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2019年引っ張りだこ!オスカー俳優マハーシャラ・アリに迫る

『グリーンブック』
『グリーンブック』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリ) -(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

 近年、アメリカのテレビドラマからハリウッドへ進出し、大躍進を遂げている俳優たちを多く見かけるようになった。若き日にお茶の間で人気者となったスターたちがスクリーンへと主戦場を移し、大作映画の主要キャストとして名を連ねるという、いわば「大出世」は、もはやハリウッドでも当たり前の出来事として認知されている。そんな「大出世」の道をひた走るのが、俳優マハーシャラ・アリだ。ここでは、先日発表された第91回アカデミー賞で助演男優賞を受賞したマハーシャラの、これまでのキャリアに迫る。(文・構成:zash)

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人種による偏見を経験した少年がハリウッドへ

マハーシャラ・アリ
オスカーを手にしたマハーシャラ・アリ、その過去とは? - Dan MacMedan/Getty Images

 マハーシャラ(本名:マハーシャラルハズバズ・アリ)は、1974年2月16日米カリフォルニア州オークランド生まれ。本名の“マハーシャラルハズバズ”は、旧約聖書より引用されたヘブライ語で、熱心なキリスト教徒である母より名付けられた。幼少期は、地下鉄に乗れば、金品を盗まれると思った乗客から怪しい目つきで睨まれ、周囲から恐れられているように感じたという彼は、バスケットボールの奨学生として大学に進学。恵まれた体格から将来を嘱望される選手であったが、ブロードウェイの舞台に立った経験のある父の影響や、在学中に小さな役で舞台に立ったことから、演技に興味を持ち始める。

 その後、ニューヨーク大学の演技プログラムを修了した彼は、2001年にテレビドラマ「女検死医ジョーダン」で俳優デビューを飾る。彼が演じたトレイ・サンダース博士は準レギュラー的な扱いであり、デビュー作からいきなりの大役を手にしたわけだが、19エピソードにわたって同キャラクターを熱演。その後、「マシュー・フォックス/心霊探偵 ホーンテッド」「NYPD BLUE ~ニューヨーク市警15分署」「CSI:科学捜査班」などの人気ドラマへ次々とゲスト出演を重ねていく。そして2004年、全米期待の新作ドラマのレギュラーキャストに決定し、大きな注目を浴びることになるのだった。

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大ヒットテレビドラマで垣間見えた「カリスマ性と存在感」

「4400 未知からの生還者」
ドラマ「4400 未知からの生還者」でのマハーシャラ(右) - USA Network / Photofest / ゲッティ イメージズ

 2004年放送開始のテレビドラマ「4400 未知からの生還者」は、不思議な超能力を授かり、突如として帰還した4,400人の失踪者たちの謎に迫るSFミステリー。日本から、お笑い芸人のくりぃむしちゅーがエキストラで出演したことでも大きな話題となった作品だ。同作にマハーシャラは、1951年に失踪した元空軍パイロットのリチャード・タイラー役で出演。念動力を授かったことに対する葛藤や、恋に落ちた白人女性との間に生まれた娘の制御しきれない大きな力への苦悩を見事に表現し、物語の前半部分をリードする存在となっていく。家族を愛し、守り抜こうとするその姿は感情移入を誘い、視聴者からの支持も厚かった。その類まれなるカリスマ性と存在感を武器に、着々とステップアップしていったマハーシャラは、テレビだけにとどまらずスクリーンへと活躍の場を広げていく。

話題作や大作映画へ次々と出演!

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
テレビで培った演技力を映画でも発揮!(映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』より) - Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 「4400」への出演を終えたマハーシャラは、2008年にデヴィッド・フィンチャー監督作ベンジャミン・バトン 数奇な人生に出演。彼はベンジャミンを拾い上げるクイニーの夫ティジー役に抜擢され、物語の始まりを象徴するキャラクターを担当。2010年には、大ヒット映画シリーズ3作目となるプレデターズに、ジャングルへと送られた8人のうちの一人・モンバサ役で出演。持ち前の存在感を遺憾なく発揮した。映画界でもその演技を高く評価されたマハーシャラだったが、ここで再びテレビドラマへとカムバックを果たす。

