『エイリアン』への壮大な叙事詩!『エイリアン:コヴェナント』現場に潜入!
巨匠リドリー・スコット監督の出世作となった『エイリアン』(1979)は、SF映画史上に残る傑作として、世界中に多くのファンを生み出した。リドリーが自ら手がける新作『エイリアン:コヴェナント』は、『エイリアン』の面白さを再認識させた前日譚『プロメテウス』(2012)から11年後が舞台となる。昨年の初夏、オーストラリア、シドニーにあるフォックススタジオの撮影現場を訪ね、リドリーに話を聞くと共に、セットや衣装、クリーチャーを見学してきた。(取材・文:吉川優子)
宇宙に移住するために、2,000人の入植者を乗せたコヴェナント号は、惑星オリガエ6を目指すが、途中で事故に遭遇。正体不明の電波をキャッチした乗組員たちは、予定を変更し、地球に似た惑星を発見する。楽園かもしれないと思ったのもつかの間、そこは想像を絶する危険に満ちた場所だった……。主人公の女性乗組員ダニエルズを『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のキャサリン・ウォーターストンが演じ、アンドロイド役で再びマイケル・ファスベンダーが出演する。
巨大なサウンドステージ(防音仕様の撮影用の建物)内には、大きなスペーストラックが10台ほど置いてあり、映画のクライマックスシーンを撮影する大規模な着陸船のセットが組まれていた。スタッフの数は約300人で、当日セットにいたのは100人ほど。一方で撮影期間は74日間と、これだけの超大作にしては短めだ。
スコット監督は「最初の2週間、屋外シーンをニュージーランドのミルフォード・サウンドで撮影して、今はここで残りの撮影をしている。このスタジオは素晴らしいよ。働く人たちの職人芸の質は高く、技術力も最高だ。30分ほど行ったところに、フットボール場8つくらいある巨大な屋外のバックロット(野外撮影用の場所)があって、大規模なシーンを撮影するのにとても役立つ。この映画は、壮大な叙事詩だからね」と語る。
「今作の後、1作か2作で(オリジナルの)『エイリアン』に辿り着く。この映画は、広大なアイデアに向かっていく進化の真ん中あたりに位置するんだ」と説明。『プロメテウス』に続いて、死の必然性と不死、AIの創造に触れており、ストーリーも特撮も、パワーアップしていると言う。「特撮も、どんどん洗練されているよ。監督というのは、アスリートみたいなものだと少し思う。とても競争が激しいんだ。もちろん、僕はいつも前作よりさらに良いものにしようとしているよ」。
長年、トップを走り続ける79歳の巨匠が、自分をアスリートとなぞらえるところが面白いが、「『エイリアン』よりもずっと進化している」という今作を作るには、莫大なエネルギーが必要なのは間違いないだろう。
さらにスコット監督は「アクション映画であっても、良い脚本が大事だし、何よりも素晴らしい役者たちがとても重要だ。これだけ素晴らしいキャストを揃えられたことに、本当にホッとしているよ」とキャストを賞賛。最近、女性が主人公の大作も増えているが、スコット監督は、『エイリアン』でシガーニー・ウィーヴァーが演じたリプリーをはじめ、『G.I ジェーン』や『テルマ&ルイーズ』など強い女性を描くことで知られてきた。キャサリン・ウォーターストンの演技は、劇中で徐々に成長していくダニエルズに説得力をもたらしており、「キャサリンが、伝統を受け継ぐのに適切な人だと感じた」という監督の言葉の通り、キャサリンはまさにハマり役だ。
ダニエルズを演じたキャサリンは、心ならずもヒーローになっていく、という点で、ダニエルズとリプリーは似ていると言う。「彼女は、テラフォームにかかわる科学者たちのチーフで、目的地の惑星に着いたら、食べ物を育てて、生活を維持するのが仕事なの。だから、武器や肉体のトレーニングは受けたけど、それはケガをしないためのセラピーみたいなもので、むしろ武器の使い方に慣れすぎて見えないように気をつけたわ。セットや衣装など、全てがリアルで、演技をとても助けてくれる」。
また、スコット監督とは友人同士であるファスベンダーは、『プロメテウス』で生き残ったデヴィッドと、コヴェナント号の乗組員であるウォルターという2人のアンドロイドを見事に演じ分けている。
「一人二役は楽しいよ。デヴィッド役では、前作と今作の両方で、ピーター・オトゥールとデヴィッド・ボウイ、オリンピックの飛び込みの選手グレゴリー・ローガニスの3人の影響を受けている。前作のときには『ブレード・ランナー』のレプリカントも参考にしたよ。今回は、『エイリアン』と『エイリアン2』のアンドロイドの行動も取り入れた。一方のウォルターはレナード・ニモイ。「スター・トレック」のスポックに影響された。感情的ではなく、とても論理的なキャラクターが欲しかったんだ」。
もちろん『エイリアン』映画で役者と同じく重要なのは、怖~いエイリアン。新たに登場する「ネオモーフ」という白く透き通った新種のエイリアンは、従来のエイリアン「ゼノモーフ」よりももっと動物的な動きを見せる。クリーチャー・スーパーバイザーのコナー・オサリヴァンは、「いつもはもっとメカニカルなルックスだったけど、今回はもっと自然なんだ。ミツクリザメを参考にしていて、細長い頭で、歯が飛び出してくる」と語った。美術学校に通ったビジュアル派のスコットはストーリーボードを全て自分で描くことで知られているが、ネオモーフを作るためにも、何百枚という絵を描いたそうだ。
リドリー・スコットならではの衝撃的な映像美と恐怖、スリル、壮大なテーマを存分に楽しめる今作。ラスト、「ここで終わるの!」と叫びたくなった人は多いだろう。早く続編を作ってくれることを切に願いたい。
映画『エイリアン:コヴェナント』は9月15日より全国公開
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