女手一つで40年!86歳の館長が教えてくれた映画の素晴らしさ 第1回Beppuブルーバード映画祭
昭和24年に創業した大分県別府市にある別府ブルーバード劇場で、9月29日から10月1日までの3日間、第1回Beppuブルーバード映画祭が行われました。現在86歳、40年以上に渡って女手一つで映画館を守り続けてきた岡村照館長。これまでの館長の功績を、映画で讃えようと多くのゲストが来場して盛り上がりました。そんな映画祭の様子をレポートします!(取材・文:森田真帆)
『蒲田行進曲』35ミリフィルム上映に平田満登場!
今回の映画祭の目玉の一つは、映画『蒲田行進曲』の35ミリフィルム上映! 86歳の館長自らが映写をするということで、会場は瞬く間に満席に。多忙なスケジュールをぬって上映に駆けつけたのは、『蒲田行進曲』で一際、存在感を放ったヤス役の平田満。「86歳という高齢の館長さんに敬意を表して」と自ら劇場のはっぴを着てトークショーに登場。『蒲田行進曲』の撮影裏話を披露し、観客は目を輝かせながら話に聞き入っていました。
カラカラというフィルムが回る音が映写室から聞こえてきた後、スクリーンにタイトルが映し出されると大きな拍手が。まるで昭和の映画館にタイムスリップしたかのように、上映中は掛け声が飛んだり、笑い声が沸き起こったりしました。エンドクレジットで主題歌の「キネマの天地」が流れると、お客さん全員が手拍子を打ち、割れんばかりの拍手が劇場を包みました。この日の上映には、映画祭ゲストの津田寛治の姿も。「最高の劇場体験ができました。今日観た『蒲田行進曲』のことは一生忘れません!」と大興奮。普段はあまり観客のいない別府ブルーバード劇場が、立ち見客で盛況だったという黄金時代に戻ったようでした。
若手からベテランまで全員が自然体な別府ブルーバード劇場の力
今年の映画祭には、村上虹郎、津田寛治、西村知美、遠藤ミチロウ、女装家のブルボンヌ、芸人のアントニーを始め、俳優、監督総勢21名が参加。観客の顔がすぐ近くに見える80席の小さな劇場で、それぞれがナチュラルなトークを繰り広げました。観客もまた、手拍子や笑い声で映画を心から楽しみ、出演者もまた自分たちの出来る範囲でお客さんの気持ちに応えていく。アントニーは商店街でチラシをまき、村上は即席でサイン会を開催。ブルボンヌも最後まで笑顔で観客と写真を撮り続けました。劇場を中心に、映画と出演者、観客が一体化していくような温かな空間がそこにありました。
ハプニングで見せた津田の神対応!
「別府ブルーバード劇場が大好きなんです」という津田は、見事なハプニング対応で観客の心を掴みました。別府ブルーバード劇場の2階と3階で同時に行われていた映画のトークショー。3階のイベントが長引いてしまったことで、津田が出演する映画『追憶ダンス』と短編映画『ふたごとうだつ』のトークショーに司会者が間に合わないという緊急事態になってしまったのです。映画が終わって一瞬気まずい沈黙が走った場内の空気をフォローするかのように、津田はマイクを持って壇上に上がり、アドリブでトークを開始! 見事な機転に観客からは温かい拍手が送られていました。
マニアックな映画の上映に映画ファンは大喜び
どんな人でも映画を好きになってもらいたい、ジャンルにこだわらず多くの人が楽しんでくれる映画館にしたいという岡村照館長の思い通り、上映された作品は問題作から話題作、懐かしの名作にインディペンデント系の映画までの計22本。初日の夜には、三池崇史監督、遠藤憲一主演のカルト映画『ビジターQ』と、映画『ヘルドライバー』のスピンオフ作品である短編映画『脱出~Bail out~』が上映され、監督の高橋ヨシキと女優の中原翔子が登壇。『脱出~Bail out~』を「絶対にスクリーンで観ることはできないと思っていた」という観客の中には、大阪からはるばるやって来たという人も。
市長も登場!壇上で重大発表
西村知美とのトークショーにはサプライズで別府市長が登場! 岡村照館長に別府市から特別功労賞が送られることが、その場で発表になりました。40年以上別府で映画の灯を守り続けてきた照さん! おめでとうございます!!
映画祭を支えたボランティアの力
映画祭の期間中、別府ブルーバード劇場のエントランスでは常に誰かが「映画祭やっていまーす!」と大声でお客さんにアピール。彼らは全員劇場を愛するボランティア。また別府駅前では、おおいた県住みます芸人の野良レンジャーの姿も。「いつもお世話になっているから、恩返しがしたい」という二人は、地元の人々との写真撮影に応じながらチラシを配っていました。そのほかにも、チケットのもぎりから観客の誘導、パーティー会場の飾り付けなど、ボランティアの人々の善意が映画祭を支えていました。
映画祭は感動のクロージングへ!
映画祭のラストを飾ったのは、映画『ヘアスプレー』。ブルボンヌが、地元でミュージカルを学ぶメンバーと一緒にパフォーマンスを披露。本作は、ビッグサイズでも自分に自信を持ち、差別と向き合って戦おうという勇気ある主人公の奮闘を描いたミュージカル作品。ブルボンヌが「それぞれが違って、個性的でいい。自分自身を好きになって」とトークショーで語ると、会場には涙する人も。エンドクレジットが終わると大きな拍手が沸き起こりました。観客は「ブルボンヌさんのトークショーがあったから、映画の持つメッセージがとても重く響いた。楽しかったけど、感動した」と笑顔を浮かべて帰っていきました。館長は「劇場は、観客が多ければ多いほど喜ぶもの。こうやってみんなが一緒に映画を楽しんでもらえて本当に良かった」と話した。笑顔で始まり、笑顔で終わった映画祭。皆さんお疲れ様でした!