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Netflixオリジナルドラマで見せた貫禄

「ハウス・オブ・カード 野望の階段」
Netflixドラマで新境地を開拓(ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」より) - A-Pix Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

 2013年よりNetflixオリジナルシリーズ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」に出演したマハーシャラは、ここから新たな魅力を開花させていく。同作で彼が演じたのは、大手弁護士事務所の弁護士でありロビイストのレミー・ダントン。キャスティングの妙が目を惹くキャラクターで、まさに打ってつけの役柄だったのが印象深い。

 続く「Marvel ルーク・ケイジ」では、シーズン1序盤の悪役コーネル・“コットンマウス”・ストークスを好演。極悪非道な手段で主人公を追い詰めるその姿は、貫禄すら漂わせる。内に秘めた狂気も滲ませた表情が魅力的なマハーシャラ。ドラマ中盤での突然のフェードアウトは、残念がるファンも多かったという。Netflix配信の2作品で落ち着きはらった雰囲気の中に、凶暴性を潜ませた演技を多く見せた彼は、2016年、ついに俳優としての最高の栄誉を手にすることになる。

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『ムーンライト』で快挙達成!

『ムーンライト』
『ムーンライト』で見事オスカー受賞! - A24 / Photofest / ゲッティ イメージズ

 長きにわたり俳優としてのキャリアを積み上げてきたマハーシャラは、2016年に一つの節目を迎える。一人の少年が成長し、大人になっていく姿を活写した映画『ムーンライトで、マハーシャラは主人公の人生に大きな影響を与えるドラッグディーラーのフアンを演じ、見事、第89回アカデミー賞で助演男優賞を受賞。わずかな登場時間にもかかわらず、これほどまでに高く評価された背景には、やはり彼の醸し出す人間味あふれる優しげな雰囲気が、作品をより深いものにしているからであろう。短時間ながらも決して欠くことのできない唯一無二の存在が、マハーシャラふんするフアンなのだ。黒人俳優としては12年ぶりとなる助演男優賞受賞、ムスリム俳優(マハーシャラはイスラム教に改宗している)としては史上初のオスカー獲得となり、多様性が求められるハリウッドにおいて新たな時代の幕開けを飾ったと言っても過言ではない。

2019年も引っ張りだこ!

『グリーンブック』
新作『グリーンブック』では天才ピアニストを演じたマハーシャラ(左) -(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

 そんなマハーシャラは、2019年も飛ぶ鳥を落とす勢いだ。まずは第91回アカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』(公開中)。1962年、人種差別が色濃く残るアメリカを舞台に、黒人の天才ピアニストとイタリア人用心棒の心温まる旅路を描いた同作で、マハーシャラは物静かなピアニストのドクター・ドナルド・シャーリーを演じている。過去の出演作とは印象の異なる‘‘静’‘の演技が高く評価されており、ゴールデン・グローブ賞を筆頭に、第91回アカデミー賞でも助演男優賞を受賞。1989年『グローリー』で助演男優賞、2001年『トレーニング デイ』で主演男優賞の計2回オスカーを獲得している名優デンゼル・ワシントン以来となる、黒人俳優が2度目のオスカー受賞という快挙も成し遂げた。

 他にも、木城ゆきとのSF漫画が原作のアリータ:バトル・エンジェル(公開中)では、主人公アリータの破壊を目論む悪役ベクターを演じているほか、新作アニメーション映画スパイダーマン:スパイダーバース(3月8日全国公開)でも声優を担当。さらには、2015年以来の復活を果たしたテレビドラマ「TRUE DETECTIVE」シーズン3で主演を務めている。主人公の年齢を重ねることによる感情の変化を体現した、緩急自在の演技を披露している。

 重厚な演技とカリスマ性に満ちた存在感で観る者を圧倒する、マハーシャラ・アリ。幼き日には差別的な視線を浴びることが多かった彼は、今やオスカー俳優となり、周囲の態度も激変したという。ここ数年における怒涛の活躍ぶりには目を見張るものがあり、今後も善人から悪人まで幅広い表情を見せる彼の勢いは増すばかりであろう。

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