カンヌ受賞作から賛否両論の衝撃作まで!日本劇場未公開作を発掘
今週のクローズアップ
気になる作品が知らない間にDVDスルーや配信スルーになっていた! なんて経験は、映画好きなら覚えがあると思います。そんなスルー作品のなかには、カンヌ受賞作や賛否両論の嵐を呼んだ衝撃作も。今週のクローズアップでは、2018年に日本で劇場未公開となってしまった作品を発掘します!(編集部・吉田唯)
プーさんの誕生秘話!『グッバイ・クリストファー・ロビン』
昨年ディズニーの『プーと大人になった僕』がヒットを飛ばした裏で“スルー”となった本作。『プーと大人になった僕』ではA・A・ミルンによる世界的ベストセラーから誕生した人気キャラクターのプーさんと、大人になった親友クリストファー・ロビンが再会し、忘れかけていた大切なものを取り戻す姿が描かれたのに対し、『グッバイ・クリストファー・ロビン』はミルン自身に迫った伝記映画です。
息子のクリストファー・ロビンとの日々から着想を得たプーさんの誕生秘話……これだけ聞くとよくある感動ストーリーを思い浮かべてしまいそうですが、本作の魅力はプーさんのイメージとはかけ離れた“ほろ苦さ”。戦争という暗い時代の影が差すなか、本の大ヒットによって普通の暮らしができなくなり、家族が次第に崩壊していくさまが切ないタッチで描かれます。
ミルンを演じたのは、ウサギと壮絶バトルを繰り広げた『ピーターラビット』や、コメディータッチな芝居で愛された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』などのドーナル・グリーソン。本作のミルンは繊細な芝居が求められる役柄ですが、『FRANK -フランク-』などでそうした演技力を証明済みのドーナルは、戦争の後遺症でPTSDに悩む不器用で感受性豊かな主人公を丁寧に演じあげています。
『グッバイ・クリストファー・ロビン』はブルーレイ&DVD発売・レンタル中
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伝説のカルト映画の製作舞台裏!『ディザスター・アーティスト』
「史上最高の駄作」「駄作界の市民ケーン」と酷評された伝説のカルト映画『ザ・ルーム(原題) / The Room』(2003)。『ディザスター・アーティスト』は、その不出来さゆえに人気を高めた同作の製作過程に迫ったコメディーです。
『ザ・ルーム(原題)』で監督・主演・脚本を務めたトミー・ウィソーは、独特な風貌とそれに負けないエキセントリックな言動の持ち主で、年齢も莫大な資金源も出身地もベールに包まれた謎多きアーティスト。そんな彼が友人とともに映画製作に取り掛かるのですが、制作プランも知識もないトミーに指揮が執れるはずもなく、撮影現場は地獄絵図となっていきます。ほんのわずかなセリフさえ覚えられず、脚本はハチャメチャ、ロケで撮影できるシーンなのにわざわざまったく同じ風景のセットを作るなど、トミーの奇想天外な言動に迷惑を被るスタッフには同情せざるを得ません。それでもトミーを憎めないのは、彼が映画への情熱にあふれ、夢に向かってひたむきに進んでいくから。作品全体を通してにじみ出る映画愛とパッションは、涙さえ誘います。
そんなハリウッドの異端児を、監督も務めたジェームズ・フランコが演じており、エンドロールでは実際のトミーとジェームズの比較映像が流れる一幕も。いったいジェームズは何度『ザ・ルーム(原題)』を観たんだろう……と思わずにはいられないくらいの完全再現ぶりで、第75回ゴールデン・グローブ賞では主演男優賞(コメディー/ミュージカル部門)に輝いたのですが、その後ジェームズのセクハラ疑惑が持ち上がり、有力視されていたアカデミー賞主演男優賞にはノミネートすらされないという結果に。日本では劇場公開されず、昨年DVD&配信スルーとなりました。
『ディザスター・アーティスト』はDVDレンタル中
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カンヌで審査員賞に輝いたロードムービー!『アメリカン・ハニー』
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』を彷彿させるような、アメリカの貧困層のリアルをカンヌ常連監督アンドレア・アーノルドが活写したロードムービー。第69回カンヌ国際映画祭で審査員賞に輝いた本作の日本公開を首を長くして待っていた映画ファンも多かったのですが、残念ながら劇場公開はかなわず。昨年3月に Amazon Prime Video で配信されたことで日本でも観ることが可能となりました。
主人公は、問題だらけの家庭を捨て、雑誌購読の訪問勧誘をする若者集団に加わって小さなバンでアメリカ中西部を旅する少女スター。リアーナの曲がかかればノリノリになり、欲しいと思えば他人の飼い犬を誘拐し、雑誌を売るためなら可哀想な身の上話をねつ造する……そんな無軌道な若者たちのなかで、スターは恋と成長を知ることになります。
