ウーマンラッシュアワー、偏見と闘う人々に共感
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、エイズへの偏見と闘う人々の姿と、本当の愛にウーマンラッシュアワーが圧倒された! 1990年代が舞台の愛の物語『BPM ビート・パー・ミニット』をななめ見しちゃいます。(取材・文:シネマトゥデイ編集部・森田真帆)
映画『BPM ビート・パー・ミニット』
1990年代初めのパリ、エイズにまつわる差別や不当な扱いに抗議する活動家たちの団体「Act Up-Paris」の活動を題材にしたヒューマンドラマ。エイズの症状に苦しみながら愛し合うショーンと仲間のナタンの姿を中心に、繊細な愛のドラマが描かれる。第70回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。
たくさんの知らないことを教えてくれる映画!
村本:『デトロイト』を観たときも『アバウト・レイ 16歳の決断』を観たときも同じことを思ったんやけど、ニュースや新聞の一面では取り扱わないような問題を教えてくれるのが映画なんだなって。この作品を観てあらためて感じたわ。マイノリティーの人たちから上がっている、なかなか世の中に届きにくい声も映画が聞くことができる。エイズのことも、LGBTのことも、いまだに知らないことが多かったんやなと思ったなぁ。
中川:僕が今まで持っとった知識では、なんも知らんのと同じなんやなって思ったわ。映画を観てあらためて知ったことが山ほどあって、もしかしたら今の日本人の知識って、この映画で描かれた時代くらいの知識なんかもなって。
村本:風邪とかインフルエンザと違って、エイズにまつわる話題ってやっぱり身近な問題じゃないから、知ろうともしていなかった気がするわ。
中川:そうやな。当事者の気持ちも大事やけど、周囲の人間がどれだけ知っているかっていうのも大事なんやなって思ったわ。エイズ検査やって、今まで受けたことなかったけど、受けてみようかなってなったし。
村本:俺がエイズであるわけないっていうのは、完全な思い込み。大事やなって思うわ。
戦う若者たちから勇気をもらった!
中川:「Act Up-Paris」の人たちが、めっちゃ議論しているシーンはすごい迫力やったな。
村本:HIV陽性者の中でも、声を上げないでくれっていう人がいたり、いろんな摩擦が描かれていたのがリアルやった。声を上げている若者たちは、そいつらの声も受け入れつつ、声を上げていれば必ず何かが変わるって信じてるから、そのまっすぐさはすごかったな。
中川:内部でも色々あるのは、確かに一番ありうるもんな。普通だと、ああいう部分ってあんまり描かれなかったりするけど、この映画はちゃんと描いていて面白かった。議論してる部屋の外で文句を言ってる人に、「文句いうなら中で、発言として言いなさい」て伝えるとか。なるほどなって思ったわ。
村本:あと、どんなに白熱してても、絶対ユーモアを忘れないのはすごいわ。ちょっとしたジョークを入れて、みんなをフフッと笑わすのって、めっちゃスマート! 彼らが街中でやってたデモもアートみたいで、ある種のポップカルチャーのように感じた。プラカードを掲げるだけじゃなくて、高校でコンドームを撒いたり、(製薬会社に)偽の血をかけたり。やってることは過激だけどユーモラスで、かっこいい伝え方しているなって思った。
中川:ゲイパレードのシーンも、めっちゃ派手で楽しそうやった! あの派手さは、きっと人の興味も引くし、すごいいいと思う。これまでそういうのがあることすら知らんかったけど、日本でもやっているなら行ってみたくなったわ。
男同士の激しい愛にウーマン驚き
村本:あの2人(主人公のショーンとナタン)の愛の深さってほんまにすごいよな! 例えば、HIVが発症した後で、口の中が病気になっちゃったから「キスできないって」って言っている相手にするっていうのは、めちゃめちゃ愛が深くないと絶対できない! 中川やったら、嫁が同じシチュエーションでも絶対キスせんもん。
中川:確かにできないわ(笑)。なんかあれ、男と女のカップルやったら、全然違う気がする。
村本:だってさ、彼氏が入院しているとき会いに来たときも、すごいことしてくれるやん!? 彼女やったら、最高の彼女と思うわ。お互いのことめっちゃ好きやし、ほんまにピュア。
中川:ラブシーンが、ほんまにすごかった。めっちゃ長いし、あそこまでがっつり描けている映画ってなかなかなかったと思う。ほんまに愛し合っているってこういうことなんやなっていうのが伝わってくるほどの、愛撫の嵐やったわ!
村本:なんやねん! まあ俺の場合は、ああいう愛情をかけた感じにならんからな、びっくりやったわ。俺は愛撫の通り雨(笑)。
中川:最低やな!
みんなで語り合おう!
中川:映画の中で、セックスの時はコンドームをちゃんとつけてするっていうシーンがあるやん? あれなんか、めっちゃ考えさせられたわ。特に男はつい、いい加減になるもん。
村本:僕はこれ炎上覚悟で言いますけど、つけたらできなくなっちゃうっていう、映画の中の彼の気持ちはよくわかる! 例えコンドームが家にあったとしても、「ないない」って言い続けます。そっから押し問答になって、「つけなきゃ絶対に無理!」って言われてようやく、コンドームを出すタイプ。
中川:最低やん! でも昔やったら、「コンドームつけて」って言われて、「いや」で終わってた時代もあったやろ。そんでもしも「わたし、実はエイズやねん」って言われたときにどういう反応をとるかって話。僕はこの映画を観て、あらためてコンドームをつけることの重要性を学べたと思ってて。昔だったら、「え!」って逃げてしまったかもしれないけど、今なら、冷静にコンドームつけてできるわ。
村本:それ、例えばどういうシチュエーション?
中川:例えば、クラブでお持ち帰りした娘に、「エイズやねん」って言われた時に、帰るか、ゴムつけてするかっていう……。
村本:お前のその考え方が俺にはぜんぜんわからんわ! なんで「やるか、やらんのか!」っていう話になんねん! でもさ、こういうコンドームつけるかつけないかなんて話も、なかなか友達とする機会ってないから、この映画はいいよな。学校とかで鑑賞会させた後に、いろんな人とディスカッションすべき。映画の中で、討論中に拍手の代わりにみんなが指鳴らすの、めっちゃかっこいいからそれやってほしい!
映画『BPM ビート・パー・ミニット』は全国公開中
(C) Celine Nieszawer
※記事内容には個人の意見が含まれています
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。