・フランス両軍の兵士約40万人が敵であるドイツ軍に包囲され、絶体絶命の危機に瀕する。絶望のふちにある若者たちを、唯一の退路である海上から、民間船を含む860隻の船舶が戦火の中、命を懸けて救助活動を行い彼らを移送し生還させたという、奇跡のダイナモ作戦の全貌が本作では描かれる。
ノーラン監督は、この奇跡の救出作戦を3つの違う視点から描き出した。イギリス・フランス連合軍の若者たちが救出を待つダンケルクの海岸(陸)、彼らを救うためイギリスから船出する民間船(海)、作戦を援護するためダンケルクに向かうイギリスの最新戦闘機スピットファイア(空)……。それぞれの出来事は同時進行で描かれるが、実は各視点の時間軸には、大きな差がある。
ノーラン監督はこの演出について「3つの物語は全てが同時に起きているが、タイムスケール(時間の尺度)が違うんだ。一つの視点では海岸にいる兵士たちの1週間を、彼らを助けるためボートでやって来る民間人の視点は1日、空中のスピットファイアのパイロットの視点では1時間の出来事を扱っている」と時間軸を巧みに使い分けたことを明かしている。
時間軸も空間も違うさまざまなシチュエーションで起こるサスペンスが巧みに交錯し、やがて一つの結末へと収束していく。このカタルシスはまさにノーラン映画の真骨頂! 糸が張り詰めたような緊張感に満ちたサスペンスフルな展開は、何度も観たくなる“中毒性”を本作にもたらしている。
■3Dに頼らない新映像体験
フィルムをこよなく愛するノーラン監督が、IMAXカメラで撮影に臨んだ本作。監督は、フィルムもサイズも巨大なカメラをハンディカメラ感覚であらゆる場所に設置し、ときには飛行機ごとカメラを水没させたりしながら撮影を敢行した。
完成した映像は、初っぱなから観客をダンケルクの“中”に放り込む。若き兵士たちと共に、敵の銃撃から逃れ、スピットファイアで敵機を追い、戦艦が沈没すれば窒息の息苦しさを味わう……この怖くなるほどの没入感は、3Dに頼らなくても、全く新たな映像体験を得ることが可能だ。
またノーラン監督は、『ダークナイト』で巨大トラックが街中で一回転するシーンを実際に再現したように、極力CGを使わない主義。本作も、戦闘機同士のファイトシーンでは、IMAXカメラを載せた飛行機に実際の空中戦を演じさせ、俳優のクローズアップも飛行機の翼に備えたカメラで実際に空で撮るなど、徹底している。
戦闘機はCGと違ってダイナミックな飛行はしないが、本物の迫力が感覚に訴えかけ、操縦席に座っているような一体感をもたらす。同時に、名映画音楽家ハンス・ジマーによる張り詰めた音楽と編集の効果により、常にピッチが上がり続けているような驚くべき体感スピードで緊迫感が増していく。リアリティーを重視しながら、映画的な技法でサスペンスを盛り上げる。そんな、ノーランのフィルムメーカーとしてのこだわりが垣間見える。
■実話なのにサプライズまで!
徹底した秘密主義を貫き、『インセプション』のラストで見せたようなサプライズ演出が常に仕掛けられているのもノーラン作品の特徴。結末がわかっている歴史的事実を扱う本作にも、しっかり物語上のサプライズが用意されている。映画の世界に没頭し、上映時間約106分というスピーディーな展開を経て明らかになる事実には、文字通り驚愕できるはず。
観終わった後、どこから伏線が張られていたのかを再び劇場で確かめるのもいいだろう。何度でもリピートして観たくなる、それもノーラン作品の醍醐味だからだ。
リピートといえば、お気に入りの俳優を繰り返し起用するのもノーラン監督の特徴。今回は、『インセプション』などで組んだトム・ハーディがスピットファイアのパイロット役で、ノーラン監督とは5度目のタッグとなるキリアン・マーフィが民間船に救助される兵士を演じている。IMAXの繊細な映像は、ヘルメットとマスクの間からのぞくトムの目など、細かい表情の変化までしっかりと捉える。ケネス・ブラナー、マーク・ライランスといったベテランから、フィオン・ホワイトヘッドやハリー・スタイルズといった新人まで、新旧俳優陣は男前が勢ぞろいだ。
時間軸を操る多重構造の物語、本物にこだわったフィルムで捉えた映像、複線がはられたサプライズ、そして常連俳優と、ノーラン作品の醍醐味が詰まった『ダンケルク』。「撤退」という勝ち戦とは呼べない戦いを描きながら、得も言われぬ満足感を得られる本作に、数多くの映画ファンが劇場に通い詰めることになりそうだ。ノーランのこだわりを少しでも感じるため、許す限り劇場での、それも監督が想定する上映方法に少しでも近いIMAXでの鑑賞を推奨したい。予告編からも、背筋が震えるような驚異の映像美の一端を感じることができるはずだ。
■驚異の映像にゾクゾク…『ダンケルク』予告編!
映画『ダンケルク』は9月9日より全国公開
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