『最後のジェダイ』でも大活躍!BB-8初期イラストと振り返る誕生秘話
映画『スター・ウォーズ』シリーズのエピソード8にあたる最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』がいよいよ全世界で公開された。すでに「シリーズ最高」と言うファンも多く、最初から最後まで、ファンにとって堪えられない瞬間がてんこ盛りの内容となっている。前作で多くのシリーズファンを熱狂させたBB-8は、今回も多くの場面で主人公たちを窮地から救う大活躍を見せる。
1975年、シリーズ第1作となる『スター・ウォーズ エピソードIV/新たなる希望』の特撮のために設立された『スター・ウォーズ』ファンの聖地にして、世界有数のVFX工房ILM(インダストリアル・ライト&マジック)を訪ね、アート・ディレクター、クリスチャン・アルツマンに、愛くるしいBB-8の誕生秘話を聞いてきた。(取材・文:細谷佳史 / Yoshifumi Hosoya)
BB-8のデザインが、エピソード7『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のJ・J・エイブラムス監督による手描きスケッチが元になっているのは有名だが、アルツマンは当時、そのスケッチが届くまで、多くのアイデアを試行錯誤していた。「僕らは、『レイに、彼女を追いかける小さなドロイドが必要かもしれない』とだけ知らされていたんだ。それで僕は、小さな宙に浮くドロイドを考えていた。頭に小さな翼が2つあって、彼女の横を飛んでいるBB-8だったんだ。その後、エイブラムス監督と打ち合わせをしたプロダクションデザイナー(美術監督)から届いた、2つの丸が描かれたポストイットの写真を見て、『オッケー、監督は回転するドロイドが欲しいんだな』と思った」。
そしてもちろん、アルツマンは、『スター・ウォーズ』ドロイドの大先輩R2-D2のデザインにも注意を払った。「僕はいつも、R2-D2のデザインが、2つの目と口からなっていない点が大好きだった。それ(顔の作り)ははっきりとしていない。ほとんどピカソの作品のような顔で、とてもアブストラクトだ。でも、そこに顔があるのはわかる。それに彼は、機械工学のために作られたドロイドだ。任務のためにね。BB-8にも、ボディーパネルの開閉や、秘密の引き出しといったドロイド特有のディテールや、エンジニアリング・ランゲージ(工学用語)を、そのまま受け継がせることにしたんだ」
また、ある時サッカーボールを目にしたアルツマンは、大きなインスピレーションを得ることになる。「『BB-8の開閉パネルをデザインするには、サッカーボールだ』となったんだ。いろんなデザイナーが、サッカーボールを(デザイン的に)分割してみている。とても楽しくて、あるパターンを反復する(繰り返す)デザインになっているんだ。それがちょっとロボットっぽくもある。ボールを分割する方法については、デザイナーたちが僕よりもずっと詳しいと思ったよ。そして、その多くは、同じパターンを6回ぐらい反復したものだということを学び、『オッケー、そこから始めよう』となって、それを試みたんだ」。
悪役カイロ・レンのエピソードも興味深い。「最初の頃、カイロには名前がなかった。彼は、“ジェダイ・キラー”と呼ばれていて、僕らは、『多分彼は、ある種の悪者で、ジェダイをハントして殺すんだ』と考えた。それと、彼が『ダース・ベイダーになりたがっている』ということは知っていたから、彼のコスチュームは、ほとんどダース・ベイダーのように見えるものから始めたんだ」。
1999年からILMで働いている大ベテランのアルツマンだが、『スター・ウォーズ』からは、デザイナーとして今でも多くのことを学んでいるという。「どれもシンプルなデザインなんだ。なかでもTIEファイターは、最もシンプル。それにダース・ベイダーも忘れられないデザインだ。大きくて、怖くて、ダークであるということがすごく明白にされている。チューイーもとてもアイコニック。『人間の親友である犬を、7フィートの背の高さにしよう』と感じる。ほとんど呆れるほどシンプルなんだよ。でもだからこそ、『スター・ウォーズ』を観れば、2日経っても彼らの形を覚えていて、それを描くことができるんだ」。
映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は全国公開中