この夏見逃すな!人気海外ドラマの新シリーズが続々登場!
アメリカではNetflixなどのオンラインストリーミングサービスの台頭により、ピークTVと呼ばれるテレビの黄金時代(あるいは供給過剰状態)を迎えている。2017年には台本が存在する番組は500を超えるとされる中、もちろん全部が日本に上陸するわけではないとはいえ、限られた時間で何を観るのか迷う人も多いはず。そこで、夏休みにこれだけは押さえておきたい海外ドラマの話題作の新シーズンをご紹介します!(文・今祥枝)
■大国同士の戦いがついに開戦!鉄の玉座を奪い取るのは…!?
ゲーム・オブ・スローンズ 第七章:氷と炎の歌
当たった、大コケなどの現地の情報がネットなどを通じて即時に伝わる時代。とりわけ、ネタバレ厳禁の話題作なら全世界のファンと一緒に、新シーズンの初回放送をカウントダウンするお祭りに乗っかりたい! そんなファンの夢が叶ったのが、ジョージ・R・R・マーティンの大河ファンタジー「氷と炎の歌」シリーズを映画化した海ドラ界の巨星「ゲーム・オブ・スローンズ」だ。BSスター・チャンネルの日米同時放映の実現は、本当に快挙としか言いようがなくファンにとってはありがたい限りである。
待望の第七章(全7話)は、ついに各地で群雄割拠しながら七王国の王都キングズ・ランディングの“鉄の玉座”を狙っていた諸侯たちが、決戦のために同じ土俵に並んだ格好だ。実質上は前後編の形をとる最終シーズンの第八章に向けて、原作を追い越した形で、いよいよドラマオリジナルの物語が全開となっていく。副題として原作のシリーズのタイトル「氷と炎の歌」とあるように、七つの王国が統一された大陸ウェスタロスに上陸した炎を象徴するドラゴンの末裔デナーリス・ターガリエン(エミリア・クラーク)と、氷を象徴する人間の脅威=ホワイトウォーカーの首領である“夜の王”、北のスターク家と炎のターガリエン家の血を引くジョン・スノウ(キット・ハリントン)の三者が、どのように関わっていくのかが見もの。
一方、愛する者を失いながらも鉄の玉座に着いたサーセイ(レナ・ヘディ)は痛々しくもふてぶてしさは健在。おのおのの私怨も複雑に交錯しながら、サーセイは“鉄の玉座”を守り抜くことができるのか。そしてホワイトウォーカーとの決戦の日はいつ、どのような形で迎えるのか? 第1話から悠々と空を飛び回るドラゴンを見ただけで、テンションはMAX! もはや1話ごとに映画館で上映してもおかしくないクオリティーとスケール感には、ただただ圧倒されるばかりだ。なんとなく波に乗り遅れてしまっている人は、この夏Huluで第一章~第六章をキャッチアップして、Amazonビデオで第七章をレンタルするもよし。気が早いけど、第八章の世界規模のお祭りには十分間に合いますよ!(最終章も日米同時放映されると信じて!)
<観られるのはこちら!>
・スターチャンネル:「ゲーム・オブ・スローンズ 第七章:氷と炎の歌」
BS10 スターチャンネルにて毎週月曜あさ10:00~ほか<日本独占>最速放送!
(「スターチャンネル オンデマンド」でも第一章~第七章を配信中)
・Amazonビデオ:「ゲーム・オブ・スローンズ(字幕版)シーズン7」発売・レンタル中
・Hulu:「ゲーム・オブ・スローンズ(第一章~第六章)」配信中
■奇妙で恐ろしいリンチ・ワールドが繰り広げられる!
