映画『先生! 、、、好きになってもいいですか?』広瀬すず&竜星涼&森川葵 単独インタビュー
冷たくされても、ずっと好き
取材・文:磯部正和 写真:高野広美
『青空エール』や『俺物語!!』など数々の作品が実写映画化された人気漫画家・河原和音の初期の代表作が原作の『先生! 、、、好きになってもいいですか?』。本作で、広瀬すず演じるヒロイン・響のよき理解者である同級生・千草恵と川合浩介にふんしたのが、森川葵と竜星涼だ。撮影当時、現役女子高生だった広瀬が「ピュア過ぎる」と感想を漏らしていた森川と竜星、さらに「恋愛映画は初めて」という広瀬が、撮影のエピソードや、それぞれの恋愛観、俳優としての思いを語った。
年齢差のある同級生役
Q:少しずつ年齢差がある3人で務めた同級生役でしたが、撮影で意識したことはありましたか?
広瀬すず(以下、広瀬):わたしの実の姉(広瀬アリス)が、葵ちゃんと仲が良く、仕事は初めてだったのですが、プライベートでよく会っていたので、現場で一緒になり、しかも同級生役というのは、少し不思議な感じでした。でも竜星くんも、とてもフレンドリーに接してくださったので、お互い気を使って「あーどうも」みたいな感じではなかったです。
竜星涼(以下、竜星):すずちゃんとは、今回初めましてだったのですが、制服姿のピュア感がマックスに出ているので、その横に自分が立つとボロが出てしまうのかなって思っていました(笑)。
森川葵(以下、森川):竜星くんは男の子だからいいでしょ。葵は女だから、ピュアピュアなすずちゃんの横に立つとね……(苦笑)。同級生の設定で横に並ぶのは大丈夫なの? ってずっと思っていましたね。
竜星:いや、でもまだ葵ちゃんもイケてたよ。
森川:なに、この慰め合いは……。
女優・広瀬すずのパワーに脱帽!
Q:それぞれ俳優として、共演を通じて感じた魅力はありますか?
森川:すずちゃんは、一緒に芝居をしていて、これだけの数の映画で主演をやるだけの魅力というか、パワーがあるなって思いました。輝きが全然違う。すごいなって。
竜星:本当にすごい瞬発力なんです。
広瀬:そう言っていただけるとうれしいです。本読みのときは、まだ自分のなかで役柄ができていなかったのですが、葵ちゃんと竜星くんの声を聞いていて、この2人についていけば、自然と距離感がわかるなって感じたんです。これまで真っすぐな女の子の役柄が多く、響みたいなみんなが守りたくて応援したくなるキャラクターをどうやって演じたらいいのかと思っていましたが、カメラが回っていないところから、一緒に距離を作っていただけたので、すごく助かりました。
Q:竜星さんや森川さんは社会人の役もやられたりしていますが、高校生役というのはどんなご気分なのですか?
竜星:すずちゃんを見ていると、まぶしいんですよね。この鮮度にはかなわないから、ちょっと違う、浩介らしい年齢にはあまり影響されないキャラクターを強調したりする意識はありました。あとはあまり深く考えず、この作品に呼んでくださったプロデューサー陣に、いろいろなことは背負ってもらおうと。
広瀬&森川:イケてたよ!
森川:わたしは連ドラ(10月クールに放送の『先に生まれただけの僕』)で教師を演じるので、同時期に高校生役と先生役の作品が公開されたり放送されたりするのは、不思議な感じですね。冷静に考えると、先生役もできる年齢なので「あの子まだ制服着ているよ」って思われるのは少し恥ずかしいという気持ちがある一方で、もう高校時代には戻れないので、こうやって役でまた経験できるのはうれしいです。
可愛い広瀬の恋愛観
Q:劇中、3人とも好きな人に思いが届かない役柄でしたが、もし好きな人に冷たい態度をとられたらどんな行動に出ますか?
広瀬:好きな人に冷たくされたら、ずっと気になって気になって話しかけることもできないかも……。
竜星&森川:可愛いー。
広瀬:「なに、なんでこうなっちゃうの」って相手を観察し始めます。でもアプローチはできないです。チキンなんです。
Q:諦めてしまいますか?
