【100%ネタバレ】死にまくり俳優ショーン・ビーンの魅力に迫る!
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今回は生き残れるのか……? ドラマ・映画に登場する度に、その生死が気になってしょうがない存在が、イギリス出身の名優ショーン・ビーンです。悪役を演じることが多く、いつしか“よく死ぬ俳優”として知られるようになった彼のベストデスシーンと共に、その魅力に迫ってみました!(この記事はネタバレを含みます)(編集部・入倉功一)
溶接工から俳優志望へ
鋭い眼光と高い鼻の北欧系の顔立ちが特徴的なショーンは、1959年4月17日生まれの59歳。俳優を志す前は、父親が営む工場で働き、カレッジ時代は溶接の勉強をしていたことも。しかしそこで演劇の魅力に目覚め、演技に打ち込んだ後、ロンドンの名門・王立演劇学校(RADA)に奨学生として入学します
1983年に「ロミオとジュリエット」でプロとして初舞台を踏み、その後も数々の舞台を経験。ショーンが演じる魅力的な悪役たちは、努力を積み重ねた実力あってのものなのです。1984年の『ウインターフライト』(日本未公開)で映画デビューを果たし、イギリスのテレビシリーズなどで活躍していたところ、ハリソン・フォード主演のハリウッド大作『パトリオット・ゲーム』(1992)に出演し、知名度を上げます。
コンボ技で死亡
この映画でショーンは、ハリソン演じるCIA分析官ジャック・ライアンに弟を殺害されたIRA(アイルランド共和国軍)のテロリストを熱演。復讐の鬼となりジャックを狙う一方で、弟を失ったショックで心のバランスを崩した、複雑な感情を巧みに表現して見せました。クライマックスでは、ハリソンとショーンによる、手に汗握る肉弾戦が展開。最後は錨(いかり)で胸を貫かれ、岸に衝突した船ごと爆発する死にざまも見事の一言です。ちなみにこの時、撮影中にハリソンとぶつかり、左眉に傷を負うことに。その傷痕は今も残っています。
その後も、長寿シリーズとなるテレビ映画「炎の英雄 シャープ」の主人公を演じるなど順風満帆。そして、1995年に公開されたピアース・ブロスナン版ボンドの1作目『007/ゴールデンアイ』で、ボンドと共にソ連の工場に潜入する“006”アレック役を務めます。
冒頭でさっそく死んだかと思わせて、実は裏切り者だった! という重要な役どころを演じたショーン。クライマックスでは、巨大パラボラアンテナ上でボンドと対決し、地上何百メートルもの位置から落とされ瀕死状態に。さらに、爆発したアンテナの下敷きになるという、泣きっ面にハチ状態で亡くなりました。
いずれも超人気キャラクターの敵役で、とどめを刺されたと思ったら爆発で止めというコンボ技で死亡。ショーンがよく死ぬ役に起用されるのは、この二大ヒット作におけるインパクト十分な死にざまの影響もあるのではないでしょうか。
死亡数ナンバーワンじゃない?
そのキャリアを通じて、溺死・刺殺・張り付け、首つり、牛裂きなど、あらゆるパターンの死を演じてきたショーン。日本劇場未公開の『ザ・フィールド』(1990)で見せた、突進してきた牛の群れと一緒に崖から落ちて死ぬシーンは、あまりのシュールさゆえに、後にインターネット上でも話題になりました。
しかし、2014年にNerdistが発表した集計によると、ショーンの死亡回数はほかの映画スターと比べて上位から4番目。死亡回数も25回に届かないほどで、1位のジョン・ハートの43回には及びません。それでも映画ファンが彼の死をしっかりと記憶しているのは、今度はどうやって死ぬ? と気になってしょうがない死亡パターンの豊富さと、死にゆくキャラクターの悲しみや怒りが死の瞬間も伝わってくる、彼の演技あってこそでしょう。
お気に入りの死亡シーン
ふとした笑顔が「実はいい人なんじゃ……」と思わせる人懐っこい表情もポイント。そんなショーンの持ち味が最も生かされた役が、大ヒットファンタジー『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで演じたボロミアです。人間の国ゴンドールの大将ボロミアは、冥王サウロンの指輪破壊の任を帯びたフロドたちホビット族と旅を共にしますが、指輪の魔力に魅せられ、フロドから指輪を奪おうとします。
これを悔やんだ彼は、オークに囲まれたホビットたちをかばうように、無数の矢に射られ死亡。誠実で高潔な精神を持ち、その自信の大きさゆえに少し嫌味な一面もあるボロミア。誰よりも人間くさかった彼の勇敢な死は、シリーズ屈指の名シーンとしても知られ、ショーン自身も、「これまで演じたなかで一番気に入っている死亡シーンだ」とさまざまな取材で語っています。
死んでも死ななくても観ていたい!
もちろん、死なない役でもしっかりと印象を残しているショーン。元スパイたちの命がけの戦いを描く『RONIN』(1998)では、武器の専門家スペンス役で出演。口だけ達者な素人丸出しのキャラで、「これはすぐ死ぬな……」と思いきや、早々にチームを解雇され、スゴスゴと退散してしまいます。短い出演時間でありながら、銃撃戦の後で強がりを言いながら吐くなど、そのあまりのヘタレぶりは、ロバート・デ・ニーロやジャン・レノといったスターたちに匹敵する印象を残しました。
また、大ヒットゲームを実写化した『サイレントヒル』(2006)では、異世界に迷い込んだ妻と娘を捜す父親役で出演。家族との再会がかなわず、誰もいない自宅で肩を落とすラストシーンは、ホラー映画でありながら、物悲しい余韻を残しています。ワイシャツにシックなコートを身に着けた、ショーンのビジネスマンスタイルにも注目です。
一方で、近年では、大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」で、またも忘れられない死亡シーンを見せてくれました。
架空の大陸を舞台に、七つの国の覇権争いを描く本作でショーンは、七王国を統べる王の側近エダード・スターク役で出演。彼を当主とするスターク家は物語の中心であり、彼もシリーズを牽引していくのかと思われたところ、陰謀うずまく政権争いの末に、新王ジョフリーの命で斬首されてしまいます。ショーンは死ぬとわかっていても、主人公として活躍したエダードの死には、驚愕したファンも多かったはず。気高く尊敬を集めた彼の生首がさらされるさまは、どこか物悲しいものがありました。
主人公なのに死ぬという掟破りの役どころもこなし、どうしても生死が気になってしまうショーンですが、それも一度登場すると目が離せない彼の魅力があってこそ。死んでも死ななくても、チョイ役でもいいので、末永く活躍し続けてほしいですね。