ウーマン村本、日本ができないタブーへの挑戦に脱帽!
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、あのハリー・ポッターがとんでもない姿になって戻ってきた!? ダニエル・ラドクリフが超便利な死体を熱演した『スイス・アーミー・マン』をななめ見しちゃいます!(取材・文:シネマトゥデイ編集部・森田真帆)
■衝撃展開にウーマンあ然!
村本:いや~最低やったな! これは最高の褒め言葉として作品に送るわ。最低の映画!(笑)カッコよかったわ、監督!
中川:今までになく不思議な映画やったな~。最初の展開からすごかった! 無人島に流れ着いた死体と主人公とのけっこう素敵な感動作かと思っていたら、いきなり(死体が)屁ぇこいて、海の上走り出すんやもん。びっくりしたわ。
村本:すごくブラックな笑いだけど、最高のコメディーだということ。笑いどころもたくさんあって、コンプライアンスを気にしてしがらみだらけの今の日本じゃ、絶対に生まれない発想だと思うわ。日本のコメディーも、ここまでの自由はないやろ。観た人はみんな衝撃受けると思うよ。
中川:ほんま、日本のコメディーでここまでわけわからんもの、観たことないもんな(笑)。強烈すぎてびっくりしたわ。
村本:とはいえ、ヒューマンドラマみたいなところがちゃんとあってね。セリフの中にも、胸に刺さるような一言がちょっとずつ混ざってんねん。それがすごい。これはコメディーなんか? ヒューマンドラマなんか? ってなる。
中川:主人公と死体の間で、めっちゃ友情が芽生えてたりな。
村本:いろんな制約がある日本のお笑いばっかり見ている人にとっては、ものすごく衝撃的な映画だと思うわ。俺は、お笑いって緩急のバランスが大切って思ってるんやけど、この映画はそこもめっちゃバランスが取れてる。
中川:確かになぁ。一歩間違えたら完全にホラー映画やけど、めっちゃ笑えんねん。
村本:そのあたりは、最近、俺が見ているアメリカのスタンダップコメディー(マイクの前で一人しゃべりをするお笑い)と一緒やで。日本ではできない笑いを作り出してる。
■ハリポタ俳優にあんなことやこんなことまで!
村本:一個だけわかったんは、映画監督になれたらハリー・ポッターのことを、あんなめちゃくちゃにできるんやなってこと(笑)。 もう、やりたい放題やん! 監督たち(ダニエル・シャイナート&ダニエル・クワン)は多分、ドSやな。映画の最初からずっと死体やし、屁なんて、こかせまくってたで! まだ、大人になってからやからセーフやったけど、もし撮影が『ハリー・ポッター』の直後やったら、(原作者の)J・K・ローリングもブチ切れてたと思うわ!
中川:確かになぁ。ダニエル・ラドクリフって、かわいくて良い奴って感じがしてたのに、完全に『ハリポタ』からイメージ変わったもん。日本のアイドルだって、ここまでの汚れ役やれへんと思うよ。ゲロ吐いて、オナラして。
村本:でも、ラドクリフ的にはめっちゃ嬉しいんじゃないかと思う。キャラが完全についてしまっていたけど、こういう強烈な役をやったことで脱却ができそうじゃない? あんだけイメージが上がりきったラドクリフをマイナスまで落とすんやからさ。
中川:あの強烈なキャラクターから新しく生まれ変わらせるには、ここまでさせなあかんかったかもね。
村本:もはや俺の中で、ラドクリフのイメージからハリー・ポッターはいなくなりつつあるわ。ほうきで空飛んでたのも、この映画の後だと屁の勢いやったんちゃうかって思うくらいやもん。
中川:どっちが魔法なんって思うわ(笑)!
村本:この映画は確かに下品なんやけど、すごく知性と品を感じた。日本のお笑いでもちょっと芸に品性を求められるけど、アメリカのコメディーって下品なものでも、必ずどこか知的な面がある。
中川:純粋さがあるちゅうんかなぁ。ちゃんとピュアな感じ。死体もめっちゃピュアなヤツやし。
村本:ゲロ吐いて、屁こいて、ちんちん出させてんのに知性を感じるんだもん。そんな映画なかなかないで。そう考えると、めっちゃすごいものを観たんちゃうかって思うけど、でもやっぱり最低やな(笑)。
■みんなそろってタブーに挑戦!
村本:死体に乗っかって、なんか屁こいて進んで大冒険が始まるみたいになって、めっちゃクレイジーな映画やと思うねん。でも、映画の中にあった「変人もみんなでやれば笑えるだろ」っていう言葉がすごい胸に残って。この映画って、ヤバい人たちがヤバい映画を作ったって感じのめっちゃ変な作品だと思うのよ。でも、変人願望って実は誰の中にもあるもんやから、やったら結構楽しいかもしれないじゃない? この映画って、そのみんなでやったら楽しいぜってことを訴えているのかもな。例えば、俺たちが漫才でちょっとブラックなネタやると「やめときなよ、ヤバいよ」とか言ってくるやつがいる。でも芸人みんなが同じことしたら怖くないやん。
中川:オナラだってそうやもんな! みんなでこいたら怖くないもん。
村本:そう。赤信号みんなでわたれば怖くない! この映画が、芸人もテレビに関わる人たちや監督も、みんなそろって赤信号わたってやろうぜ! ってなるきっかけになったらええのにって思うわ。タブーに挑戦するのってめっちゃかっこええし、アメリカも日本も、そういうことに対する厳しさは一緒だと思う。そこで日本は忖度(そんたく)して、「やっぱやめとこう」「怒られるんじゃないか」って弱気になってすぐやめてしまう。でも、この監督たちはめっちゃ戦って、こんだけの映画作ったんやと思う。ホンマ、すごいと思うわ!
『スイス・アーミー・マン』
『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフが死体を演じ、ポール・ダノと共演した異色作。無人島で遭難した青年(ポール)が、水上バイク・モリ・話し相手など便利機能を満載した男性の死体(ダニエル)との友情を深めながら、わが家を目指してサバイバルする姿を描く。破天荒だけど心が温まる、新感覚の人間ドラマ。
(C) 2016 Ironworks Productions, LLC.
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。「AbemaNews」チャンネルのニュース番組「AbemaPrime」(毎週月~金曜日21:00~23:00生放送)にて月曜レギュラー出演。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。