広瀬:うーん、諦められないかな。気持ちがなくなるまでずっと好きではいると思いますが、自分からアクションを起こす勇気はないです。届かない、どうにもならないのは痛みにつながると思うのですが、もっと拒否されるのは怖いから、このままでいいやって思っちゃうかもしれません。
森川:わたしは向こうから反応が返ってこなかったら、好きって思い続けるかもしれませんが、冷たくされたら「この人、わたしのこと好きじゃないんだろうな、嫌いなんだろうな」って思ってスッと引きます。冷たくされるって、結構寂しくないですか。
広瀬:寂しい……。
竜星:寂しい、悲しいね。でも僕は冷たくされているぐらいだったらめげずに頑張ります。変な話、自分の思いを言葉で伝えて、冷たい反応が返ってきたら諦めるなり、次の行動をとると思いますが、もし気持ちを伝えていない段階で冷たくされるのだったら、空気を読まずにガンガンいきます。
Q:広瀬さん演じる響は、生田斗真さんふんする伊藤先生にかなり心を砕かれる言葉をかけられていましたが、響には感情移入できましたか?
広瀬:好きな人に「魔が差した」とか「迷惑」とか、結構ちゃんと傷つくことを言われるんです。そういう痛い部分の響の気持ちは共有できたのかなとは思います。カメラが回っていないところでも、恋愛物語だし、生田さんに自分から話しかけてみようってやっていたのですが、こうしたシーンのあとは、相手の顔をうかがってしまったりしました。
逃げ出したくなった過酷な現場とは?
Q:ドラマや映画など出演作が続いている3人ですが、多忙のなか、精力的に活動を続ける原動力になっていることはなんですか?
広瀬:すごく単純ですが、食べることです。頑張ったときのご褒美においしいご飯を食べにいったりするのは、楽しみだし、息抜きや気分転換やストレス発散になります。ただ普段からお仕事がとても楽しいので、疲れたと思ったことはあまりないんです。自分の知らない世界を知ることができたり、いろいろな人とお話しさせていただいたり、吸収するものしかないので充実しています。
森川:現場が楽しいというのはあります。あとはもう22歳になったので、働かなくてはいけないという気持ちは強いです。生きていくためにという思いもあるかもしれません。
竜星:僕も仕事は仕事という感じがあります。役者って結局自分じゃない人間になるわけで、自分は割と“個”が強いタイプなので、修業をしている感じです。唯一、仕事をやり終わって「良かった」という評価を聞くと「やってよかったな」と思うことはありますね。
Q:逃げ出したいと思ったことはありませんか?
広瀬:一度あります。『怒り』という映画で、沖縄の撮影だったのですが「いつ船で逃げようか」ってずっと思っていました(笑)。そのぐらい追い込まれたのですが、撮影が終わって時間が経つと、出会えてよかったと本当に思えました。直後の別の作品では、(李相日)監督がいなくて不安で仕方なかったぐらいです。でもこうした経験ができたことは、その後の自分のエネルギーにつながっています。
森川:わたしはすずちゃんほどの経験がないのかもしれませんが、逃げ出そうと考えたことはないです。逃げ出してもまた大変なことはいっぱいあるだろうし、逃げ出すより乗り越えた方がいいのかなって考えちゃいますね。
竜星:まあ、仕事なので責任もありますしね。逃げ出そうと思ったことはないかな。
恋愛が絡まない男女の友情でつながっている仲良し3人組を演じた広瀬、森川、竜星。広瀬から竜星までの年齢差は5歳あり、竜星の言葉を借りるなら“鮮度が違う”ようだが、劇中の3人は、その差を感じさせない。広瀬は竜星や森川に「引っ張ってもらった」と感じ、竜星と森川は、広瀬の瑞々しさに「引っ張られた」という。こうした互いへの敬意が一つの拠り所となり、違和感ない同級生という形として表れているのだろう。「教師と生徒の純愛」というしっとりとしたテーマのなか、この3人のシーンは、とてもいい緩急を作っている。
(C) 河原和音/集英社 (C) 2017 映画「先生!」製作委員会
映画『先生! 、、、好きになってもいいですか?』は10月28日より全国公開