中島健人「僕は意外とシャイ」片思いの過去
「週刊少年ジャンプ」に連載された原作を実写映画化した『ニセコイ』。『黒崎くんの言いなりになんてならない』に続いて河合勇人監督とコンビを組んだのは、Sexy Zone の中島健人。彼が演じる一条楽は極道一家の組長の一人息子。アメリカのギャング組織との抗争を避けるため、その一人娘で暴力女・桐崎千棘(中条あやみ)と恋人のフリをさせられるハメになる。どうする、楽!? そんなはちゃめちゃなラブコメに挑んだ中島が語った。
■世界に一つだけの台本をつくる
Q:一条楽を演じるために、どのような準備を?
まずいただいた台本を「世界に一つだけの台本」にしました。原作のコミックを印刷して切り取り、表情に関してのカット割をつくって台本の空白に貼り付け、気づいたことをメモして。ふだんここまで手の内を明かすことはありませんが、ここまでがんばったとわかってほしくて……言います! 『ニセコイ』は一コマ一コマのインパクトが強く、流れるような演技は合わないのかなと思ったんですよね。ナチュラルだと逆に違和感があるなと。そこでメリハリのある芝居が効果的と思い、まず台本を工夫しました。
Q:「脱・王子」という目標を掲げられたとか?
楽を演じるにあたってプロデューサーさんに「この役は格好よくないから、ふだんの君じゃ無理だよ」と言われて。それって裏を返すと格好いいと言ってくれてます? うれしいな~と思いながら「わかりました!」と答えました(笑)。確かに、女の子から言い寄られる役が格好つけてるのはちょっと違うかも、と思ったんですよね。自然なダサさやおっちょこちょいな部分がありながら、どこかしっかりしているのが楽のよさ。決して自分が王子だと自覚しているわけではありませんが、脱・王子をしようとクランクイン前に思いました。
Q:自分自身と違う部分で、特に意識したのは?
女性に向かって変顔をするなんて、いままで絶対にできませんでした。格好つけることしかしていないので(笑)。でも今回は崩さないといけない、そんなのありえない……だって僕、アイドルだから(笑)。でも、役者として……なんておこがましいかもしれませんが、勝負をしないといけないと思ったので恥じらいはすべて捨てて全力でやりました。コメディを少し……少しじゃない、相当やりたいと思っていました。そういう意味でまさに理想の作品でもあり、お話をいただいたときは運命を感じました。
■いい映画にするには、いい撮影現場にしないと
Q:撮影現場の雰囲気のよさを、出演者の方が強調されていました。主役を務める上で、どのような意識で臨まれたのでしょうか?
誰か一人でも現場でつまらなそうな顔をしてると、その子も元気にしてみんなで盛り上がりたくなるんです。その「一人も欠けちゃいけない論」への意識は、僕は強くて大事にしている部分でもあります。ドラマ「ドロ刑 -警視庁捜査三課-」でも撮影現場でハロウィンをやり、マーベルのヒーローになりました(笑)。そうしたことは、プロ意識というのとは違う気がします。単純に、いい映画にするためにはいい撮影現場にしないと。それも作品によるもので、厳しい空気が必要なときもあるかもしれませんが、こうしたコミカルな作品は絶対に楽しくないとダメだと思って。
Q:楽というキャラクターを客観的に見ると?
鈍感だな~でもうらやましい! だって女性と温泉に入るんですよ! なんなんですか、この映画(笑)。湯船に沈んで隠れなきゃいけなくて、死にそうなシーンでもありましたけど。千棘みたいな美人と温泉に入り、万里花(島崎遥香)と小咲(池間夏海)とるり(河村花)もあとから来て。スクリーンでは湯けむりに隠れますけど。僕がお客さんとして観に行ったら、湯けむりジャマだな~と思うはず(笑)。それくらいに男の願望がつまったシーンですね。楽ってぜんぜん格好よくないから共感してもらえると思います。
Q:楽をいいなと思うのはどんなところですか?
大きなおうちに住めるところ。楽の家はめちゃめちゃ広くていいですよね~。あんな家に住んでみたいです。以前ドバイへ行ったとき、ホテルがものすごく広くて。どんだけ広いんだ!? と思ったのですが、広い場所が好きなのでうれしかったです。もし楽の家に住むとしたら、セグウェイに乗っちゃいますね(笑)。
Q:ニセコイから始まる恋をどう思いますか?