厳しい環境にあっても汚れ切らない、スターの純真な瞳が印象的な作品ですが、スター役のサッシャ・レインはなんと本作が映画デビューの新星。その抜群の存在感が注目され、クロエ・グレース・モレッツが同性愛者の高校生を演じた『ミスエデュケーション』(2018)やリブート版『ヘルボーイ(原題) / Hellboy』(2019年4月全米公開予定)に出演するなど、ライジングスターとして視線を集めています。(ちなみに『ミスエデュケーション』も日本劇場未公開で現在DVDで観ることが可能です)
『アメリカン・ハニー』は Amazon Prime Video で配信中
スカヨハ出演はっちゃけコメディー!『ラフ・ナイト 史上最悪!?の独身さよならパーティー』
スカーレット・ヨハンソンやケイト・マッキノンといった豪華女優陣が集結した本作も、昨年スルーに。人気女優陣がはっちゃけたコメディー演技を披露する、女性版『ハングオーバー!』ともいえる作品です。
学生時代の女友達とともに、独身最後のバチェロレッテパーティーのためマイアミへと向かった結婚間近のジェス(スカーレット)。飲んで踊っての大騒ぎを夜の街で繰り広げ、借りた別荘でもうひと騒ぎしようとしていたところ、呼び出した男性ストリッパーが思いがけない事故で死亡。仲間たちとともに死体の隠ぺいに奔走することになります。
一流スターになったスカーレットが下ネタ満載のコメディーに大真面目に取り組むギャップはもちろん、ジリアン・ベルのパワフルな存在感など、キャストそれぞれのカラーが際立った作品となっており、なかでも『ゴーストバスターズ』(2016)の強烈キャラが記憶に新しいケイトの顔や体を張ったなんでもござれなコメディエンヌっぷりが最高! 思いもよらない役柄で登場するデミ・ムーアの豪華すぎる無駄遣い(?)も注目ポイントです。
『ラフ・ナイト 史上最悪!?の独身さよならパーティー』はDVD発売・レンタル中
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崖っぷち教師の実話!『マクファーランド 栄光への疾走』
ケヴィン・コスナーが主演を務めた本作は、陸上経験のないコーチとその生徒たちの実話を基にした物語。ディズニー製作らしいウェルメイドな感動作で全米でもヒットを飛ばしましたが、日本では昨年ソフト&配信でお披露目される形となりました。
ケヴィンが演じたのは、高校でフットボールのコーチとして働くジム・ホワイト。問題を起こしてばかりで転任先がどこも見つからなかった“崖っぷち教師”のジムは、唯一受け入れてくれたカリフォルニア州マクファーランドの高校に転任することになります。そこで日々の農作業や通学で培われたすばらしい疾走力を持つ生徒たちに出会ったジムは、クロスカントリー部を立ち上げ、彼らとともに勝利を目指して奮闘します。
ジムと生徒たちがさまざまな問題に直面しながら、そのたびにチームの絆を深めていくスポーツ青春映画としてはもちろん、よそ者のホワイト一家がヒスパニック系住民が多く住むマクファーランドのコミュニティーに次第に溶け込んでいくさまを描いた異文化交流映画としても楽しめる本作。コミュニティーを彩る生徒の親や近所の人々も個性豊かなキャラクターがそろい、彼らとの絆とそこに根付く貧困のリアルが優しい眼差しで紡ぎ出されています。
『マクファーランド 栄光への疾走』はDVD発売・レンタル中
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賛否両論の衝撃作!『マザー!』
オスカー女優ジェニファー・ローレンスが、『ブラック・スワン』などのダーレン・アロノフスキー監督とタッグを組んだスリラー。一時は日本公開も予定されていましたが、米パラマウント・ピクチャーズの意向で日本公開中止になり、昨年ブルーレイ&DVDの発売・レンタル開始でようやく日本に上陸しました。
物語は、郊外にある一軒家で暮らす夫婦のもとに次々と謎の訪問者が現れることから始まります。妊婦の妻(ジェニファー)が、快く客人を招き入れる夫(ハビエル・バルデム)に不安を募らせるなか、彼らの行動は次第にエスカレート。思いもよらない事態に発展するさまが、ジェットコースターのように目まぐるしく描かれます。
次々と繰り広げられる常軌を逸した展開は、まさにカオスの一言。そのカオスを楽しめるかどうかが賛否の分かれ目となっており、第74回ベネチア国際映画祭でお披露目された際には喝采とブーイングが入り交じる事態に。さらには、第38回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)に最低女優賞、最低助演男優賞、最低監督賞でノミネートを果たすなど、物議を醸して話題となった作品です。
『マザー!』はブルーレイ&DVD発売・レンタル中
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