ハンギョン&山下智久、人見知りだからこそ築けた絆
オタク系プログラマーが高いハッキング技術を買われてサイバーテロ組織に潜入すると、そこにいたのは謎めいた裏社会の大物・モリタケシだった。主演の元 SUPER JUNIOR のハンギョンと、初の海外作品にして初の悪役に挑んだ山下智久がアクション大作『サイバー・ミッション』で初共演。役柄こそ敵同士だったが、言葉や文化の障壁をこえて撮影期間中にすっかり仲良くなった2人。撮影の思い出を振り返りながら、裏話を披露した。
リアルなハッカーを演じるための役づくり
Q:『サイバー・ミッション』はハッカーが主人公という、とても現代的なテーマを扱っていますね。最初に話を聞いたときはどう思いましたか。
ハンギョン:撮影に入る前には、実際にハッカーの方たちから体験談を聞く機会をつくってもらうなど、どう演技すればリアルなものに近づけられるのかを意識しました。たとえばパソコンに向かっている姿勢はどうすれば説得力があるのか、話を聞いて参考にすることも多かったです。
山下智久(以下、山下):僕自身は、この作品に関わるまでコンピューターやインターネットというものが、いい意味でも悪い意味でも現代では影響力を持っているとは知らずにいたんです。今回、改めて人間以外の“頭脳”との付き合い方について考えさせられました。作品には社会的なメッセージも含まれていると思うので、映画を観た方へインターネットとの関わり方に注意喚起を促すような意味合いもあると思ったので、参加させていただきました。
Q:お二人は普段からスマホやパソコンなどを駆使されていますか?
ハンギョン:ゲームにはすごく興味ありますね。新しい機種が出ると、すぐ買ってしまいます(笑)。
山下:僕は遅いほうですね。この前、ハンギョンさんの自宅でゲームをプレイさせてもらったんですが、自分でもびっくりするくらい下手くそでした(笑)。
ハンギョン:僕の家にはレーシングのシミュレーションができるマシンがあるんです。けっこう本格的なものですよ。
Q:ハンギョンさんの自宅でパーティーをされたそうですね。
ハンギョン:そうなんです。中国でのプレミア上映が終わったあとに、僕の自宅に監督や関係者のみんなに来てもらったんです。
山下:料理もふるまってくれて、伝統的な四川料理や僕らにもなじみのある餃子など、オーガニックにこだわった料理が本当に美味しかったです。お酒も進みました。
ハンギョン:山下さんは本当にお酒が強いんです。一緒にたくさん飲みましたね(笑)。
主演・ハンギョンの器の大きさに感動
Q:ハンギョンさんが演じるのは、テンションの高いホワイトハッカー、リー・ハオミン。山下さんは冷静沈着なサイバーテロリスト、モリタケシを演じています。対照的な役どころですが、撮影ではどのように気持ちを維持していたのでしょう?
ハンギョン:撮影期間中は元気いっぱいに「みんなで仲良く楽しもう!」というムードでいたのですが、山下さんは役柄としてはそういうわけにはいかないところもあって、どうしたら一緒に仲良くできるだろうと悩ましいところもありました。クールな悪役ということもあって、切り替えが大変だろうなと思ったので、適度に様子を見て話しかけるようにしていました。
山下:そのおかげか、切り替えは自然とできました。ハンギョンさんが「一緒にジムに行こう」「バーでみんなで飲もう」と誘ってくれたり、逆に僕が大変なシーンの撮影に入っているときはそっとしておいてくれたり。僕が考えこむことのないよう誘導してくれたので、すごくやりやすかったです。主役の器の大きさを感じました。お互いに人見知りなところもあるので、そのぶん仲良くなったあとは深い関係になれた。これから長く続いていく絆になると思います。
ハンギョン:僕は山下さんにクールな印象を持っていたので、はじめは遠慮していたのですが、実際はとても親しみやすい方でした。撮影中のある日、山下さんがホテルで退屈してないかな、寂しくないかなと心配だったので、ホテルの部屋まで呼びに行ったことがあったのですが、反応がない。あれ、おかしいなと思っていたら、直前に山下さんは別の部屋に移ったあとだったんですね。誰もいなくてよかったです(笑)。
Q:撮影に関しても、中国の現場はその場その場で変更が出てくることも多いと聞きます。実際に体験されてどうでしたか?
