愛しい女に尽くす男たちの映画
今週のクローズアップ
どんな方でも愛している人に尽くす姿は美しい……“尽くす女”なんてフレーズがありますが“尽くす男”もいいものですよ。そっとあの人(三次元もしくは二次元)を思う秋の夜長にピッタリな、愛のために動く男たちが登場する映画をご紹介します。(編集部・井本早紀)
愛に生きる男にボロ泣き『彼女がその名を知らない鳥たち』
自堕落な生活を送る十和子(蒼井優)を支える、15歳年上の男・陣治(阿部サダヲ)は、マジで“必殺尽くし人”。見た目的&行動的にも汚いところがあるので、「うわっ苦手」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、陣治が十和子を愛する姿はあまりにも純真で美しすぎる。映画で十和子は、不倫しまくり陣治を裏切りまくりなのですが、それでも十和子を愛し続けた陣治が仕掛けた最大のウソに、泣かされること間違いなし。あまりにも尽くしすぎるので「ストーカーか??」と思うシーンもあるのですが、そのサスペンス要素も含めて楽しめる一作です。あ、もちろんラストにはすべてが解決してスッキリできるので、安心して「愛に生きる男性、最高や……」とボロ泣きしに行ってください。
みんな大好き一途な先生『ハリー・ポッターと死の秘宝』
はい、このテーマを見て、スネイプ先生を思い出した人! わたしも仲間に入れてください。『ハリポタ』シリーズは『ハリー・ポッターと賢者の石』や『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で止まっている人、全部観るのはめんどくさいな~と思っている人、ほかはすっ飛ばしていいからとにかく最終章『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』を観て!! ずっとウザさMAXだったスネイプ先生が、なぜハリーをいじめていたのかの理由が明かされるので! 陰の主人公レベルなので!! ぜひ鑑賞後に「一途すぎない~~!?」ともだえ苦しんでほしい。ちなみに昨年亡くなったスネイプ役のアラン・リックマンさんも、19歳の時に出会った女性と50年間交際した後に結婚した超一途な人。しかもその結婚も、ニューヨークで式を挙げた後に一緒にランチを……というささやかなものだったそう(→記事)。長い間一人の人を慈しむ心を持ったアランさんだったからこそ、スネイプ先生を演じられたと思うのです。
タイトルに頷きながら泣く『容疑者Xの献身』
愛には様々な形があります。恋人として結ばれたい、家族として穏やかな日々を過ごしたい、その人の幸せな日々を守りたい。「尽くす」の同義語には「献身」という言葉がありますが、まさしく献身的な愛が描かれる本作。ガリレオシリーズはミステリー作品ですが、殺人ミステリーにおける重要な「誰が被害者を殺したのか」という謎は、この映画では冒頭でほぼ明かされます。それでも観る人を引き付けるのは、再び真相を隠してしまった容疑者の存在が非常に魅力的だから。ガリレオこと物理学者・湯川(福山雅治)も、うらやむ頭脳を持つ石神(堤真一)。映画の核となるのは、合理的な考え方で生きてきた石神が犯してしまった計算違い。石神に感情移入しているうちに、正義の主人公の湯川に恐ろしさを感じてしまうかも? 原作小説とは少し異なる容疑者のラストシーンには、原作ファンからも泣いたという声も寄せられていましたね。
恋愛の研究用サンプルにどうぞ『そんな彼なら捨てちゃえば?』
夫に不倫され怒り狂った女性が鏡をたたき割り、泣きながら箒とちり取りで破片を片付ける。そんなちょっぴり軽め(?)なラブコメディーにも、尽くす男は登場します。アメリカ映画のように積極的な恋愛の仕方には共感できないと思っている人でも、自分と似ている誰かを見つけられる『そんな彼なら捨てちゃえば?』なのですが、その中には一途な男性も。父親が倒れた時でさえも、自分勝手に行動する家族の男たちにすっかり幻滅してしまった女性(ジェニファー・アニストン)。そんな彼女の負担を唯一肩代わりしてくれたのは、彼女との結婚を保留し続けてきた男性(ベン・アフレック)なのでした! しかもその後の展開もうれし泣きさせてくれる! 欲望に忠実な自分勝手な男性と、愛する女性を喜ばそうと尽くす男性の両者を観察できる映画なので、リアル恋愛の研究用サンプルとしてもどうぞ。
世界<妹の兄『コードギアス 反逆のルルーシュI 興道(こうどう)』
二次元だって、いいじゃない!! 今から約10年前アニメファンを泣かせたルルーシュが、今度はスクリーンに登場します。妹・ナナリーのために生き、ナナリーのために世界を変える男、それがルルーシュ・ランペルージこと神聖ブリタニア帝国第十一皇子・第17皇位継承者ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアなのです! 昔、テレビシリーズで「学園祭宣言!」というタイトルにキャッキャウフフしたかと思えば、次回予告の「血染めのユフィ」で絶望に突き落とされた記憶がよみがえってきますね! ルルーシュの人生は、母親を殺され、人質として日本に送られ、祖国による日本攻撃で亡き者扱いにされるというハードモードスタート。それでも彼が革命家「ゼロ」として立ち上がるのは、ナナリーが健やかに暮らせる日々を勝ち取るため。しかし妹と並んで心を許せる存在だった親友は、敵軍の幹部となっていたのです。つらい。この劇場版3部作はテレビシリーズの50話分を再構築したものですが、声優陣による全編新規アフレコを行うなど「新要素」もあるそう。現在公開中の『コードギアス 反逆のルルーシュI 興道(こうどう)』では、ルルーシュの物語の序章が描かれています。そういえばテレビシリーズでは「土の味」というタイトルの回がありましたが、劇場版3部作でもルルーシュは土の味を知ってしまうのかしら……。