無敵の女王デナーリス・ターガリエン~ドラゴンに乗り空を駆け抜ける
ゲーム・オブ・スローンズの魅力
「ゲーム・オブ・スローンズ」最終シーズンの放送がこの4月にスタート! その前に、ユニークな登場人物たちの魅力を再確認。次から次へと登場したあのキャラやこのキャラの魅力を振り返ってみた。(平沢薫)
※ご注意 なおこのコンテンツは「ゲーム・オブ・スローンズ」について、ネタバレが含まれる内容となります。ご注意ください。
ゲーム・オブ・スローンズの魅力 連載:第3回
人気登場で第1位になるのはいつもこのキャラ
各所でやっている本作の人気投票で、ほとんどいつも第1位になるのが、このデナーリス(エミリア・クラーク)。本作の放送が始まってから、アメリカでは、“女王”という意味の彼女の称号“カリーシ”と名付けられる赤ん坊が急増したと言われるほどの人気キャラだ。
その人気の理由は、まず、少し子供っぽい愛らしい容貌なのに、女王の威厳と力があるというギャップかも。おまけにドラゴンたちを操る。ドラゴンの背に乗って大空を駆け、ライトブロンドの髪をなびかせ、ドラゴンに炎を噴射させる。これだけでもうビジュアル的に最強キャラだろう。
ストーリー面での魅力は、シリーズ中でもっとも成長幅、出世幅が大きいこと。なにしろシーズン1第1話では、前王の娘ではあるものの、王の死後に生まれ、王位を狙う自分勝手な兄に虐げられて育ち、若くして政略結婚させられる非力な乙女だった。それがシーズン3で女王になり、それからは負け知らず。シーズン7最終話時点で、この世界で最も力を持つ集団を率いる存在になっている。この成長ぶりは見ていて気持ちがいい。
逆境でも絶望しない、くじけない
また、性格面での魅力は、逆境にくじけないこと。彼女は、言葉も通じない蛮族の王と結婚させられるが、それを嘆くだけじゃなく、逆にそれをバネにして成長する。召使たちから言語を学び、王を喜ばせる方法を習い、王と愛しあうようになって王を自分の味方にするのだ。その結果、彼女を支配しようとする兄が王に倒されるというオマケも付いてきた。
しかし、その後も新たな悲劇に見舞われる。彼女が女性奴隷を信じたせいで、愛する王が死に、自分も子供を死産してしまう。しかし、そこでもデナーリスは絶望しない。子供の代わりにドラゴンを誕生させ、自分がドラゴンの女王になる。同時に、奴隷の悲しみや苦しみを痛感し、奴隷のいない世界を作ることを決意するようになるのだ。
この決意には、彼女自身がかつて奴隷のように扱われたことも影響しているだろう。そして、奴隷たちを解放することで、その都市を支配していく。その結果、解放された奴隷たちは、デナーリスのために尽くすようになる。彼女はいつも、苦しい経験から学び、それを自分のパワーに変えていくのだ。
「鉄の玉座」を狙うライバルたちとは“志”が違う
そして、「鉄の玉座」を目指す理由が、他の人々とは違うのも、彼女の魅力。他の人々は、世界を自分の思い通りに支配したいという権力欲から玉座を目指す。しかし彼女は、自分の理想とする世界=奴隷のいない世界を作るため玉座を目指す。だから、ライバルたちのように、敵を倒すために街を焼き払うことはしないのだ。
もう一つ、彼女がライバルたちと違うのは、周囲の人々の言葉に耳を傾けること。彼女の近くには、政略結婚時から近くにいたジョラー・モーモント(イアン・グレン)はじめ、通訳のミッサンディ(ナタリー・エマニュエル)、現在の“王の手”ティリオン(ピーター・ディンクレイジ)など、いつも助言者がいて、彼女はいつでも彼らの言葉に(常に従うわけではないが)耳を傾けてきた。そこが、自分の正義だけを信じる他の権力者たちとはかなり違うのだ。
それでいて品行方正な優等生ではなく、恋多き女性なのも、デナーリスのステキなところ。政略結婚させられたドスラク人の族長ドロゴ(ジェイソン・モモア)と愛し合う。傭兵団の総師ダーリオ・ナハーリス(マイケル・ユイスマン)を愛人にする。副官だったジョラー・モーモントにはプラトニックな愛を告白される。そして、シーズン7では“北の王”ジョン・スノウ(キット・ハリントン)と結ばれる。モテモテなのだ。
最終シーズンでは、また苦難が待っているような…
シーズン7最終話では、そのジョン・スノウが、彼女の年の離れた兄の息子、つまり甥だったことが判明。2人の恋がこれからどうなるのかが気になるところ。故郷に置いてきた愛人ナハーリスも再登場したりして? また、「鉄の玉座」の王位継承権の順位も、血統的には彼女よりジョン・スノウの方が上になるが、すると王座に座るのは果たして?
