これだけはやっちゃいけない「恋愛あるある」
今週のクローズアップ
「自分は絶対にこんなことしない」「ありえない」と思っていても、恋とは人を狂わせるもの。テレビドラマ&映画『モテキ』の大根仁監督最新作『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』で、究極のモテガールに翻弄される30代雑誌編集者をはじめ、恋愛において地雷を踏む映画の登場人物たちから、恋に勝つ方法を研究しましょう。(編集部・石井百合子)
連絡が取れないからと職場に電話
『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』の雑誌編集者・コーロキ(妻夫木聡)
奥田民生のように「力まないカッコいい大人」になりたい33歳の雑誌編集者コーロキが、クライアントのファッションプレス、天海あかり(水原希子)にひと目ぼれ。映画のタイトル通り、あかりはコーロキの職場の先輩・吉住(新井浩文)をはじめ男性たちを夢中にさせるとびきりの美女。独占欲に支配され暴力的になっていた吉住の後釜として、コーロキはあかりの彼氏となり有頂天になるが、そこからが地獄の始まり……。モテる女性を彼女にすると苦労は尽きないもので、音信不通になれば何回もメール&電話。追い詰められて、ついにあかりが勤務する会社に電話したところ、仕事関係の電話とカモフラージュしてこわばった態度をとられてしまう。
教訓:
連絡が取れないときには相手に何か事情があるのだと察して状況を見守るべし。しつこいメール&電話攻撃は相手を遠ざけるだけ。公私混同はもってのほか!
ちなみに、大根監督のヒット作『モテキ』(2011)の30代主人公・藤本幸世(森山未來)はコーロキと同じく草食系だが恋愛偏差値はコーロキよりも低く、卑屈で臆病。「やってはいけないこと」ばかりやらかす男だが、とりわけ目立ったのが、片想いの相手・みゆき(長澤まさみ)の親友・るみ子(麻生久美子)と関係をもち、それをみゆきに告げたこと。「やきもちをやかせて相手の気を引こうとする」のは駆け引きの常套手段だけど、それができるのはよほど自分に自信がある人だけ。どうしてもというのなら、「これきり」になるリスクを覚悟するべき。
自分と同じ愛の大きさを求める
島本理生の同名小説を、『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督が嵐・松本潤主演で映画化した本作。高校時代に出会った教師・葉山(松本)を思う泉(有村架純)の気持ちに気付きながら、猛アタックのすえ泉との交際をスタートさせた大学生の小野(坂口健太郎)。しかし、小野は夜中に葉山から泉に電話がかかってきたりと二人がまだつながっていることに不安を募らせ、泉を力ずくで支配する男へと豹変。泉が高校時代に葉山に宛てた手紙を盗み読むなど嫉妬でがんじがらめになり、ある晩「誰かにつけられている」と助けを求めて電話してきた泉に、「迎えに行くと言ったら、もっと自分を好きになってくれるか」の一言で絶句させる……。
教訓:
恋愛に限らず、見返りを求めるのは人のサガなのかもしれないけど、相手の気持ちを考えられなくなったら相手は離れていくいっぽう。人の気持ちは力ずくではどうにもならない。「携帯を見せて」と言うようになったら危険信号です。
酒の力を借りて本音を伝える
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の会社員・田西(峯田和伸)
『モテキ』の藤本幸世に輪をかけて恋愛下手なのが、花沢健吾の漫画の主人公・田西敏行。幸世のように複数の女性と関わることもないため、こちらの方がより現実的、シビアかもしれない。演劇ユニット「ポツドール」の主宰、三浦大輔が監督を務めた実写映画では、銀杏BOYZのボーカル峯田和伸が、ぶざまだけど切実な田西をハマり役で熱演した。同僚のちはる(黒川芽以)といい雰囲気で、もう少しで付き合えそうだった矢先、不運にもちはるの隣人の風俗嬢との“過ち”が知られることとなり、ちはるは田西に幻滅。ちはるはよそよそしくなり、落ち込んだ田西は同僚の結婚式でのスピーチで、酔いに任せてちはるへの思いを吐露する。
教訓:
気持ちがどんなに真摯であっても、個人的なことを公衆の面前で持ち出しては伝わるものも伝わらない。しかも、「酔った勢い」というのが男らしくない。思いを伝えるなら1対1で、面と向かって伝えましょう。
交際まもなく結婚をほのめかす
『ストロベリーショートケイクス』のOLちひろ(中越典子)
魚喃キリコの漫画を実写化。池脇千鶴、中越典子、中村優子らの出演により4人の女性の日常を描いた本作は、原作者の魚喃が女優・岩瀬塔子として出演したことでも話題に。イラストレーターの塔子(岩瀬)とルームシェアするOLのちひろ(中越)は、超恋愛体質。会社員の永井(加瀬亮)と交際をスタートし、彼のためにお弁当を作ってピクニックをしたり初めは笑いが絶えなかったが、永井の家に泊まるようになってからはかいがいしく世話を焼いたり家族構成を聞いたり結婚をほのめかすように。永井はそんなちひろに冷ややかな視線。しかし、ちひろはそんな彼の態度にまったく気付かない様子で、夕食の食材を手に彼のアパートの前で待ち伏せしたり猛アタック。やがて、ちひろの誕生日にも仕事で会えないと言われ、永井は一層遠ざかっていく……。