山下:やはり日本と違うので、大きな経験になりました。撮影スタイルも含めて現場のあり方など、さまざまな違いのなかで、たくさん学ぶことができたと思います。
ハンギョン:中国の現場は変更が多くて、常に何かが起こるのが当たり前な感覚です。もちろん、映画に関わるすべての人が「さらに良い作品を作りたい」という、その一心なんです。僕たちは慣れっこですが、初の海外作品となった山下さんの適応能力には驚きました。すっかりなじんでいましたね。僕はいろんな現場を体験していますが、山下さんも絶対できる。どんどん世界で活躍してほしいと思います。
山下:嬉しいです。国内外を問わずに、いいメッセージを届けられる作品に積極的にチャレンジしていきたい。僕にはボーダーラインはないんです。
Q:そんな山下さんは劇中で、流ちょうに英語と中国語のセリフを披露していますが、どのくらい前から準備していたのでしょうか?
山下:実をいうと、セリフについて撮影の1か月以上前から練習していたんです。ただ、現場で次々と台本が変わったりしていたので……。臨機応変に対応しなければならない現場でした。とはいっても、より高いクオリティーのものを作り上げるための変更なので、僕もしっかりついていかなければならないと思っていました。
山下智久、初の悪役で切り開いた新境地
Q:山下さんは役づくりのために6キロ減量して、存在感の不気味さを演出するために剃毛されたそうですね。
山下:視覚的には、これまでの自分とは違う感じにして、気持ちを作りました。それと効果的だったのは、撮影の間は日本語を話さず、日本の誰ともできるだけ連絡をとらないようにしていたことです。聞こえてくる言葉も違うし、自分が自分じゃないような感覚になりました。
Q:ハンギョンさんから見て、山下さんの演技はどうでしたか?
ハンギョン:山下さんが悪役なんて、私も最初は意外だったんです。山下さんの演技は『あしたのジョー』やラブストーリーなどを観て知っていたのですが、今回はこれまでとはまったく違います。その役づくりに驚きましたね。
山下:僕もハンギョンさんの作品は観ていて、硬い歴史ものからコメディーまで幅広くこなされているので、本当に才能豊かな俳優さんだと思います。すごい方と共演しているんだなと撮影中も思いましたけど、撮影が終わった今でも感じています。
Q:山下さんは初めての悪役ということで、自分のなかでの発見や変化などはありましたか。
山下:演じたモリの心情を理解するのはちょっと難しいですね。彼の行動心理が僕からすると遠くて、共感はできなかったので。そういうこともあって、外見などの視覚的なものを変えていこうという努力をしたんです。
ハンギョン:演じた今はどうですか? 心情が近くなっていたりして(笑)。
山下:近づきたいという思いはあったので、もしかしたら悪いことができるようになったかもしれない。気を付けてくださいね(笑)。
Q:ハンギョンさんから見て山下さんとモリの共通点は?
ハンギョン:まずは外見ですね、クールなイメージ。心はぜんぜん違いますよ。山下さんは優しい人ですからね。
ハリウッド直伝アクションに大興奮
Q:マット・デイモンが主演した『ボーン・アイデンティティー』なども手掛けたニコラス・パウエルがアクション監督を担当していますが、印象に残った撮影シーンはありますか?
ハンギョン:物語のなかで自動車がクラッシュする見せ場があるんですが、そのシーンを撮影するチャンスは一度だけだったんです。理想だったのは、車が回転しながらスライドしていくというものだったんですが、実際には空中に浮かび上がってドーンと落ちてしまったので、そこの撮影の迫力は印象に残っています。
山下:道路を何日間も封鎖してのカーアクションを行ったので、その撮影はもちろん、ピストルを使ってのアクションも刺激的でした。あとはマレーシアは雨が多いので足元が非常に滑りやすい状態で、全力で走るということも実際に演技しているので、怪我の危険性と背中合わせの撮影は本当に大変でした。
ハンギョン:山下さんを追いかけるシーンは何度も転びましたね。
Q:撮影はスタントなしだったそうですね。
ハンギョン:僕たちのほうから希望したんです。やはりスタントを使うと、撮れる角度が限られるので、リアルなものを作りたかったので。
Q:今後もまた共演したいですか。
山下:もちろんです。とても貴重な経験をさせてもらいました。
ハンギョン:ぜひ一緒にやりましょう。今後は映画だけでなく、何かコラボできたらいいですね。
取材後記
取材中、ハンギョンは山下の主演作品の話を持ち出すなど、お互いのことに興味津々。初共演ながら深い絆を育んだようだ。そして何より印象的だったのは、2人の細やかな気遣いや心配り。通訳の女性にさりげなく席を譲るなど、身に付いたふるまいが実に紳士的で「さすが」の一言。主役級スターでこその品格に惚れ惚れしてしまった。(取材・文:高山亜紀)
映画『サイバー・ミッション』は公開中
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