しかも、デナーリスの最大のライバル、現在「鉄の玉座」に座る女王サーセイ(レナ・ヘディ)は、デナーリス陣営が“死者”との戦いで弱体化したところを攻撃しようと画策中で、こちらの戦いも先が見えない。はたして、デナーリスは最後まで生き残るのか? これも今後は楽観視できないような?
気になるサブキャラその1:デナーリスへの純愛を貫くロマンなオヤジ、ジョラー・モーモント
イイ感じのオヤジが多い本作中で、顔に似合わず、もっとも純情オヤジなのがジョラー・モーモント。
実はスパイで、デナーリスの状況を敵側に報告するため近づくが、彼女を愛してしまい、彼女に尽くしまくる。さらには、雇い主による彼女の殺害計画も阻止してしまう。でも彼女には指一本触れず、彼女が結婚しても愛人を作っても、見守るだけ。シーズン1から愛しているのに、シーズン7でやっと彼女の手に接吻することを許される。その間にシーズン4と5で2度も追放されるのに、そのたびに戻って「愛しています」と宣言する。汚いことにも手を染めてきたイイ年のオヤジなのに、このプラトニックな純愛ぶり。これが彼の魅力だろう。
もともとモーモント家は北部の名家で、彼の父親は、ジョン・スノウや友人サムウェル・ターリー(ジョン・ブラッドリー)が尊敬する“冥夜の守人”の総帥ジオー・モーモント(ジェームズ・コスモ)。ジョラーは、かつて浪費家の妻のために密猟者を奴隷として売り死刑を宣告され、それを逃れて逃亡して現在のようになったのだ。元は騎士で忠義心も厚い。これから始まる死者たちとの戦いでも、女王デナーリスのために何かをやってくれるはず。
気になるサブキャラその2:誇り高き10歳の女領主リアナ・モーモント
北方の領主中で最年少だが、最も印象が強いのが、10歳の女領主リアナ・モーモント(ベラ・ラムジー)。誇り高く、彼女よりもずっと年上の老人揃いの領主たちの集会でも、自分の意見をはっきり言う。その凛々しいたたずまいが、とにかくカッコいい。
彼女は現在のモーモント家の当主で、“冥夜の守人”の総帥冥ジオー・モーモントの妹の娘。ジョラー・モーモントとは従兄妹の関係になる。
シーズン5でロバート王(マーク・アディ)の弟スタニス(スティーヴン・ディレイン)が、北方の領主たちに自分への忠誠を求める書状を出した時に、彼女は「熊の島が知る王は、北の王、スタークのみ」と詩のような文章で返信し、スターク家への忠誠を固く守る。この書面だけで、スタニスだけでなく、本作を見ているファンたちにも感銘を与えてくれた。
そして、賢い。ジョンとサンサ(ソフィー・ターナー)が、ウィンターフェルを取り戻す戦いのための出兵を求めた時には、無条件に従うのではなく、理路整然と出兵の理由を問うという冷静さも見せてくれる。
この時、彼女が差し出す兵の数はわずか62名なのだが、その少なさに肩を落とすジョンに言い放つ言葉が、またシビレる。「われらは小さいが誇り高い。1人が10人に匹敵する」と宣言するのだ。この誇り。最後の戦いでも、きっと彼女の見せ場があるに違いない。
「ゲーム・オブ・スローンズ 最終章」はBS10スターチャンネルにて4月15日より<世界同時放送>
「ゲーム・オブ・スローンズ」は、スターチャンネルオンデマンド、Hulu、Amazonプライム・ビデオなどで視聴可能