稲垣×香取×草なぎ『クソ野郎と美しき世界』取材した
今週のクローズアップ
多くの人たちが公開を楽しみにしている稲垣吾郎、香取慎吾、草なぎ剛の映画『クソ野郎と美しき世界』。4本の短編からなるオムニバス映画だったり、それぞれの短編に個性的な監督が起用されていたりと気になることがたくさん。何より稲垣、香取、草なぎの3人が出演する映画というのが気になって仕方がありません。どんな作品なのか少しでも知りたくて撮影現場の取材会に行ってきたので、その情報を中心に『クソ野郎と美しき世界』について紹介します。(編集部・海江田宗)
■いったいどんな映画?
本作は4月6日から2週間限定で全国86館(野郎)館で公開されるアクション&ファンタジー&ラブ&ミュージカルのオールジャンルムービー。「公開期間が限られている」「タイトルに絡めた館数で公開」「オールジャンルムービー」とすでに興味深い要素が満載。そして、この記事の執筆時に映画の公式サイトで発表されていたあらすじが、想像をかきたてます。
「全力で走る女、フジコ。フジコを追う不気味なマスクをした極悪人『マッドドッグ』。彼らが向かう先には天才ピアニスト。歌を食べて生きる少女『歌喰い』と歌えなくなったアーティストの不思議な関係。失った息子の右腕を探す旅を続ける夫婦。2人が沖縄の海で出会ったのは……? 夜な夜なクソ野郎たちが集まるダンスフロアで繰り広げられるショー」(公式サイトより引用)
はい。あらすじを読んだだけでも「他の映画とは違う」という感じがビシバシ伝わってきます。いったいどんな映画なのかと謎が深まり、期待がふくらみます。
■稲垣吾郎『ピアニストを撃つな!』
4本ある短編の「EPISODE.01」とされているのが、稲垣の『ピアニストを撃つな!』です。監督&脚本を担当したのは『愛のむきだし』などの鬼才・園子温監督。稲垣は恋に落ちたピアニストのゴローとして出演しています。マッドドッグ役の浅野忠信、ジョー役の満島真之介、フジコ役の馬場ふみかが共演者として名を連ねています。
ド派手な衣装に身をつつんだ稲垣を含む出演陣と、メガホンを取った園監督が会見を行いました。役どころについて稲垣は「役柄がゴローなんで。(中略)自分であって自分ではないような。今までの僕のイメージであったりとか、やってきたものを超えた挑戦。自分であってまだ知らない自分という感じがします」とコメント。
浅野は「面白い役なんでメチャクチャやればいいかなと思ってます」、満島は「『ジョー』から想像する何かを思い浮かべていただければ、だいたいみなさん同じところにいきつくんじゃないかなと思います」、馬場は「フジコという名前から想像する方がみなさんにもいると思うんですが、奔放な可愛らしい女の子だなと私は思いました」とそれぞれの役について語っていました。
『ピアニストを撃つな!』の撮影現場については「世界観が新鮮。ピアノであったり、真っ赤なバラであったり、僕の好きなものに囲まれていてすごく癒やされます」と稲垣。「撮影した映像をちょっと見させていただきましたが、画もすごくきれいでした」と嬉しそうでした。
また、園監督は「今までの(稲垣の)イメージを尊重しつつ、ちょっときわどい感じの、シャワーシーンもあったりして。いろんな挑戦をしています」と気になる発言。それ以外では「ストーリーは現実的なんですが、内容はほぼ近未来としか思えない」と世界観について少しだけ明かしました。
■香取慎吾『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』
「EPISODE.02」は香取の『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』です。香取も稲垣と同じく本人役で出演しています。監督&脚本は演劇プロデュースユニット「城山羊の会」の山内ケンジ監督。山内監督は17年前に「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)内で放送された「Smap Short Films」でも香取とタッグを組んだ人物です。
記者会見は撮影に使用されたセットの中で行われたのですが、驚いたのは撮影現場に置かれた香取作の絵の量。撮影用に描いたのではなく、これまで香取がプライベートで描いていた大小さまざまな作品が、あらゆるところに置かれていました(中にはダンボールのような素材に描いた作品も)。香取が作品を保管している場所を自ら訪れて選んだという山内監督は「全部本当に面白いんです。大きさとかも、小さいものもあれば巨大なものまで、あらゆるサイズのものがあります」と紹介していました。
