東日本大震災、復興への道─映画で観るそれぞれの思い
2011年3月11日の東日本大震災から8年が過ぎようとしていますが、被災地では震災以来、普通の暮らしを取り戻すため多くの方々の献身的な努力が今なお続いています。そんな復旧・復興へ向けた取り組みや人々の生活などを3.11にまつわる映画で振り返ってみます。
繰り返し津波が襲う地で継承されてきた神楽
『廻り神楽』(公開中)
東日本大震災で被災した岩手県の三陸海岸で継承されてきた黒森神楽の軌跡を追ったドキュメンタリー。国の重要無形民俗文化財である神楽のありのままの姿を映し出す。ドキュメンタリー映画をはじめ人類学や民俗学の映像を手掛ける大澤未来と、ドキュメンタリー映画の企画・制作・配給などをしてきた遠藤協が共同で監督を務めた。
原発事故で被災した人々のありのままの声
『福島は語る』(公開中)
『飯舘村 放射能と帰村』などの土井敏邦が監督を担当し、福島第一原子力発電所事故の被災者たちに迫るドキュメンタリー。100人以上の証言者の中から、母親や農業従事者、仮設住宅で暮らす人々などが思いの丈を口にする。
都会の青年は福島で何を見たのか…
『ハッピーアイランド』(公開中)
東日本大震災後の福島県で農業を営む人々の姿を、福島県出身の渡邉裕也監督が描くヒューマンドラマ。渡邉監督の祖父の姿をヒントに、福島の農家で働き始めた都会の青年が成長していく姿を映し出す。『太陽を掴め』などの吉村界人が主演を務め、『女の子ものがたり』などの大後寿々花や、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』などの萩原聖人らが脇を固める。
ふるさとの唄にまつわる新たな希望
『盆唄』(公開中)
東日本大震災から4年がたち福島県双葉町で避難生活を過ごさなければならない人々が伝統の「盆唄」消滅の危機に奮闘する、唄や音楽に迫ったドキュメンタリー。かつてハワイに移住した人々に福島の盆踊りが継承されていることを知った双葉の人々が、盆唄を披露するため、マウイ島に出向く。『ナビィの恋』などの中江裕司が監督を務め、アニメパートの声を余貴美子、柄本明、村上淳、和田聰宏らが担当している。
原発推進と脱原発に揺れる町の声
『彼らの原発』(公開中)
福島第一原子力発電所事故の後、注目を浴びた大飯発電所がある町にカメラを向けたドキュメンタリー。町で生活する漁師や旅館の主、美容室を経営する女性など住民たちの声を拾い上げる。製作・監督・撮影・編集を手掛けるのは、フリーの映像ディレクターとして活動している川口勉。
命残されたものとして、自分たちで明日を作る
『Workers 被災地に起つ』(公開中)
東日本大震災の被災地・岩手県と宮城県での日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)の取り組みを取材したドキュメンタリー。2016年から2017年にかけて行われた、誰もが集える町の拠点作りや、地域の魅力を生かした村の復興のための活動に密着する。監督を、『ワーカーズ』で協同労働を取り上げ、『種まきうさぎ フクシマに向き合う青春』では震災後の福島県の高校生朗読グループを取材した森康行が務める。ナレーションは元NHKアナウンサーの山根基世。
震災後の社会で日常を送る恋人たちのドラマ
『寝ても覚めても』
第32回野間文芸新人賞に輝いた柴崎友香の小説を映画化したラブストーリー。突然行方をくらました恋人を忘れられずにいる女性が、彼とうり二つの男性と出会って揺れ動くさまを追う。メガホンを取るのは『ハッピーアワー』などの濱口竜介。主演を『聖の青春』などの東出昌大、ヒロインをテレビドラマ「ブランケット・キャッツ」などの唐田えりかが務める。ヒロインが惹(ひ)かれる二人の男性を東出が一人二役で演じる。
東日本大震災後に「何ができるか……」と考え実践
『ピース・ニッポン』
国内の200か所を超える場所で撮影された日本の姿を追うドキュメンタリー。日本人の自然観に迫る「日本人の精神」、季節の変化を描く「日本の四季」、絶景を集めた「一期一会の旅」で構成され、全国津々浦々の稀少な風景を映し出す。『TAJOMARU』などの中野裕之が監督を務め、小泉今日子と東出昌大がナビゲーターを担当した。
手探りで前進しようとする人々の姿を追った
岩手県、宮城県、福島県を舞台に、東日本大震災を経て手探りで前進しようとする人々の姿を追ったドキュメンタリー。家族を亡くした夫婦をはじめ、語り部として震災を語る者、伝統を守り抜こうとする農家などそれぞれの復興の形をカメラが映し出す。『サンマとカタール 女川つながる人々』などに携わってきた尹美亜が、初監督を務め、藤原紀香、山寺宏一がナレーションを担当。
癒えない傷を抱えた家族の再生を描くドラマ
『生きる街』
2011年の東日本大震災をテーマにしたヒューマンドラマ。震災後すれ違う家族が、韓国人青年との再会を機に変化していく。メガホンを取るのは、『捨てがたき人々』『アリーキャット』などで監督としても活躍する俳優の榊英雄。数多くの出演作を持つ夏木マリ、ロックバンド「CNBLUE」のギター&ボーカル担当のイ・ジョンヒョンらが出演。
すれ違い、もがきながらも復興に向けたドキュメンタリー
『願いと揺らぎ』
東日本大震災で甚大な被害を受けた、宮城県の漁村・波伝谷にカメラを向けた『波伝谷に生きる人びと』の続編となるドキュメンタリー。震災から1年が過ぎ、地域の伝統行事復活を通して住民たちが復興への道を探る姿に密着する。大学時代から同地の民俗調査に携わってきた我妻和樹が、前作に引き続き監督を務める。
震災後に考えさせられたエネルギー事業
『おだやかな革命』
福島原発事故後のエネルギー自治による地域再生の取り組みを追う。太陽光電力などにより売電しながら農地を守るという飯舘村での事業や、人口減少に直面しながら森の間伐材の活用で注目される岡山県の西粟倉村の活動などを映すドキュメンタリー映画。『よみがえりのレシピ』などの渡辺智史監督が、本当の豊かさを取り戻していく地域の姿を描く。地域資源を生かすことで地元経済が循環し、活気を取り戻していく土地の様子が映し出される。
未来への希望を胸に今日を生きる…
『星めぐりの町』
数々の映画やテレビドラマで活躍してきたベテラン俳優・小林稔侍が映画初主演を果たしたヒューマンドラマ。豆腐屋を営む男が、震災で家族をなくした少年を見守る姿を映す。メガホンを取るのは『蝉しぐれ』などの黒土三男。『甘い鞭』などの壇蜜、『学校II』などの神戸浩をはじめ、ベテランの六平直政、平田満、高島礼子らが共演する。