ウーマン村本、テレビの言論統制に物申す! -『華氏119』
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、村本がシンパシー感じまくり! アポなし突撃取材で知られる映画監督マイケル・ムーアがトランプ政権に迫る最新ドキュメンタリー『華氏119』をななめ見しちゃいます。(取材・文:シネマトゥデイ編集部・入倉功一)
『華氏119』
『華氏911』などのマイケル・ムーア監督が、第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプに迫るドキュメンタリー。トランプ政権の縮図といえる都市の衰退や、トランプの共和党に対抗する民主党、オバマ前大統領の問題点にまで言及し、トランプ政権誕生の背景に迫る。
マイケル・ムーラが日本を斬る!
中川:いやビックリした! マイケル・ムーア監督が、めちゃくちゃトランプのことを嫌いなんやなっていうのが伝わってきたわ。
村本:そうやなぁ。この前、ある日本の映画監督さんとお話する機会があって、劇中のあるセリフについて「実は安倍政権を批判しているんだ」って聞いて。確かにそう言われてみれば……っていう入れ方やったのよ。ムーア監督はそれをド直球でやっていて、これはこれで覚悟が伝わってくる。俺はこれ、ただ選挙に行けって、バカみたいに言うてるヤツにも観せたい! そういうヤツは「大人だったら行くべき」とか言うて、社会における政治への関心度を上げることは考えてないねん。でもこの映画なんかは、政治に対して無関心から関心へ強く変わる日本人は多いんちゃうかな。
中川:あんなにはっきりと物事に突っ込んでいく人、日本にもいてはるのかな?
村本:……おるやろここに。マイケル・ムーラが!
中川:安っぽ! 急にチープになったな。
村本:俺かて、選挙に行くことは大事やと思うけど、行かないならそれでもええと思ってる。ただな、この映画を観た後でみんなで話し合うとか、そもそも観る行動自体も、政治に関わっていることなんだという意識を持つ方が大事。俺らの漫才だってそうやで。政治に関わってないものって俺はないと思う。それで、政治なんて芸人のやることじゃないって言うんであれば、俺はこの国の芸人じゃなくてええ!
中川:それ、俺は困るんやけど……。
村本:いや、お前かて“マイケル・パーラー”やで!
中川:いや、俺そんなに政治的な活動してないて! お前に吸い寄せられんの、困るわ~。日本と癒着でやっていかせて!
日本版『華氏119』を作って!
中川:癒着いえば、トランプと仲のいい記者とかコメンテーターが、過去の経歴さらっていったらみんな性犯罪者みたいな。あんなことしても、テレビとか出られるって何やねんって。権力にはある程度おもねんないと、不利益をかぶっちゃうのかなっていうのがすごく悲しいわ。
村本:それは本当にそうやで。俺らもテレビで政権批判とかしなければ、もっと仕事が来るかもしれんけど、知ってしまった以上は、ネタにせなあかん。うんこと一緒で、食べたものは出すっきゃないからな。
中川:俺はマイケル・ムーア監督に、安倍総理版『華氏119』とかも作ってほしい! 日本にも、こんなことがあったのか! っていうことが、山ほどあると思うもん。
村本:いや、そう言うてる時点で、お前にこの映画のメッセージは伝わってない!
中川:ええ! 何で?
村本:そこで俺が作るってならな! マイケル・パーラーとして。いうたらお前それ、俺の代わりに投票に行ってくれ! 言うてるようなもんやで。
悪いオバマに衝撃!
村本:しかし俺もニュース番組で司会やっているから、普通よりニュースを見ていると思ってたけど、この映画で初めて、アメリカの都市(ミシガン州フリント)が水道汚染の被害にあって、怒り叫んでいる人たちがいることを知ったわ。せやからニュースって、もしかしたら東京ドームの芝5本分ぐらいしか、世の中のことを伝えてないんじゃないかな。
中川:俺も初めて知った。ホンマにひどい話やなって。それにオバマ前大統領の行動も衝撃的。水道汚染で苦しんでるとこに来て、やっと何とかしてくれるって期待するみんなの前で水飲んで帰るて。クリーンなイメージあったのに、めっちゃ悪いやん! イメージ変わったで。
村本:民主党も内部で足を引っ張り合って、それがトランプ政権誕生の一因になって。こういう、味方と思った人間が敵になるっていう構図を見ると、世の中がいかにシンプルにいかないかがわかるよな。フロリダの銃乱射事件で生き残った女の子(エマ・ゴンザレスさん)が出てきたけど、あの娘も、周りからすごくたたかれてるんちゃうかな。
中川:あ~、そんな気がする。活動になると、一気にそういう人が出てくるよな。
村本:そういうやつって、この子がただの被害者やったら、「かわいそう」とか思うわけや。でも銃社会に疑念を抱いて「銃を捨てろ」って言った瞬間に、攻撃する。漫才でも言うてるけど、そうでなく、社会問題ってのは自分にとっての問題でもあるという意識を持ちたいよな。せやから、こういった映画が面白いから広まって、面白いから学べて、その先に危機感を覚えるような。この日本社会において、漫才でマイケル・ムーラがやらな!
テレビに言論の自由はない!
村本:俺さ、前に言われたことあんねん。はっきりとテレビで安倍政権を批判するネタを入れたいといったら、政治部がピリつくからやめてくれと。インタビューとかとりやすい関係を作ってるんでしょ? 政権ににらまれたら、取材とかもやりにくいからって忖度しとるわけや。
中川:なんか、気を遣ってしまうというか。周りみんながイエスマンになるのもわかるわ。
村本:そう! だから俺はあらためて思ったね。テレビに言論の自由はない。言論統制されているんやなと。
中川:炎上してしまうかもしれんし。
村本:カットになるかもしれんから、リスクは踏まんわけや。でも俺からしたら、炎上することはリスクではないんやけどな。正直、何であれ強い言葉ってのは炎上するもんやと思ってるし。それよりも、発言がカットされてゼロになること。“沈黙”したことになることこそが、一番のリスクやと俺は思う! ほんまに、劇場では自由にやれんのになぁ。酒、飲んで出て怒られたくらいやで。
中川:それはアカンやろ! 冗舌にはなるかもしれんけど。
村本=トランプ説?
中川:忖度といえば、映画のなかでマイケル・ムーアとトランプが番組で共演するってなった時に、番組スタッフがムーアに「君のほうが言いやすいから、批判は控えて」って言うやん? あの、言いやすい相手に、ああいうことお願いするってあるよな。ああいう態度がトランプみたいな人、作ったのかなって。
村本:なるほど。そらあるかもな。
中川:面倒くさいこと言わんほうの人に要求をしようみたいな。
村本:いやホンマ、その通りやで!
中川:でもそれ多分、俺らでも結構あるで。「ネタ時間、長いんで」ってまずは1回、俺に時短をお願いしてきたり。村本にも伝えといてって。俺の方が言いやすいんやろうなって思うけど。
村本:え、俺……マイケル・ムーアの方やなくて、トランプ扱いやんか! 本当は俺の方がヘタレでイエスマンなのに、ホンマに誤解されてるわ! でも去年、社会的な漫才をやったやん? 最後カメラに向かって、「お前たちのことだ!」って言う俺の顔、やってることはマイケル・ムーラやけど、まさにトランプみたいやったわ……。
映画『華氏119』は公開中
オフィシャルサイト
Paul Morigi / gettyimages (C) 2018 Midwestern Films LLC 2018
※記事内容には個人の意見が含まれています
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。