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『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』高畑充希 単独インタビュー

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『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』高畑充希 単独インタビュー

気づけば最後はみんながファミリー

取材・文:浅見祥子 写真:尾鷲陽介

大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した原作を、前田哲監督自ら技あり! に脚色して映画化した『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』に高畑充希が出演した。大泉洋演じる鹿野靖明は幼少期に筋ジストロフィーを発症。24時間誰かの助けがないと生きられず、札幌市内のケア付き住宅で大勢のボラ(=ボランティア)に囲まれて暮らす。そんな鹿野のもとへ三浦春馬演じる恋人を訪ね、ボラの仲間入りをするハメになる美咲を演じた。

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明るいホームドラマのよう

高畑充希

Q:前田哲監督とは『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙(そら)へ』(2007)でも一度組まれています。オファーを受けたときの感想は?

楽しみな気持ちがいちばん大きかったです。正式にオファーをいただいたあとに前田さんから電話がきて、「どうしてもこれを映画化したい!」という熱い想いを1時間くらい聞きました(笑)。当時私は鹿野さんの存在を知らなくて、「そういう方がいたのか……」とまだ腑に落ちていなくて。そのあと台本を読ませていただくとありそうで観たことがない物語というか、難病を患った方をこれほどポップに描けるんだ! とワクワクして撮影に参加しました。

Q:難病モノかと思って映画を観ると意外な内容です。鹿野役の大泉洋さんはまさにハマり役で。

本当に。大泉さんの存在感がポップで、明るい印象の方ですよね。それで飄々(ひょうひょう)と鹿野さんでいてくださったので、映画全体の空気感も暗くなり過ぎなくて。明るいホームドラマのようで、ほくほくした気分になりました。もちろん逆境の続く主人公ですけど哀しくはなく、少しの希望があって。

流れに身を任せて

高畑充希

Q:映画を観ながら、なぜこんなにたくさんの人が無償で鹿野さんのために時間を割くのだろう? と思いました。

私も最初はそうでした。でも私の演じた美咲はただ目の前で起きたことに反応するタイプというか、あまりなにも考えていないというか(笑)。19歳という年齢のせいか、起きたことにぽん! と乗っていける無責任さもあったのかなと。目の前にワガママな人がいたから怒り、困った人がいたから助ける。それで助けるうちに自分がなにかをあげるばかりでなく、もらうことも増えていく……。すべてが自然な流れで、ボランティアという意識もないのかも。一方で(三浦)春馬君の演じた医大生の田中君は「ボランティアをしている自分」というものに価値を見出したのかもしれないし、矢野(聖人)君の演じた城之内君は「助けてあげている自分の価値を見出せなくなったから」と辞めていきます。“鹿野ボラ”にはいろいろな人がいるんですね。

Q:美咲の心情の変化に、すんなり寄り添えましたか?

1年半ほどにわたるお話なので……。まず鹿野さんがポップで、みんなを惹きつけるキャラクターなのは大前提としてありますよね。鹿野さんって衣裳もかわいくてマスコットみたい。キーホルダーにしたくなる(笑)。そんな鹿野さんに対して最初は観客の方と一緒に「え?」と思いながら、影響されて大好きになる、そんな変化が明確な役でした。だから鹿野さんへの気持ちがどう変化するのかは流れに身を任せていました。

鹿野さんはポップ、田中君と美咲はポップじゃない

高畑充希

Q:美咲と田中のラブストーリーも一筋縄でいかない見応えがありました。

春馬君って、田中君に似ているところがあるんです。頭がよくていろいろなことを深く考えていて、思慮深い。病院の屋上で2人が感情をぶつけ合うのは大切なシーンでした。田中君が珍しく人間臭い部分を見せる場面で撮影は長回し。このときも春馬君は考えて考えて自分を追い込んでいて。前田監督が「人としてキレイでない部分を出してほしい、自分でもなにを言ってるのかわからなくなってほしい」と春馬君に話すのを横でずっと聞いていました。そのあと監督からこっそり「春馬君を怒らせてほしい」と言われて。あそこは台本がありましたが、どうやったら2人の均衡が崩れるんだろう……と考えていたら、台本にないことも言ってしまったり。春馬君はまた違った角度から、田中君目線で考えて。一発勝負の撮影でした。とても内容が濃かった。

Q:美咲と田中が外でデートをするシーンで、田中君の爽やかなイケメンでない面が出ていました。

美咲と田中の関係ってうじうじしてるんですよね……(笑)。傍で見ていると「なんなの!」と言いたくなるくらい(笑)。あのシーンもたくさん話し合って、その全部を捨てて撮りました。鹿野さんはポップだけど、私たちは全然ポップじゃない。奇妙な三角関係のようで、気づけば最後はみんながファミリーのよう。映画のあちこちで不思議な関係性があります。

Q:美咲が鹿野にどこまで惹かれるかというのは、監督とかなり話し合われたのでしょうか?

最初に話し合いました。じつは当初、鹿野さんとキスシーンがあったんです。でも田中君とのことがあるから、二股をかけているようで。しかも鹿野さんとのキスということは、美咲から発信する気持ちが強く見えるかもしれないと思い、しないほうがいいのかなと監督と話して。鹿野さんと美咲、田中君と美咲、それぞれの関係性をどのくらい濃く描くのか? 最初は監督も悩まれていました。前田さんは話を聞いてくれる監督なんです。先にあげていただいた作品でも、右も左もわからない子どもの話を、どう思う? 充希ならどうする? と熱心に聞いてくださいました。

2018年は再会が多い年

高畑充希

Q:完成した映画を観た感想は?

観終えたあと特定の誰かとか個人の印象があまりなくって。鹿野ボラというチーム……鹿野さんを中心とした輪のような空間があって、そこにみんなが出たり入ったりしている。それで思い出すと全員の笑った顔が浮かぶようでした。撮影時の思い出を含めての感想かもしれません。疑似家族みたいにしよう! とは思っていませんでしたけど。映画自体も、障害がテーマという印象はなく、なにかのテーマを押し付けられる感覚もなかった。考えたい人は考えてもいいと観る人に委ねられるようで晴れやかな気持ちになりました。それでいて難病を抱えた鹿野さんが主人公であるだけにぼーっとしてられないところもあるので、観てくださった方がどう思うのか。とても興味深いです。

Q:「過保護のカホコ」で民放の連続ドラマ初主演を務めた際に「怖かったけど、壁を超えれば楽しくなった」と。今回は主役ではないですが物語のキーとなる役。以前と違う楽しさがありましたか?

去年はそうしていろいろと考えていたのですが、あまり考えなくなりました。今年はこの映画をはじめ、初めましてでない監督とご一緒する機会が多かったんです。再会の多い年で、それは初めて呼んでいただくよりうれしかったりする。もちろん期待に応えなきゃ! という想いもありますが、それよりも、また一緒にできるんだ! と。ああでもないこうでもないと役について話し合う、その時間が充実していました。もちろんできた映画を届けるのは大切ですが、ただ楽しんでものづくりをしていたなと思うんですよね。


高畑充希

映画のなかの美咲はボーダーTシャツにミニスカート姿で、生命力にあふれた存在。若さゆえの青さもあって、そんな美咲を高畑充希が演じることが新鮮に思えた。鹿野を演じる大泉洋も、まさに彼にしかできない演技! ワガママ放題でエラそうで、口だけ達者なのにどこか憎めない。そんな鹿野をどこかかわいらしくてちょっと笑える存在にしたのは、大泉だからこそ。ここぞ! というセリフも心に響く、緩急も自在な演技だった。

映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』は12月28日より全国公開

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