新作「ツイン・ピークス」
続いて、約25年ぶりの続編となるWOWOWで放送中の新作「ツイン・ピークス」 。1990年代当時、リアルタイムで「ツイン・ピークス」を視聴していた世代にとっては、まさかシーズン2の衝撃の最終話の続きが観られるとは! と感涙だろう。アンジェロ・バダラメンティによる印象的なテーマ曲を聴いて、わあっと懐かしさで胸がいっぱいになった人も多いはず。そうでなくとも、デヴィッド・リンチが全18話の監督を務め、撮影が全て終わってから編集作業を行う=映画と同じ作り方だと聞けば、改めて映画ファンも興味を持つのでは。
さて、放送前からあれやこれやと話題を呼んだ本作だが、ふたを開けてみれば想像以上にぶっ飛んでいた。前作から25年間失踪していたという設定の主人公クーパー(カイル・マクラクラン)は、異空間に捕らわれたクーパーと、現実社会では長髪でワルそうなダーク・クーパーが存在している。捕らわれたクーパーは懸命に脱出を試みる一方で、強烈な惨殺死体が登場したり、ニューヨークでは謎のガラスボックスが不穏な動き(?)を見せたりと、のっけからやりたい放題のリンチ・ワールドが炸裂。わかりやすさとは無縁のハイブロウな作りで、視聴者を突き放す。もっとも、わけわからないことだらけなのは確かだし、何が正解かはリンチ本人にしかわからないことだが(主演のカイルでさえリンチのビジョンを完全に理解することは不可能とインタビューなどで語っている)、前シリーズと映画『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』(1992年)にしっかりと目配せした続編であることも確か。
序盤で「ジェフリーズって誰だっけ?」などと思った場合は、とりあえず『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』だけでも再見することをお勧めする。できれば前シリーズを観た上で、じっくりと深読みする楽しみを味わいたいものである。もっと言えばリンチのキャリアの集大成の様相も呈しているシリーズなので、過去の映画も振り返ってみると、さらなる発見があるかも。時間はかかるが、あれこれ浮気せず、どっぷりとリンチ・ワールドに浸かった方が楽しめる作品でもあるだろう。
<観られるのはこちら!>
・新作「ツイン・ピークス」
WOWOWプライム、WOWOWメンバーズオンデマンドにて7月22日(土)スタート!(全18話)[第1話無料放送]
毎週土曜 夜9:00(二カ国語版)/毎週金曜夜11:00(字幕版)
■まるでドキュメンタリー番組!?奇妙な錯覚に陥ってしまうスタイリッシュ・ホラー!
アメリカン・ホラー・ストーリー:体験談
ラストは「アメリカン・ホラー・ストーリー」のシーズン6となる「体験談」(全10話)。ピークTV時代を代表する才能ライアン・マーフィーが、リンチとは違った意味で「ここまでテレビでやれるのか!」を証明してみせた画期的なホラーのアンソロジーシリーズだ。シーズンごとに別の物語になるので、ここから観ても問題ない。前作「アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル」のどぎつさや過剰さにそろそろ胸焼けがした人もいそうだが(楽しめた人はもちろんOK)、古い洋館に越してきた夫婦が怪現象に悩まされるという「体験談」は、ドキュメンタリータッチであること、ストーリーテリングに凝った仕掛けがある点がドラマファンとしては楽しみどころが多いかもしれない。
舞台となるノースカロライナ州ロアノーク(原題の副題でもある)は、16世紀にイギリスの植民地として開拓されるはずだったが、植民者100人以上が失踪してしまうという集団失踪事件が発生した場所。新参者の夫婦が架空のドキュメンタリー番組で恐怖体験を振り返り、番組中の再現ドラマとして、実際に夫婦が何を体験したのかを描いていく。常に物議を醸す挑戦的な内容、作風がウリでもあるが、エミー賞などでジェシカ・ラングが栄冠に輝いたように多彩なキャストの怪演が見もの。「体験談」で面白いのは、ドキュメンタリー番組で語る夫婦は「アメホラ」の常連、リリー・レーブとアンドレ・ホランド、再現ドラマではこちらも「アメホラ」常連組のサラ・ポールソンと、シリーズ初参戦となるオスカー俳優キューバ・グッディング・Jr.が前述の夫婦を演じていること。ポールソンとグッディング・Jr.は昨年のマーフィーによる傑作「アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件」(Netflixで配信中)で共演しており(ポールソンは同作でエミー賞主演女優賞受賞)、この2人が夫婦を演じるというのもしゃれ or 皮肉が効いていて“にやり”とさせられる。
この土地に残された植民者たちの怨念や狂気の歴史の凄惨さ、連続殺人事件などの恐怖描写は今回もやりきっているが、ポールソンを筆頭にアンジェラ・バセット、キャシー・ベイツ、ウェス・ベントリー、デニス・オヘアといった常連の実力派が披露する遊び心のある怪演こそ、現在のアメリカのドラマの層の厚さ、レベルの高さを証明するものでもあるだろう。
<観られるのはこちら!>
・「アメリカン・ホラー・ストーリー:体験談」
FOXチャンネルで毎週土曜23:00~24:00(二カ国語版)/毎週月曜24:00~25:00(字幕版)日本最速!独占放送中