最初は自分で気づかなかった分、気づいたら好きになっていた……という感覚かなと。僕は一目惚れタイプで、あ……俺もうお前のことが好きだわ! とすぐに気づくタイプだと思うので、楽は鈍感過ぎると思いました。
■ターニングポイントとなる作品にはいつも彼がいる
Q:桐崎千棘を演じる中条あやみさんの印象は?
文化祭のシーンが大変で、夜中の0時を過ぎても撮影が続くほどのハードスケジュールということがあったのですが、僕の頭を扇風機で冷やしてくれたりとケアをしてくれました。やさしいですよね。3か月をまたいで撮影していたので、1クールの連ドラをやるくらいのカロリーの消費量だった気がします。それくらいキャストのみんなと一緒にいて、撮影の合間にご飯を食べに行ったりと、現場の空気感は抜群でしたね。
Q:その他の共演者について、印象に残ったことを教えてください。
楽の親友である舞子集を演じた岸(優太)くんはふだんから間の取り方が独特で、それがうまく活かされてました。彼はジャニーズJr.時代から一緒にがんばってきた仲間でもあるから、役者としても成長している! とうれしかった。仲間であることは置いて、ひとりの俳優さんとしても尊敬できる。だって、ドアから入ってくるだけで笑いが取れるってスゴイですよね! 僕には絶対に無理ですもん。階段を一つ上がるだけでも笑いを取る、あの特殊能力は魅力的だなと。まあ……ふだんはイジりまくって、そんな本音は言いませんけど。撮影期間中、一緒に温泉に行ったのもいい思い出です。撮影が深夜0時くらいまで続いたとき、彼がどうしても行きたいと言って。たくさん語り合いました。2人しかいなかったからタオルをぶんぶん振り回したり、叫んだりして、青春だな~と。岸くんとは『黒崎くんの言いなりになんてならない』でも一緒で、自分のターニングポイントとなる作品にはいつも彼がいる気がします。でもいまや King & Prince としてデビューして輝いてる。前作とは立ち位置がまるで違っていて、時の流れを感じます。
■男子の夢が叶う映画
Q:光源氏になった気分になれるかも?
まさに光源氏でした。みんなでバスに乗って後方座席に楽だけが男で真ん中にいるシーンで、なぜか女の子に挟まれてましたよね。普通はいくつかの障害を経て女子に囲まれる花園にたどり着くのに、最初からもう花園にいる楽って……どういうシチュエーション!? と思いました。自分の修学旅行をふり返ってみても、そんな思い出はひとつもないですから。僕は意外とシャイで。好きな子にも3年間、片思いをしてぜんぜん告白できなかった人なので。みんなでバスに乗っても女子の隣の席なんてことはなく、男子で固まっていました。
Q:楽のように、幼いころの初恋を想い続ける姿をどう思います?
とてもわかります。女性は未来へ歩んでいく存在ですよね。でも僕ら男は過去を引きずります。楽の初恋相手である小咲がやさしいと思うのは、終わったはずのラブを忘れないでいてくれること。ずっと楽を好きでいるなんて、ロマンティックだなと。男からしたら、こういう女性がいてほしいという理想が叶うようなもの。もちろん女性にもいろいろなタイプがいるから、過去が大切な人も絶対にいると思うけど。ただ女性って切り替えがしっかりできるから、かなわないんだよな~って毎回思います。聞いてくれ男たち! やっぱり僕たち男は女性にはかなわないんだ!
■取材後記
共演者から撮影現場での気の配り方、役柄への熱心な取り組みを絶賛された中島健人。取材が行われたこの日も自ら楽しい雰囲気を醸し出し、どんな質問にも真摯に饒舌に、笑えるポイントを織り込みながら語った。その結果、その場にいた誰もが共演者の言葉に共感することに。連ドラ主演作「ドロ刑 -警視庁捜査三課-」に続いて主演映画の公開。アイドルとしての活動とはガラリと趣を変え、今後の俳優・中島健人はどのような変貌を遂げていくのか? つぎなる一手が気になる存在となった。(取材・文:浅見祥子)
映画『ニセコイ』は12月21日より公開
(C) 2018映画『ニセコイ』製作委員会 (C) 古味直志/集英社