シネマトゥデイが選ぶ2018年上半期 映画ベスト10
今週のクローズアップ
7月に入ると気分は一気に夏モード! ついつい浮かれがち……とはいえ、よく考えれば、2018年ももう折返しということ。この半年、思い返してみると、一大ブームを巻き起こした映画に、日本人21年ぶりの快挙を果たした作品、現在進行形で記録を更新している大ヒット作などなど、すでに多様な映画が盛りだくさん。今回は2018年1月~6月に日本で公開されたすべての映画からシネマトゥデイが選ぶ、2018年上半期映画ベスト10をお届けします。(編集部・浅野麗)
第1位:『万引き家族』
『誰も知らない』『そして父になる』などの是枝裕和監督が、カンヌ国際映画祭で日本人として21年ぶりとなる最高賞パルムドールを獲得したヒューマンドラマ。現代社会が抱える問題にスポットを当て、自身の集大成的作品にまとめ上げた手腕は文句なしに見事だが、最大の魅力はやはり是枝マジックで引き出された役者たちの演技。中でも、心の奥底に潜む深い母性を体現してみせた安藤サクラの存在感は圧倒的。また、是枝作品の真骨頂ともいえる子役たちも期待を裏切らない素晴らしさ。
第2位:『グレイテスト・ショーマン』
ヒュー・ジャックマンが実在した伝説のエンターテイナーに扮し、大ヒットしたミュージカル映画。その魅力は何といっても楽曲の素晴らしさだろう。昨年人気を博した『ラ・ラ・ランド』の作曲家たちが手掛けたリフレインし続けるキャッチーな楽曲と、共感を誘うメッセージに多くの人が魅了され、普段、外国映画を観ない層や劇場に足を運ばない層にも受け入れられた功績も大きい。そして、ヒュー様の完璧すぎるエンターテイナーぶりも忘れてはならない。
第3位:『孤狼の血』
昨年のシネマトゥデイベスト20入りを果たした『彼女がその名を知らない鳥たち』の白石和彌監督が、暴力団対策法施行以前の広島県を舞台に、抗争中の暴力団と刑事たちのバトルを描いたやくざ映画。冒頭から満載の過激な描写が作品のイメージとして先行するが、ただのそれではなく、ユーモアあふれるエンターテインメント作品として、完成度の高さが最大の評価点だろう。昨今の生ぬるい邦画に一石を投じ、成績的にもきちんと結果を残したことは、当初のターゲットである男性層だけでなく、女性にも受け入れられた証明でもある。
第4位:『スリー・ビルボード』
3月に発表された第90回アカデミー賞の大本命として、『シェイプ・オブ・ウォーター』とのデッドヒートを繰り広げたクライムサスペンス。観る者の予想を見事にかわしていく軽妙なストーリー展開と、不思議と爽快なエンディングに魅了された映画ファンも多かったはず。だが、やはり語らずにいられないのは、フランシス・マクドーマンド、サム・ロックウェル、そしてウディ・ハレルソンの演技合戦。これ以上ないハマリ役となった個性派ぞろいの彼らをまとめ上げたマーティン・マクドナー監督の手腕も評価したい。
第5位:『ワンダー 君は太陽』
先天性の障害で外見に特徴のある少年オギーが、10歳になったのを機に学校に通い始めたことでぶち当たる困難と、それを乗り越えていくさまを描いた感動作。児童小説らしい純粋さと、子供ならではの残酷さを絶妙なバランスで描き、物語の軸はオギーとしながらも、姉、学校の友達、姉の友達と周囲の人間がそれぞれに抱える悩みにもフォーカスすることで多面的な共感を得る。優れた原作の世界観をうまく踏襲したスティーヴン・チョボスキー監督の手腕も見事!
第6位:『ブラックパンサー』
マーベル初の黒人ヒーロー映画であり、世界の歴代興収トップ10入り(Box Office Mojo 調べ)するほどの驚異的な大ヒットで、2018年を代表する映画となったアクション大作。次々に飛び出すガジェットのカッコよさ、画期的なカーチェイスなどのアクションシーン、細部までこだわったスタイリッシュなビジュアル、そして音楽と、マーベル映画ならではの高揚感に満ちあふれている。一方で、今、映画で何を伝えられるのかという製作陣の気概も感じさせる、ヒーロー映画史に名を刻むであろう一作。
第7位:『リメンバー・ミー』
ディズニー/ピクサーがメキシコを舞台に1年に1度だけ他界した家族と再会できるとされる祝祭をテーマにした長編アニメ。メインキャラクターがガイコツという驚きはあったものの、生と死、家族といった普遍的なテーマを主題とし、カラフルでエキゾチックな世界観との融合で、子供から大人まで幅広い世代に安定のユーモアと感動をもたらした秀作。また、ディズニーアニメといえばの主題歌も、アカデミー賞歌曲賞を獲得するなど高評価を得た。
第8位:『シェイプ・オブ・ウォーター』
『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』などのギレルモ・デル・トロ監督が、声を発することのできないヒロインと半魚人のような生きものの、種族を超越した愛を描いたラブファンタジー。こだわりぬかれた半魚人のビジュアルをはじめとするデル・トロ監督らしい徹底した世界観、あまりにもピュアな2人の愛、そして監督が込めたマイノリティーに対するメッセージ、すべてのアンサンブルがあってこそ、第90回アカデミー賞で最多13部門のノミネート&作品賞を含む4部門を受賞という快挙を成し遂げたといえるだろう。
第9位:『犬猿』
『麦子さんと』『ヒメアノ~ル』などの吉田恵輔監督が、4年ぶりにオリジナル脚本で手掛けた、兄弟&姉妹げんかを描いた喜劇。性格や見た目が正反対な兄弟と姉妹が、歳を重ねるごとに積もらせていった不満やコンプレックスを爆発。大げんかの過程でち密に積み上げられていくユーモアあふれる「あるあるネタ」の数々が素晴らしく、物語に引き込まれていく。吉田監督はもちろん、4人の俳優のコメディーセンスもポイント高し。
第10位:『名探偵コナン ゼロの執行人(しっこうにん)』
従来の熱狂的なファン以外も動かす一大現象を巻き起こし、現在進行形でメガヒットし続けている「名探偵コナン」劇場版シリーズ第22作。複雑なストーリーに、手に汗握る壮絶カーアクション、これまでのシリーズにはなかったキャラクターたちの表情の豊かさや、街や建物といった背景のクオリティーの高さなど、対象を完全に大人にしぼり切ったと思われる、劇場版ならではの内容で大成功を収め、上半期の邦画を代表する一作に。
このほか、森崎ウィンの活躍や日本を代表するキャラクターたちが登場したことでも盛り上がりを見せたスティーヴン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』、オリジナル版から約22年の時を経て、キャストも設定も一新したリメイク作品として大成功を収めた『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、韓国の名優ソン・ガンホ主演で実話を映画化した韓国映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』などが、次点作品に。また、今回は対象期間に公開されていないということで、残念ながらエントリーから外れたインド映画『バーフバリ 王の凱旋』の熱狂も上半期の忘れてはならない映画トピックといえるでしょう。7月以降も大作や人気シリーズの続編、話題の豪華キャスト共演作などが続々公開される2018年。下半期にも期待が高まります!