リアルすぎて過呼吸注意!オスカー監督の最新作がキョーレツ
提供:ロングライド
「正直に答えなければ一人一人を殺していく!」正義の味方であるはずの警察官から身に覚えのない疑いをかけられ、暴力的に脅されてしまう若者たち(黒人男性7名、白人女性2人)。1967年、実際にあったデトロイト暴動の最中に発生した事件をアカデミー賞受賞監督のキャスリン・ビグローが映画化した『デトロイト』。息をするのも忘れるほどリアルな描写で、事件当時若者たちが味わった強烈な恐怖を体感させられます。(編集部・森田真帆)
誰か助けて!無実の若者が陥った緊迫の40分
本作の舞台は、1967年アメリカ中西部の大都市デトロイト。米史上最大級の激しい暴動が起きていた最中、騒ぎから逃れるために訪れたアルジェ・モーテルで若者たちを襲った悪夢の40分間を生々しく描きます。
警察官から「貴様らは犯罪の容疑者だ!」と一方的に疑いをかけられたうえに理不尽な暴力で自白を強要され、肉体的にも精神的にも極限の状況に追い詰められていく若者たち。逃げ場のない密室で、正義を下すはずの警察が我を忘れて暴走し、誰も助けてくれないという八方ふさがりの状況の中、怒号が響き、若者たちはいつ訪れるとも知れぬ死の恐怖と闘わなければいけないという状況に陥っていきます。映画館の密室は、若者たちが警官に拘束されるアルジェ・モーテルの廊下と同化し、観客も悪夢のような40分間を彼らとともに体験することになるのです。逃げられない恐怖に心臓はかつてない心拍数を叩き出すことになるでしょう。
史上最悪のクズ警官!オスカー監督の演出力はやっぱりスゴイ!
本当に素晴らしい演技を見せているのが差別主義の若い警官・クラウスを演じているウィル・ポールター。映画『なんちゃって家族』で、すっとぼけた童貞男子を演じて数々の賞を受賞した彼が、この映画では超理不尽な暴力を振るう史上最悪のクソ野郎を熱演! あまりの演技のすさまじさに、映画を観たレポーターからインタビューで「ごめん! めっちゃパンチしたい!」と言われてしまうほどですが、本人は撮影中にあまりの苦しさに泣き崩れたこともあったそう。そこまで役者たちを追い込み、観客の感情をわしづかみにしたビグロー監督の演出力はさすがです!
そして食品店の警備員で、アルジェ・モーテルに行ったことで事件に巻き込まれる若者ディスミュークスを演じているのは、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でフィンを演じているジョン・ボイエガ。冷静に状況を判断し、若者を守ろうと奮闘するディスミュークスを、ジョンが持つ深い知性で好演。監督は映画『ハート・ロッカー』の手法を使い、複数の固定カメラで役者たちの演技を撮り続けることで、彼らの緊迫の演技を最大限に引き出したそうです。
若者たちがみせる極限の人間ドラマに涙!
極限状態に追い込まれた若者たちは、差別により自分たちの自尊心を傷つけられます。そんな恐怖の中で命の危機にさらされながらも必死に生き抜こうとするその姿は、同時に、この混沌の時代を「強く生き抜け」というメッセージとなって、今を生きる観客の心に深く突き刺さります。
実際にこのアルジェ・モーテルの事件に巻き込まれた、ザ・ドラマティックスのリードボーカルであるラリーが恐怖に震え、涙を流しながらもゴスペルを歌うシーンなど、心に残る音楽の強さが、緊迫感のあるドラマに感動をもたらします。戦慄の夜を乗り越え、今も実際に教会でその歌声を響かせ続けるラリーの生き様は、人間の強さを私たちに教えてくれることでしょう。
常に社会問題に取り組むビグロー監督が挑戦した人権問題
イラク戦争を舞台に描いた『ハート・ロッカー』で女性初のアカデミー賞監督賞を受賞し、『ゼロ・ダーク・サーティ』ではアカデミー賞5部門にノミネートされたビグロー監督。彼女は、映画という手法を使って、これまで誰も踏み入れたことのない世界に観客を連れて行ってくれます。社会派の彼女が今回選んだ題材は、事件発生から50年目を迎えたデトロイト暴動。
緻密なリサーチのもと、暴動の様子や当時の人々の感情を生々しく再現した彼女が、映像を通じて観客の心に揺さぶりをかけてきます。ビグロー監督は「過去を振り返り、過去と比べて現在がどのように変わり、何が変わっていないのかという疑問を持つべき」と作品への思いを寄せています。この映画を観て、改めて世界を見ると様々な感情が湧き上がってくるのではないでしょうか。
議論のきっかけに…特別映像“デトロイトの希望”
映画『デトロイト』は1月26日より全国公開
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