第91回アカデミー賞:ファッショントレンドを大胆予想!
映画に見る憧れのブランド
日本時間2月25日(現地時間2月24日)に行われる第91回アカデミー賞授賞式。賞のゆくえはもちろん、スターが一堂に会すレッドカーペットでのドレス姿も楽しみの一つでしょう。今回は、この時期ならではの番外編として、オスカードレスのトレンドを、前哨戦の一つ、ゴールデン・グローブ賞の授賞式から予想してみましょう!
1:「戦う女王様」が続々と出現!?
2019年は衣装を黒にしなくとも、女性の強さは女王様ドレスで演出するとばかり、美しい鎧のようなドレスがたくさん登場しました。
エミリー・ブラントが着用したシルバーの刺繍が身体を覆うアレキサンダー・マックイーンのドレスや、ケリー・ラッセルが着たネックラインがぐっとセクシーに開いたモニーク・ルイリエによるシルバーメタリックドレスは、バイキングの女王様のよう。一方、シアーシャ・ローナンのシルバーの鎖が連なったようなグッチのドレス、『ビール・ストリートの恋人たち』で助演女優賞を受賞したレジーナ・キングの眩いメタリックドレス、『女王陛下のお気に入り』で女優賞(コメディー/ミュージカル)を受賞したオリヴィア・コールマンが着用した、ネックラインとスリーブに鎖の帷子がついたようなステラ・マッカートニーのドレスなどは、中世の甲冑みたい。ジャネール・モネイが身につけたシャネルの衣装にいたっては古代エジプトの女王様そのもの!
『天才作家の妻 -40年目の真実-』で女優賞(ドラマ)を獲得したグレン・クローズは、アルマーニ プリヴェによるケープのミステリアスな衣装を纏い、女性が夢を持つことの大切さをスピーチし、世界中の女性にエールを。また、スーツの上からランディ・ラームのシルクのケープを着用するというアイデアで登場したのはビリー・ポーター。なめらかな光沢のケープは宝石と刺繍で飾られ、ドレスの裾をひるがえすようにビリーがマントを広げてくるっと回ると、ケープの裏地はなんとピンク! タキシード一辺倒になりがちな男性ファッションにも新たな楽しみが加わりそうです。
その他にも、女王様と言えば……のSMチックなドレスもトレンドのよう。ロザムンド・パイクやタンディ・ニュートンは、バストラインとウエストのところでクロスしたボンテージドレスで女性の官能性とウーマン・パワーを同時に打ち出していました。
2:男性もよりジェンダーレスに!
レッドカーペットの男性はタキシードが定番ですが、今年のゴールデン・グローブ賞授賞式ではジャケット着用せず、ジェンダーレスな装いをしたセレブも。テレビ部門で作品賞(テレビ映画・ミニシリーズ)を受賞した「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」に出演したコディ・ファーンはフェミニンなブラックのシアーブラウスにハイウエストのパンツをチョイス。スモーキーなアイメイクも施し、足元はマルジェラ・マルタンのアイコニックな足袋ブーツで、中性的な美しさを披露しました。一方、今旬の若手俳優、ティモシー・シャラメもオールブラックでノー・ジャケット。ベストの代わりにルイ・ヴィトンのラメ入りビブスをシャツの上から身につけ、一見ハーネストのようなセクシーな装いに。
他にも、『ブラック・クランズマン』で監督賞にノミネートされていたスパイク・リーはシャツもジャケットもディオールのオールパープルカラー、「アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺」で男優賞(テレビ映画・ミニシリーズ)を獲得したダレン・クリスも花柄プリントで飾られた、ディオールのシックなタキシードを着るなど、男性もレッドカーペットの主役になれることを証明していました。
3:パワー“ホワイト”
Times Upはブラックで女性の強さをアピールしましたが、実は2016年の選挙戦でヒラリー・クリントンがオールホワイトのパンツスーツを着て以来、ホワイトもパワー・ウーマンのシンボルだと考えられています。
そんなホワイトカラーのドレスを華麗に着こなしたセレブはたくさんいましたが、なかでも、「キリング・イヴ/Killing Eve」で女優賞(ドラマシリーズ)を勝ち取ったサンドラ・オーが着用したヴェルサーチのアシンメトリードレス、ジェイミー・リー・カーティスが着けたアレキサンダー・マックイーンのドレス、ジュリアン・ムーアが纏ったジバンシィのツーピースドレスは、女性らしいピュアなエレガンスが際立ちました。
4:白と黒の“バイカラー”ドレスで良いとこ取り
