第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門19作品紹介(3/3)
第68回ベルリン国際映画祭
『イン・ジ・アイルス(英題) / In the Aisles』
製作国:ドイツ
監督:トーマス・シュテューバー
キャスト:フランツ・ロゴウスキ、ザンドラ・ヒュラー
【ストーリー】 ささいなミスで建設現場の仕事を失職したクリスティアンは、スーパーマーケットで商品の棚出しの仕事に就く。彼は自分がこれまで生きてきた世界とはまったく違う世界を前に、圧倒され……。
【ここに注目】 『ヴィクトリア』『ハッピーエンド』のフランツ・ロゴウスキを主演に迎え、スーパーマーケットに再就職した主人公の発見に満ちた日々を描写する人間ドラマ。メガホンをとるのは、新鋭トーマス・シュテューバー監督。普段われわれが見ることのないスーパーマーケットの舞台裏を映し出し、さまざまな人間模様をつづる意欲作が、ドイツ映画界の威信を賭けて勝負に出る。
『ピッグ(英題) / Pig』
製作国:イラン
監督:マニ・ハギギ
キャスト:ハサン・マジューニ、レイラ・ハタミ
【ストーリー】 しばらく映画を撮っていない映画監督のハッサン。お気に入りのスターは別の監督と仕事をし、妻は彼に愛想を尽かしている。娘は家を出て自身の家庭を持ち、高齢の母は日に日に記憶が乏しくなる。すべてのことに怒りを感じ、憤慨している彼だったが……。
【ここに注目】 脚本家やプロデューサー、俳優としても活躍するイランのマニ・ハギギが、監督・脚本を務めた痛快コメディー。仕事も家庭もすっかり行き詰まってしまったかつての名映画監督が、自身の名誉回復のために思いもよらない手段に訴える姿をユーモアたっぷりに描き出す。『別離』で本映画祭の銀熊賞(女優賞)に輝いた、レイラ・ハタミら演技派俳優たちが織りなす秀作の躍進に期待がふくらむ。
『マイ・ブラザーズ・ネーム・イズ・ロバート・アンド・ヒー・イズ・アン・イディオット(英題) / My Brother’s Name is Robert and He is an Idiot』
製作国:ドイツ、フランス
監督:フィリップ・グレーニング
キャスト:ヨーゼフ・マテス、ウルス・ユッカー
【ストーリー】 男女の双子であるロバートとエレナは思春期にさしかかり、お互いを異性として意識し始めていた。深い絆で結ばれた彼らは、相手をかけがえのない存在だと信じていたが、彼らはまだ子供で、あまりにも人生に対して無知だった……。
【ここに注目】 ドキュメンタリー映画『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』のフィリップ・グレーニングが監督を務め、男女の双子の禁断の愛を描く青春ドラマ。大人と子供の間で揺れ動く双子のロバートとエレナが過ごす、子供時代最後の48時間を描写する。第70回ベネチア国際映画祭で『警察官の妻』が審査員特別賞を受賞しているが、ベルリン国際映画祭では今回が初ノミネート。
『ザ・リアル・エステート(英題) / The Real Estate』
製作国:スウェーデン、イギリス
監督:モンス・モンソン、アクセル・ピーターセン
キャスト:レオノール・エクストランド、クリスター・レヴィン
【ストーリー】 自由気ままに生きてきた68歳の主人公が、スウェーデン・ストックホルムのダウンタウンにあるアパートを相続。これで暮らしは安泰と胸をなで下ろしていたところ、この物件をきっかけに災いが舞い込んでくる。
【ここに注目】 スウェーデン出身のモンス・モンソン&アクセル・ピーターセン監督によるサイコスリラー。スウェーデンの不動産バブルを背景に、タフなヒロインが知恵を絞って、冷酷にサバイブしていく姿を描く。モンソン監督は過去『ミスター・ガバナー(英題) / Mr. Governor』『ザ・ヤード(英題) / The Yard』が、ピーターセンは『アヴァロン』が、ベルリン国際映画祭フォーラム部門でそれぞれ上映されており、本映画祭で年々その存在感を増している2人だ。
『トランジット(原題) / Transit』
製作国:ドイツ、フランス
監督:クリスティアン・ペッツォルト
キャスト:フランツ・ロゴウスキ、パウラ・ベーア
【ストーリー】 自殺した作家の身分証を手に入れて、マルセイユへとやって来たドイツ人のゲオルク。彼はマリーという女性に出会うが、彼女は作家の妻だった。亡くなったとは知らずに夫を探し続けるマリーに、ゲオルクは想いを寄せるが……。
【ここに注目】 『東ベルリンから来た女』でベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)を受賞したクリスティアン・ペッツォルト監督が、同映画祭コンペティションに4度目の出品。20世紀ドイツを代表する女流作家アンナ・ゼーガースが第2次世界大戦中に発表した同名小説を、現代に設定を移して翻案した。ドイツ期待の若手実力派、『ヴィクトリア』などのフランツ・ロゴウスキと『婚約者の友人』などのパウラ・ベーアが共演する。
『ユー・ジュライ22(英題) / U - July 22』
製作国:ノルウェー
監督:エリック・ポッペ
キャスト:アンドレア・バーンツゼン、アレクサンドル・ホルマン
【ストーリー】 2011年7月22日、ノルウェー・ウトヤ島。妹や友人とサマーキャンプに参加していた18歳の少女カヤは、極右の青年が起こした銃乱射事件に遭遇してしまい……。
【ここに注目】 前作『ヒトラーに屈しなかった国王』が、アカデミー賞外国語映画賞のノルウェー代表に選ばれたエリック・ポッペ監督。2011年に極右の男性が起こした「ノルウェー連続テロ事件」を取り上げた本作では、生存者へのインタビューなどによって事件を徹底的に掘り下げ、はぐれた妹を探そうとするティーンエイジャーを中心に、パニックの中で生き残ろうと仲間と助け合う若者たちのドラマを描いている。