祝・パルムドール!6月の5つ星映画5作品はこれだ!
今月の5つ星
21年ぶりとなる日本人のパルムドール受賞を成し遂げた是枝監督作品がついにお目見え! 人気マーベルヒーローシリーズお待ちかねの第2弾に、豪華すぎるキャストそろい踏みのクドカン×綾野剛主演作、今年一番泣ける! と話題のジュリア・ロバーツ主演作に、お騒がせウディ・アレン監督の最新作をピックアップ。これが6月の5つ星映画5作品だ!
“デップー旋風”再び!続編は家族をテーマにした涙ありの感動作
『デッドプール2』
前作で「R指定ヒーロー映画」という新たな境地を切り開いた“デップー”ことデッドプール。続編は予想をいい意味で裏切る展開の連続だ。未来からやってきたケーブルという機械男の登場で物語は一気にシリアスになり、お気楽なデップーでさえお手上げ状態に……。しかし、そんな状況下でもシニカルな笑いを届けるデップーは流石。本続編では、『デッドプール』らしからぬ「家族」をテーマにしているのが面白い。主人公ウェイドとヴァネッサの家族愛、ケーブルから狙われた子供を守るデップーの親心のような愛情、デップーを陰で支える仲間との絆など、家族というテーマを扱いながらもデッドプールの世界観を壊さない。もちろん、定番のマーベル作品をネタにするジョークは健在。そしてあの超メジャーDCコミックスまでもネタにするほどエスカレート! 『ジョン・ウィック』を手掛けたデヴィッド・リーチ監督が緻密(ちみつ)に練り上げたバイオレンスアクションも爽快だ。ジョシュ・ブローリン、ザジー・ビーツ、忽那汐里ら新キャストも見事に作品の世界観に溶け込んでいる。これでもかと仕組まれた笑いと驚きの数々に、酔いしれる。(編集部:倉本拓弥)
映画『デッドプール2』は6月1日より公開中
パルムドール獲得!是枝裕和監督が描く家族の形が心に迫る
『万引き家族』
さまざまな家族の形を描いてきた是枝裕和監督が、10年間考え続けてきたことを全て込めたと語る渾身作。犯罪で繋がった家族の姿を通して「本当の絆とは何か」を観客に問いかける。カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールに輝いたことを祝福しながら多くの人に映画館に足を運んでほしい作品だが、軽い気持ちで観に行った人を打ちのめしてしまうような力も持っている。『そして父になる』でも父親役だったリリー・フランキーが、今回は犯罪しか教えることのできない父を好演。是枝組初参加となった妻役の安藤サクラと見事な掛け合いを披露し、不思議な距離感を持った夫婦をつなぐ愛も表現している。是枝作品の代名詞ともいえる子供たちの自然な演技は今作でも健在。そして「今回の樹木希林はまったく違う」と頭に入れて劇場に行かないと、始まってからの数分は「もしかしてこの女優が樹木希林?」と混乱してしまうくらい、スクリーンに映る樹木は別人だ。新たな魅力を発揮した松岡茉優を含むキャスト陣の演技とストーリー展開に圧倒されているうちに、本当の絆が何なのかわからなくなる。わからなくなって考える。(編集部・海江田宗)
映画『万引き家族』は6月8日より公開
天才子役が演じる“普通じゃない”少年に涙!
映画『ルーム』で天才子役の名を欲しいままにしたジェイコブ・トレンブレイが、外見からわかる先天性の障害がある少年・オギーにふんした本作。10歳になったのを機に学校へ通い始めたオギーが成長していくさまを描く。本来の愛くるしい顔がわからないほど特殊メイクを施したジェイコブが、ちょっとした表情や動作、声色で喜怒哀楽を表現。見た目だけではない愛おしさがこみ上げてくるオギーを見事に演じており、涙なしでは観られない。しかしながら、オギーを取り巻く家族や友達にも焦点を当てていくことで、単なるお涙頂戴モノには留まっておらず、まるで名作偶像劇のようだ。オギーの姉・ヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)は、オギー中心の生活で関心をもってくれない両親や、よそよそしくなった親友、唯一の理解者である祖母の死で孤独を感じている等身大のティーンエイジャー。ヴィアたち“普通”の人の存在は、“普通じゃない”オギーだけが悲劇の主人公とは限らないと気づかせ、誰もが悩み苦しむ時期があること、家族や友達の存在で乗り越えていけると教えてくれる。惜しみない愛でオギーを包み込む両親役のオーウェン・ウィルソンとジュリア・ロバーツらが作品により厚みを持たせている。(編集部・梅山富美子)
映画『ワンダー 君は太陽』は6月15日より公開
往年のハリウッド・メロドラマを彷彿とさせる秀作
『女と男の観覧車』
身辺が騒がしいウディ・アレンが最新作の舞台に選んだのは、出世作の『アニー・ホール』(1977)でも印象的に登場した、監督にとって極めて馴染み深いブルックリンのコニーアイランド。時代は1950年代、斜陽となっていた遊園地でウェイトレスとして働くジニー(ケイト・ウィンスレット)のもとに、音信不通だった夫の娘(ジュノー・テンプル)が訪れる。ビーチで働く学生のミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と関係を持っていたジニーは、彼と娘との関係に嫉妬を抱き始める。現実の生活に満足できず理想を求める女性をケイトが演じきり、愛と裏切りを主題として物語が展開してゆく。50年代の衣装やコニーアイランドの風景を忠実に再現したデコールや、2人の対照的な女性の性格を表現した色調、回転木馬や観覧車などの暗喩的なモチーフなどが効果的に用いられ、作品に格調高い雰囲気をもたらしている。往年のハリウッドのメロドラマを彷彿とさせる本作の出来栄えに、『ブルージャスミン』(2013)で見せたアレンの女性を描く手腕を再び確認することができる。近年、多くの監督が50年代アメリカを舞台にした作品を撮っているが、その中でも出色の1作だと断言したい。(編集部・大内啓輔)
映画『女と男の観覧車』は6月23日より公開
そこはかとなく色香漂う綾野剛の美しさを存分に堪能
かつてパンクロックバンド「INU」の歌手として活躍していた原作者の町田康、同じくパンクバンド・グループ魂でギターを担当する脚本家の宮藤官九郎、1982年にパンク色の強い映画『爆裂都市 BURST CITY』を発表した石井岳龍監督。その『爆裂都市』に加え、『水の中の八月』(1995)でも町田を俳優として起用しており、何かと縁のある面々が集結しただけに、作風もまさに“パンク”。超人的刺客にして、不真面目な性格の浪人・掛十之進(綾野剛)が、ある失態を機に藩主も巻き込んだ騒動を引き起こしていくさまが、コメディー、アクション、SF(!)など変幻自在のテイストで活写される。東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、國村隼らが演じるキョーレツなキャラクターたちを誰一人埋没させることなく束ねた石井監督の手腕はさすが。信用ならぬ無責任野郎にもかかわらず、やたら“はだける”シーンが多いせいか、色香漂う綾野の粋な美しさが最大の魅力だが、彼を取り巻くキャストの中でダントツ光っているのが豊川悦司。ぶっとんだ世界観についていけるのも、長ゼリフも自在に操ってみせる名優の力あってこそ、と思わされる。(編集部・石井百合子)
映画『パンク侍、斬られて候』は6月30日より公開