シャーリーズ・セロンのディオールのドレスや、『女王陛下のお気に入り』で助演女優賞にノミネートされていたレイチェル・ワイズのセリーヌのドレスは、トップスとボトムスがホワイトとブラックのバイカラーでスタイリッシュ。「Times Up」ムーブメントへのサポートとファッションを両立しようとしているようにも見受けられます。
5:ミニ丈ドレスとアニマルプリント
「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」で女優賞(ドラマシリーズ)にノミネートされたエリザベス・モスは、ディオールのジャケット風ミニ丈のブラックドレスで美脚をあらわにして、ハンサムなセクシーさを見せ付けました。
また、アン・ハサウェイが身につけたエリー・サーブのヒョウ柄ドレスにも視線が釘付け。ここ数年、レッドカーペットではシックな正装がよしとされていたことから、敬遠されていたいたアニマルプリント。アニマル柄が2018年のストリートファッションのトレンドであったことの影響かも!?
今後、オスカードレスがカジュアル化し、ストリートスタイルと繋がる方向性を示しているのかもしれませんね。
6:とうとうペアルックが!
今年のゴールデン・グローブ賞授賞式には色のトーンをあわせたカップルが数組登場。ジム・キャリーとガールフレンドのジンジャー・ゴンザーガ、『バイス』で男優賞(コメディー/ミュージカル)を受賞したクリスチャン・ベイル夫妻は、シンプルなオールブラックのスーツとブラックドレスで大人っぽいペアルック。サム・ロックウェルとレスリー・ビブはヌードとブラックカラーでマッチングした、キュートなスタイルでのペアルックを披露。アカデミー賞授賞式でも、カップルならではのレッドカーペットスタイルに目を向けたいところ。
7:化粧品ブランドがレッドカーペットビジネスに参入!?
ゴールデン・グローブ賞授賞式で発表されたプレスリリースには、ドレスやジュエリーのブランドだけではなく、なんと化粧品ブランドまでも記載されていたのだとか! 例えば、ディオールの広告塔を務めるシャーリーズ・セロンやジェニファー・ローレンスが同ブランドのドレスや化粧品を使うのは当たり前ですが、これからは特定のブランドのアンバサダーを務めていないセレブもレッドカーペットで使用した化粧品情報を売り込む流れになりそう。
2018年のゴールデン・グローブ賞授賞式では、女性たちは黒い衣装を着用し、セクシャル・ハラスメントについて声を上げ、授賞式で着用したドレスを寄付する団体名やオークションがプレスリリースに記載されていました。ところが、今回の授賞式では寄付やオークションはすっかり息を潜め、高級ブランドのマーケティングマシーンに逆戻りしたかのよう。カラフルなドレスは眼福の極みですが、女性を応援する勢いが衰えたのではないかと少し心配です。
とはいえ、女性らしい強さをデザインやカラーで表現したり、男性のジェンダーレスなスタイル、ストリートファッションの影響が衣装に反映されたりと、レッドカーペットのファッションはなかなか奥深いもの。アカデミー賞授賞式で、どのような新しいトレンドが生み出されるか楽しみです。
【参考】
※1…On the Golden Globes Red Carpet, a Retreat - New York Times
※2…All the Looks From the 2019 Golden Globes - ELLE
※3…This American Horror Story Star Wore Margiela’s Iconic Heels on the Globes Red Carpet - VOGUE
※4…The Best Celebrity Couples on the 2019 Golden Globes Red Carpet - Haper’s BAZAAR
※5…Shop the exact skin-care products celebs used to get their Golden Globes red carpet glow - YAHOO! LIFESTYLE
此花さくやプロフィール
映画ライター。ファッション工科大学(FIT)を卒業後、「シャネル」「資生堂アメリカ」のマーケティング部勤務を経てライターに。アメリカ在住経験や映画に登場するファッションから作品を読み解くのが好き。
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