「ウォーキング・デッド」シーズン9を前に魅力を再確認!
この秋から始まるシーズン9で、リック役のアンドリュー・リンカーンが番組を離れることが公式発表され、新キャストたちも決定、なにかと話題を集めている人気作「ウォーキング・デッド」。シーズン9放送開始を前に、もう一度、この作品の素晴らしさと、主要登場人物たちの一筋縄ではいかない魅力を再確認しておこう。(平沢薫)
その1:舞台はゾンビのいる世界 ドラマの主軸は"人間心理の危うさ"
本当の敵は人間
「ウォーキング・デッド」の魅力の基本は、ストーリーの面白さ。そしてその面白さは、人間とゾンビの攻防戦によるものではなく、人間心理の描写によるものだ。
ドラマの舞台は、原因不明のまま"ウォーキング・デッド(歩き回る死者たち)"が増殖した世界という、ゾンビものの定番だが、描かれるドラマの中心は、ゾンビたちとの戦いではない。ゾンビたちは定番通り、動きが鈍く、頭部を破壊すれば動かなくなる。だから、彼らの接近に気がつかない状態で襲われたり、多数の群に襲われたりすれば危険だが、通常は、注意を怠らず正しく対応すれば、致命的な被害を受けることはない。それでも、"運が悪い"としか言えないような状況で被害にあうこともあるが、それはいわば、交通事故と同じようなものだ。
こういう人いるいる
だが、ゾンビより恐ろしいのが、人間の心理。人間の心理状態によって、人々の生存が脅かされる。この作品は、人間VS人間のドラマなのだ。極限状況に置かれた時、人間たちはどんなことを考えて、どのように行動するのか。その描写がリアルで、「ああ、こういう人っているよな」 「こういうことは、あるだろうな」と腑に落ちる。だから、このドラマは面白いのだ。
その2:主人公たちが直面する"危機"がシリーズごとに変化する!
敵が変化していく面白さ
もうひとつ、「ウォーキング・デッド」の素晴らしいところは、主人公たちの敵=彼らの生存を危うくするものが、どんどん変化していくことだ。言い換えれば、主人公たちは、単純にさまざまな敵に出会っていくわけではない。その人物によって出会う試練はタイプが異なるが、例えば主人公のリックを見てみると、シーズン1ではなんとかある集団の一員になるが、シーズン2では異なる価値観を持つ集団に出会って、参加を拒否される。シーズン3では、独裁者が支配する集団に攻撃される。シーズン4では、自分が率いる集団のメンバーと価値観の違いから対立する。シーズン5では、別のある集団の一員になるが、今度は自分が独裁者的な存在になってしまいそうになる、という具合。
このように、主人公が直面する危機は、どんどん変化していく。敵は、外部にもいるが、自分自身の内部にもある。そんな人間心理のドラマが、リアルに描かれてくのだ。
その3:さまざまな経験を経て人物たちの信条、性格が変わっていく!
極限状態で普通の人の性格が変わっていく
さらにもうひとつ、「ウォーキング・デッド」の魅力は、登場人物たちのキャラクター。彼らの性格は単純ではなく、どこかにいそうなリアルさを備えている。そのうえで、なにしろ世界は極限状況なので、次々にとんでもない経験をしてしまい、どんどん性格が変化していく。
もっとも変化するのは、中年女性のキャロルだろう。シーズン1では、夫の家庭内暴力に虐待される妻だった彼女は、さまざまな経験を経て、殺傷力抜群の過激な戦士となり、敵には「あの女、普通じゃない」と恐れられるようになる。彼女をほどではないにしても、登場人物はみな、変わっていく。ふとした拍子に、その人物のこれまでの経験を振り返り、その変貌ぶりに感慨を抱いてしまうのも「ウォーキング・デッド」の醍醐味なのだ。
そこで、次回から「ウォーキング・デッド」の登場人物の魅力を再確認していこう。シーズン8終了時点で、彼らはどんな人物になっているのか。その経歴も含めて振り返ってみよう。
【ウォーキング・デッドキャラの魅力解剖連載予定】
第1回グレン・リー
第2回ダリル ・ディクソン
第3回マギー・グリーン
第4回ニーガン
第5回ミショーン
第6回ユージーン ・ポーター
第7回キャロル・ ペルティエ
第8回リック・グリムス