『この世界の片隅に』チームにアンジーも出席!アニメのアカデミー賞に潜入
現地時間2月3日、アニメーション界のアカデミー賞と呼ばれるアニー賞の第45回授賞式が、アメリカ・ロサンゼルスのウエストウッドにあるUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)内のロイスホールで行われた。国際アニメーション協会(ASIFA)主催のこの授賞式の様子を伝える。(取材・文:細谷佳史)
最も注目を浴びる映画部門は、大まかに分けてハリウッドのスタジオ作品を対象とした長編作品賞と、海外作品などそれ以外の作品を対象としたインディペンデント作品賞(アメリカでの上映館数が1,000館未満の作品、もしくはASIFAが公認している世界4大アニメーション映画祭での作品賞受賞作を対象)に分かれており、作品賞はピクサー/ディズニーの最新作で、メキシコ版のお盆「死者の日」に死者の国へと迷い込んだ男の子の冒険を描く『リメンバー・ミー』(3月16日公開)が大方の予想通り受賞。ピクサー作品は、2年前の『インサイド・ヘッド』以来9度目の受賞となった。
アメリカに壁ではなく橋を!
『リメンバー・ミー』はその他に、映画部門監督賞や脚本賞など11部門で受賞し、圧倒的な強さを見せた。監督のリー・アンクリッチは受賞スピーチの中で、「この映画を作っている時、僕らは、自分たちの存在が、はるか以前に生きていた人たちの偉業の上に成り立っていることを思い出すことの大切さを話し合っていた」と作品のテーマとなる先祖への敬意について語った。
そしてスピーチの終盤、スタッフに向けた感謝の言葉を述べる際には、移民問題で保守的な態度を示すアメリカ政府への皮肉を込めて、「壁の代わりに(世界中の人々の心をつなぐ)橋(作品)を作ることを手助けしてくれてありがとう!」とスピーチを締めくくり、会場は満場の拍手に包まれた。また、プロデューサーのダーラ・K・アンダーソンも、「私たちは、『リメンバー・ミー』を、メキシコの美しさと伝統を祝福するための映画として作りました。自分たちが大好きになった場所と文化をちゃんと伝えられる素晴らしいストーリーを語るために一生懸命働きました」と述べていた。『リメンバー・ミー』は3月頭の第90回アカデミー賞授賞式における長編アニメ賞獲得も確実視されている。
アニメ界でも女性の実力を認める動き
インディペンデント作品賞は、アンジェリーナ・ジョリーが製作を務めた『ザ・ブレッドウィナー(原題) / The Breadwinner』。タリバン支配化のアフガニスタンで、家族を救うために男の子に変装することを強いられた11歳の女の子が主人公。
女性監督(ノラ・トゥーミー)が単独で演出を手掛けた長編アニメの作品賞受賞は初の快挙。ハリウッド全体で女性のエンパワメントが話題になっている中、タイムリーな受賞となった。
日本から世界へ…『この世界の片隅に』チームの思い
日本からは、片渕須直監督の『この世界の片隅に』と、 神山健治監督の『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』もノミネートされていたが、残念ながら受賞を逃した。しかし、授賞式前のレッドカーペットに参加した片渕監督は、日本での小規模公開から世界的なアニー賞でのノミネートまで辿り着いたことを振り返って、「今ここにわれわれが立っている背後にどのぐらいの人たちがいたかということを思い出しています。どんなにいい映画を作っても、それがお客さんに届かなければ何の意味もありません。でもそれが日本でうまくいき、アメリカでも一定の結果が残せたことで、今、私たちがここにいるのだと思います」と語った。
また、丸山正雄プロデューサーも、「僕はもうアニメーションを50年ぐらいやっていて、最後の20年ぐらいはずっと彼(片渕監督)と仕事をしてきました。今回(作品が)認めてもらってとても嬉しいです」と話し、真木太郎プロデューサーは「資金調達とか多くの困難、多くの小さな奇跡の積み重ねで、ここまで来られたと感じています」と映画の本場ハリウッドでレッドカーペットを歩く喜びを語っていた。