教訓:
年頃に「この人!」と思う人に出会えたら結婚を意識し、自分がその相手にふさわしいとアピールするのは当たり前のこと。だけど、急かされると逃げたくなるものなので、タイミングが重要。情事が終わったら即帰されるなど、相手が自分を軽んじるようになったらさっと身を引くのがベター。
「君だけでいい」と言う
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の個性派俳優ポール・ダノ、映画監督エリア・カザンの孫娘で脚本家、女優のゾーイ・カザンが共演したファンタジックなラブストーリー。かつて天才作家として一世を風靡し、今はスランプ中の作家カルヴィン(ポール・ダノ)の前に、何と空想していた魅力的な女の子ルビー(ゾーイ・カザン)が出現。周りの人間にも彼女の姿が見えることから確かにルビーは実在しており、しかもカルヴィンが小説に書くがままに彼女の行動を操れることがわかる……。初めはラブラブだった二人だが、明るく自由奔放なルビーと屈折したカルヴィンの間に次第にずれが。カルヴィンの実家に行けば皆が楽しそうにしているのに、ソリの合わない母親の恋人に当てつけるかのようにむっつり顔。「君だけでいい」と主張するカルヴィンを重荷に感じたのか、ルビーは「恋愛には距離が必要」「週に一度は自宅で過ごしたい」と言い出す。ルビーが離れていくと焦ったカルヴィンは、小説でルビーを操る「禁じ手」に出る……。
教訓:
恋愛にのめり込むと「相手が全て」になりがちだけど、多くの場合は重荷に感じられてしまう。相手を自分の型にはめようとしても後々不満が出てくるもので、先を見据えればお互いに違う人脈を持って刺激し合った方がいい関係を築けるはず。
セクシーな服装でデート
『ヤング≒アダルト』のゴーストライター、メイビス・ゲイリー(シャーリーズ・セロン)
ハリウッドきっての美人女優で、実在した連続殺人犯を13キロもの増量を経て怪演し、オスカーを手にしたシャーリーズ・セロンが、人生崖っぷちのアラサーヒロインにふんしたドラマ。37歳で恋人なし(バツイチ)、執筆中のヤングアダルトシリーズも終了間近。さえない日々を送っているにもかかわらず、同郷の人々を「かわいそうな人たち」と見下し、自分は現実逃避して「都会のイケてる女」と思い込んでいるメイビスは、はっきり言って誰が見ても「嫌な女」。ある日、高校時代の恋人だったバディ(パトリック・ウィルソン)夫婦から子供が生まれたというメールが。メイビスはバディが自分とヨリを戻したがっていると思い込み、かつて彼が送ってくれたミックステープをBGMに、故郷のマーキュリーに車を走らせる。高校時代にいじめられっ子だったマット(パットン・オズワルト)と偶然再会し、バディとの“再出発計画”を話し、「正気じゃない」とドン引きされてもメイビスの決意は変わらず、胸の開いたセクシーなドレス、完璧なメイクでバディと意気揚々と再会。メイビスの暴走が始まる……。
教訓:
「狂っている」としか思えないメイビスだけど、それも孤独ゆえのこと。それにしても、いくら元カレと言えど、久々に会うのに目のやり場に困るドレスを着るのはあまりにも短絡的。「品」は大事です。
相手の弱みを利用して優位に立とうとする
『麦子さんと』『ヒメアノ~ル』など今やすっかり売れっ子になった吉田恵輔監督が、2010年に高岡蒼甫(※高岡奏輔に改名)を主演に迎え、倦怠期を迎えた同棲カップルとそこに転がり込んできた妹の三角関係の顛末をシニカルに描いたラブコメ。釣り具ショップに勤務する百瀬(高岡)と化粧品販売員・佳代(田畑)のもとへ、夏休みを迎えた佳代の妹で中学生の桃(小野恵令奈)がやってくる。どうやら片想いしていた先輩に会うことが目的だったようだが、先輩には恋人がいて相手にされず、暇を持て余した桃は自分をちやほやしてくれる百瀬に接近。桃に夢中になった百瀬は、桃が家を去った後、佳代とケンカをきっかけに別れることに……。桃の気まぐれを本気と勘違いし、電話をかけまくるなど突っ走る百瀬の言動もさることながら、捨てられた佳代はさらに痛々しい。心の隙間を埋めるかのようにマルチ商法にのめり込み、百瀬の留守宅に忍び込んで家事をしたりとスリラー映画ばりの展開に。職場に行っても追い返され、泣いてもすがっても「やり直す気はない」という百瀬に、今度は「別れるならこれまでの生活費を払ってほしい」と迫り、百瀬をあきれさせる……。
教訓:
交際期間が長ければ長いほど一度破局すると修復は難しく、特にどちらかに好きな人ができた場合はなおさら。遠ざかろうとする相手に、弱みを突いて服従させようとしても逆効果。「果報は寝て待て」で、次の一手に出るには辛くても孤独に耐える時間も必要。