『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第二章 発進篇』神田沙也加 単独インタビュー
声優は人生で最初に抱いた夢
取材・文:磯部正和 写真:高野広美
1978年に公開された不朽の名作『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』をモチーフに、イスカンダルから帰還したヤマトのクルーたちが、宇宙の平和のために新たなる旅に出る姿を描いた『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』。本作で女神テレサの声を演じたのが神田沙也加だ。ミュージカル女優として活躍を続ける一方、自身の小さなころからの夢だったという声優業も絶好調の神田。そんな彼女が『宇宙戦艦ヤマト』という作品や声優業への思い、そして先日発表した結婚について大いに語った。
『ヤマト2202』第二章のエンディング主題歌を担当
Q:『宇宙戦艦ヤマト』という歴史ある作品の新作シリーズにテレサ役として出演されましたが、反響はいかがでしたか?
『宇宙戦艦ヤマト』といえば、わたしが生まれる前からある作品で、自分より大人の世代がカラオケで主題歌を熱唱するという印象があったんです。実際関わってみて、これまで携わってきた作品以上の反響がありました。とても注目度が高い作品なんだなって改めて実感しました。
Q:テレサ役について、どんなアプローチ方法を?
わたしの独断では作れないキャラだったので、いろいろ相談させていただきました。『2202』という作品の中で、どれだけ神格化される存在なのか、人間との距離感などを考えました。監督からは「神々しく」と言われたのですが、神様の経験はないので、あまり抑揚をつけず、引き算の芝居をしました。
Q:第二章にはテレサの登場シーンはありませんが、エンディング主題歌「月の鏡」で参加されていますね。
オープニング曲は、誰もが知っている有名な曲だけに、オリジナルという意味ではエンディング主題歌はとても重要だと思っています。壮大な世界観の余韻を残しつつ、次につながるように、しっかりしめる役割も必要です。今回はテレサとして歌っていますが、役柄同様、(人と神との距離感などの)さじ加減が難しかったです。でも日本語の歌詞がとてもキレイなので、別の機会でも歌っていきたい曲だなと思いました。
声優業を柱の一つにしたい
Q:以前から声優は、一番なりたかった職業と仰っていましたが。
わたしは一人っ子だったこともありますが、とてもゲームが好きだったんです。そこで小さいころから声優さんの存在を知っていて、とても憧れていたんです。ある意味で、人生において最初に抱いた夢が声優だったんです。
Q:声優の学校にも通われたそうですね。
もしも声のお仕事の機会があったときに、すぐに手を挙げられるように、勉強しようと思ったんです。
Q:芸能界デビューしたあとに、声優の学校に通われるというのは、何かとやりづらい部分もあったのではないですか?
ためらいなどはなかったです。ただ、本当にプロの養成所だったので、実技も多く自分のダメさが浮き彫りになったことはすごく印象に残っています。逆にそういう経験があったことは、すごく良かったです。
Q:ご自身の強い思いが、現実になってきているという実感はありますか?
正直、養成所に通ってみたものの、声優が自分の仕事の柱になるとは思っていませんでした。それが『アナと雪の女王』に関わらせていただいてから、ナレーションをはじめ、声のお仕事をさせていただけるようになっていったんです。そして『2202』のテレサ役では、とても大きな反響を頂くと同時に、キャラクターボイスとして作品の中に入るということが、いかに尊いことなのか実感しています。
Q:さらに貪欲に声優業に取り組んでいこうと思っていますか?
自分の中では、舞台はとても大事なお仕事ですが、歌のお仕事と同じく、声優業も柱になればと祈っています。
Q:そのためにはどんなことを心掛けていますか?
作品を観ていただく人が、わたしの声に違和感を持ってしまうと、そこで世界観が崩れてしまうので、そうならないように、もっとスキルアップしていかなければいけないと思っています。そして、ミュージカルのときもそうでしたが、専門じゃない人間が、その世界に入っていくためには、しっかり実力を認められなければいけないんです。当然、オーディションを勝ち抜かなければたどり着けない。いつでもそういうチャンスを逃さないように、アカデミックな努力は怠らないようにしたいです。
結婚によってさまざまな変化
Q:ミュージカル、声優業と大活躍の中、プライベートでもご結婚され、公私ともに充実している印象があります。
自分の中でも、いろいろなことが変わりました。夫婦になったことで責任感が生まれましたし、いままで経験したことがないような安堵感もあります。まだ結婚してから時間はたっていませんが、とてもいいものだなと思っています。
Q:仕事の上でもご結婚はプラスが多いですか?
そうですね。一人のときは、自分の欲や展望で動いていましたが、家族ができると、相手のためにもお仕事を頑張ろうって思えたりもしますよね。もしも嫌なことがあっても、家に帰れば元気になれるし、リセットしてまた次のお仕事にいけるという安心感を得られるので、一人のときとは全然違いますね。
Q:本作のテーマは“愛”ですが、最近身近な愛を感じた瞬間はありますか?
先日、ものすごく体調が悪い日があったんです。そのとき、何も言っていないのですが、旦那さんや2匹のワンちゃん、ロングコートチワワとチャイニーズ・クレステッド・ドッグが、ずっとそばにいてくれたんです。そのときは愛を感じました。
小野大輔との再会
Q:本作は第七章まで続きますが、これからどうなっていくのかワクワクしますね。
そうなんです。皆さんもどんな展開になるかわからないと思いますが、わたし自身も、まだいろいろ知らされていないことが多く、今後、テレサにどういう形で出番がくるのか、ファンの方と同じように楽しみなんです。
Q:神田さんが尊敬する声優さんたちとの共演も見どころですね。
(古代進役の)小野大輔さんとは、2014年度の声優アワードでご一緒させていただいたんです。小野さんは主演男優賞を受賞されていて、わたしも『アナと雪の女王』で主演女優賞を頂き、隣に座らせていただいたのですが、そのとき、わたしみたいな新参者にも「次は現場で会いましょうね」って優しい言葉をかけてくださったんです。それだけに、この作品で再会できたことはすごく印象深いです。
Q:今後の意気込みを。
こうして長い期間に渡って同じキャラクターを演じさせていただけることってすごく贅沢だと思うので、観ている皆さんにしっかり受け入れていただけるように、行間やイラストの間をイマジネーションで埋めて、立体的な人物を表現していきたいです。
「ミュージカル、歌、声優を自身の三つの柱にしたい」と語っていた神田。デビュー時から、さまざまな事柄にチャレンジしてきた神田だが、彼女の言葉で印象に残っているのが「専門じゃないところへ入っていく」という表現だ。ネガティブな言い回しに聞こえるかもしれないが、ミュージカルにしろ、声の仕事にしろ、しっかりとそこに根を張り、“実力”で居場所を築くことを楽しんでいるように感じられる。本人も「分析や研究することが好き」と語っているように、現状に満足せず、課題を持ちクリアしていく。そんな姿勢が多くの人から共感される理由なのかもしれない。
(C) 西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち/第二章 発進篇』は6月24日より劇場上映