『青夏 きみに恋した30日』葵わかな&佐野勇斗 単独インタビュー
自分と違う役に成り切る難しさ
取材・文:坂田正樹 写真:杉映貴子
自然に囲まれた祖母の家で夏休みを過ごすことになった都会育ちの女子高生・理緒(葵わかな)。運命の恋を待ちわびる彼女は、ある日、クールだけれど心根は優しい地元の高校生・吟蔵(佐野勇斗)と出会い、一瞬にして心を奪われる。理緒のまっすぐな思いに、吟蔵も次第に惹かれていくのだが……。南波あつこの人気コミックを実写映画化した『青夏 きみに恋した30日』で、4年ぶりの再共演を果たした葵&佐野が、お互いの成長を感じながら、役者への熱い思いを真摯に語った。
4年ぶりに共演した2人!お互いの変化は?
Q:『くちびるに歌を』(2015)以来、4年ぶりの共演ですが、お互いの印象は変わりましたか?
葵わかな(以下、葵):佐野さんの明るい人柄は全く変わっていませんでしたね(笑)。お芝居に関しては、ここまでガッツリ共演するのは今回が初めてなので、佐野さんの演じ方が初めてわかった感じがして、とても新鮮でした。
佐野勇斗(以下、佐野):僕は正直、「大人になったなぁ」って感じました。もう20歳ということで女性らしくなりましたね。今回も共演が楽しみでした。
Q:ご自身の中では、この4年で成長を感じる部分はありましたか?
葵:わたしは、とても密度の濃い4年間を過ごしてきたので、少なくとも昔の自分ではないかなと思ってます。それは「成長」というよりも、お芝居に対する自分の意識だとか、お芝居が自分にとってどういう存在なのかとか、いろいろな経験を積むことで日々「更新」されている、という感じです。ある意味、女優を「仕事」だと思えるようになったのかもしれません。もちろん、好きだからお芝居をやっていることに変わりはないんですが、プロ意識を持つことの大切さを学んだように思います。
佐野:僕は、いい意味でも、悪い意味でも、ほとんど変わってないと思いますね。それこそ、『くちびるに歌を』が初めてのお芝居だったのですが、当時は右も左も全くわからなかったので、さすがに少しは演技に対して考えられるようにはなりましたけど(笑)。でもやっぱり、僕も今年20歳になったので、葵さんみたいに手応えを感じるくらい成長できるようにがんばらないといけないですね。
Q:たしかカレンダー発売のイベントで、20歳を機に「かわいい」を卒業したいとおっしゃっていました。
佐野:僕自身は、あまり「かわいいこと」をしている意識はないのですが、顔がちょっと童顔というか、年齢の割には「すごく幼い顔をしてるね」って言われることが多いので、大人っぽい顔になりたいです。演技や人間性を磨きつつ、まずは見た目から(笑)。
真逆のキャラクターを演じることの難しさ
Q:今回は、都会のイマドキ女子高生と、田舎のイケメン高校生のひと夏の恋を描いていますが、演じていかがでしたか?
佐野:僕が演じる吟蔵って、すごくスラっとしていてカッコいい男子なんですよ。しかも、外見だけでなく、中身もさらりと男らしいことを言ったり、行動で示したり、同性の僕が見てもほれぼれするぐらい。理緒に「好き」と告白されても、お互いのことを思いやって「つきあえない」と言い放つ男らしさは、僕にはないなぁと思って(笑)。だからこそ、観ていただく方に少しでも「カッコいい」と思ってもらえるように、いつも以上にお芝居に気合いが入りました。
Q:この役のために、かなり体を絞り込んだそうですね。
佐野:そうなんです。原作の絵がかなりシャープだったので(笑)。さらに、上半身を見せるシーンもあったので、筋トレもしましたし、食事制限もして、かなり体を追い込みました。
Q:葵さんはいかがですか、理緒役は難しかったですか?
葵:理緒はわたしと逆で、思いついたら「即行動!」みたいなところがあるので、役としては難しかったですね。台本を読んでいても、理緒なりの脈絡があると思うんですが、「どういう気持ちがつながって、こんなことを言っちゃうんだろう」みたいなセリフが結構あって。「ついつい口をついて出てしまうってどういう感じなんだろう」とか想像したり、あとは16歳という年齢も意識しました。
芸能活動を始めた頃のこと
Q:理緒と吟蔵は、ある局面で選択を迫られますが、お二人は、お芝居の道に進もうと決断するとき葛藤はなかったですか?
葵:わたしの場合、このお仕事を始めたときから、両親は「自分の思う通りにやってみたら?」というスタンスだったのでやりやすかったのですが、私生活との両立には葛藤がありました。例えば、学校などの大切な行事にスケジュールが合わなくて出られなかったり、お友達と遊ぶ約束をした日にお仕事が入ったりすると泣いていました。「もう、辞めてやる!」って(笑)。まだ子供だったので仕方ないとは思いますが、今は早まった行動に出なくてよかったなと思っています。
佐野:僕はそういう点では、恵まれていたかもしれません。芸能活動を始めたのが高校1年生くらいで、しかも、本格的に始めたのが大学に入ってからなので、一般の方と同じように学生時代をそれなりに満喫しました。とくに周りから反対されることもなく、家族も友達もみんな応援してくれているので、葛藤はもちろんなかったし、「辞めたい」と思ったことが正直1度もないんです。でも、テレビを観ていると、憧れの俳優さんたちが、いろいろな葛藤を乗り越えて、今の地位を築き上げたというお話をされているので、「皆さん、裏ですごく努力されているんだな」と思うことが多く、現場でお会いしても、そのオーラを肌で感じています。
今をがんばることで精いっぱい
Q:これからの自分なりのビジョンがあったら教えてください。
葵:うまくいくことばかりじゃないし、失敗もたくさんしているので、「まだまだだな」と思うことばかりですが、この仕事は自分が好きで始めたことなので、ずっと続けたいなって思っています。いつか本当に辞める日が来て、「よくがんばったね」と自分で自分に言えるくらいがんばりたい。今はそれしかありません。
佐野:事務所の先輩方を見ても、そこにたどり着くまでには、正直10割足りないなという感じです。演技も、知名度も、そして人間的にも。足りないことだらけなので、少しでも追いつきたい。僕も今は、それで精いっぱいですね。
3年ぶりに再会した葵と佐野は、お互いに20歳になり、そしてダブル主演という重責を担うまでに成長した。若者なら、ちょっぴり軽口を叩きたくなる時期だが、2人は自身の置かれた状況を冷静かつ素直に見極め、自分の気持ちを律しながら、ひたむきに俳優の道を突き進んでいる。終始なごやか、ときには他愛もないやりとりをはさみながらも、本番に入るとピリッと緊張感を高めるあたりに、2人のプロとしての自覚がチラリ。そんな真摯な葵と佐野が、この夏、スクリーンで、胸が張り裂けそうな“ひと夏の恋”を届ける。
映画『青夏 きみに恋した30日』は8月1日より全国公開