この作品においてもう一つ特筆すべきところは、タイトルに入っている「歌喰い」として香取と共演する中島セナです。今回が本格的な演技初挑戦だという中島を起用したのは山内監督。その理由を「雑誌でお見かけして、まず最初はビジュアル。お会いしての印象も『歌喰い』にぴったり。まるで、アテ書き(俳優にあわせて脚本を書くこと)をしたかのようです」と説明し、自信をのぞかせます。中島自身は歌喰い役について「変わってる役。難しいかなと思っていたのですが、あんまりしゃべらない役です。自分に合っていると思います」と印象を語っていました。
「(この映画の)世界の中にいるのが楽しい」という香取は「自分ですし、自分の絵もあるし、ほぼ僕です」と役柄についてコメント。また「『歌喰い』というのが昔からいた妖怪のように感じられるのが面白いと思います。今回は歌を奪われて歌えなくなるという役。香取慎吾役なのですが、僕に歌や音楽というのはついてまわるものなのかなと思いました」と話しました。
山内監督は脚本について「歌を食べられるというファンタジーなんですが、単なるファンタジーではなくリアルな部分をどう混ぜるかを一番考えて脚本をつくりました」と脚本を書く上で気をつけた点を明かしていました。
■草なぎ剛『光へ、航る』
「EPISODE.03」は草なぎの『光へ、航る』です。爆笑問題の太田光が監督&脚本を担当することも大きな話題になりました。息子を失った主人公のオサムにふんする草なぎとともに、オサムの妻・裕子として女優の尾野真千子が"太田ワールド"に挑みます。
埼玉県にある公園で裕子と息子・航のキャッチボールのシーン、そして物語終盤の重要なシーンの撮影が行われた後、草なぎ、尾野、太田監督の3人が記者会見にのぞみました。終始、太田節がさく裂する爆笑会見。太田監督は「ブラックユーモアみたいな部分を織り交ぜながら、ドタバタだけど哀愁のあるものにできればいいな」と脚本執筆時の思いを振り返っていました。
そして太田監督は「実は『手』が重要な……。やっぱり手って人間にとって重要じゃないですか。それを感じてほしいです。手の温もりを感じてほしい映画です」と続けていました。
脚本について草なぎは「起承転結がしっかりしていると思いました」とし、「(全体のタイトルの)『クソ野郎と美しき世界』というのに対しても、僕の役どころは『クソ野郎』ですし、『美しき世界』という部分には夫婦愛や子どもへの家族愛などが(『光へ、航る』だけで)出ている。太田さんってすごいなと思いました」と絶賛。稲垣、香取、草なぎはそれぞれの短編の脚本を共有しているそうで、「2人(稲垣、香取)も『太田さんってすごいな』と褒めてましたし」と思い返していました。
また「太田さん特有のブラックジョークが含まれている。何回か観ていただくと皮肉めいたこととかもちりばめてあるので。演じがいがあって最高ですね」と役者・草なぎ剛の顔になっていました。
■いまだ全貌がつかめない「EPISODE.04」
「EPISODE.04」の『新しい詩』(読み:あたらしいうた)は「EPISODE.01」から「EPISODE.03」までのすべてがつながったミュージカルになります。ただそれ以外に発表されているのは “クソ野郎★ALL STARS”が出演するということと、世界三大広告賞(カンヌ・Clio・One Show)グランプリ受賞の映像監督・児玉裕一が脚本と監督を担当しているということだけ。「EPISODE.01」から「EPISODE.03」は取材会が行われましたが、「EPISODE.4」の取材会は実施されず、その全貌は謎につつまれています。
と書きつつ、実はそれ以外にも出演者や監督がポロッと『新しい詩』について話してしまう場面もあったのですが、そこに関してはまだ明かしたらダメなんだそうです。でもそれは単純に隠しているのではなくて、作品を最大限楽しんでもらうために未発表なだけ。映画を観た人にとって嬉しいサプライズが、この映画のラストを飾る短編『新しい詩』で用意されているのは間違いないです。
稲垣、香取、草なぎの3人はもちろん、各話の監督も共演者も「新しいことをやってやるぞ!」というやる気に満ちあふれていることが取材会に参加してわかりました。『クソ野郎と美しき世界』が映画業界に新たな風を吹き込むような作品になることを期待せずにはいられません。