ヤバさ300%!愚かすぎる殺人一家をそのまま描いた映画がトラウマ必至
提供:日活・東京テアトル
日本に名だたる名匠たちが実際に起きた凶悪事件をベースに撮った映画は名作も多い。「事実は小説よりも奇なり」、生身の人間が起こす事件は、脚本家にも想像できないほどクレイジーでぶっ飛んでいるものばかり。しかし、これまでの映画の枠をはるかに超えた強烈に醜悪でトラウマ必至のサイテー映画が公開される。その名も『全員死刑』。観るか観ないかは、あなたの覚悟次第だ。(編集部・森田真帆)
この家族、マジでヤバい!凶悪犯罪の中でも群を抜くサイテー度
異常な犯人たちのキャラクターをさらにデフォルメし、狂気と混沌を表現の限界まで描く実録映画には映画史に残る傑作も多い。園子温監督の『冷たい熱帯魚』、白石和彌監督の『凶悪』、今村昌平監督の『復讐するは我にあり』などが描く犯人たちには、狂気の中に刹那的な悲しさと狡猾(こうかつ)さが描かれていた。
しかし、『全員死刑』の犯人たちは、まさかの“おバカファミリー”。「あの家には金がある」という、勝手な憶測だけで家族全員が殺人に手を染めるヤバさ。かつて深作欣二が極道の人間たちを描いた実録映画『仁義なき戦い』シリーズでは、成り上がるために手段を選ばない男たちが登場したが、本作の家族には「仁義」はおろか、すべてが行き当たりばったりの愚かさしかない。自分の子供に殺人を手伝うよう頼み込み、憶測だけで人を殺してしまう一家の愚かさは、日本の犯罪史上サイテー最悪の家族と言えるだろう。
間宮祥太朗の変貌ぶりがヤバい!凶悪演技での強烈な変貌ぶり!!
白石監督の『凶悪』は、おっかないヤクザにふんしたピエール瀧、老人をいじめてはしゃぐリリー・フランキーの狂気に満ちた強烈な演技が衝撃的だった。ピエールに至っては、もはや朝の子供番組のお兄さんの面影はなく、『アウトレイジ 最終章』でも刺青を背負って出てくるコワモテ俳優の地位を築いた。
そして本作で、殺人一家の次男坊であり、自分の中の殺人スイッチを押してその快楽に気づく主人公タカノリを演じるのは、若手俳優の間宮祥太朗。イメージアップどころか、イメージダウンにもなりかねないこのリスキーな役を間宮は全てを振り切ったかのように熱演している。小林監督自身、間宮が金髪で現れた瞬間に「覚悟を決めた」と語るように、この映画における間宮の存在感は壮絶だ。仲間や身内に対しては愛情を見せるようなピュアな面を持ちながらも、一方で覚せい剤を打ち、瞳孔を開いて殺人鬼へと変貌する。ファンなら悲鳴をあげるであろう間宮の熱演は脳裏に焼き付いて離れないヤバさだ。
まだ20代、若き異才小林勇貴監督の危険すぎる挑戦がヤバい!
実際に起きた凶悪な事件を描くとき、どの監督もある程度腹を決めないと映画にすることはできないはず。この難しさに真っ向から向き合ったのは、若き異才の小林勇貴監督。自分の地元である静岡県富士宮市の本物の不良たち総勢40名以上をキャスティングして撮った青春バイオレンス映画『孤高の遠吠』で日本映画界に殴り込みをかけた若き天才が、この『全員死刑』をどのように撮るのか。
園子温監督は、『冷たい熱帯魚』で殺人鬼を演じたでんでんから狂気を引き出した。小林監督もまた、本作で今をときめく若手俳優の間宮から荒れ狂うほどの怒りを引き出して、そのエネルギーをスクリーンで爆発させた。小林監督が事件の中から見つけたものはなんだったのか? 愚かな殺人一家たちの「瞬間」を切り取りながら、映画というエンターテインメントに昇華させた小林監督は、観客の心に重たすぎるパンチを浴びせてくるだろう。否が応でも体感することになってしまうトラウマ地獄。これは劇場に行かないとヤバい!
映画『全員死刑』は11月18日よりヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほかにて全国公開
(C)2017「全員死刑」製作委員会 ※R15+作品