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間違いなしの神配信映画『ノーマル・ハート』Amazon Prime Video

神配信映画

注目の監督編 連載第4回(全6回)

 ここ最近ネット配信映画に名作が増えてきた。NetflixやAmazonなどのオリジナルを含め、劇場未公開映画でネット視聴できるハズレなしの鉄板映画を紹介する。今回は全6作品、毎日1作品のレビューをお送りする。

HIV流行の黎明期のNYを舞台にゲイコミュニティーの奮闘を描く

ノーマル・ハート
『ノーマル・ハート』より - (C)HBO / photofest / ゲッティ イメージズ

『ノーマル・ハート』Amazon Prime Video

上映時間:132分

監督:ライアン・マーフィー

キャスト:マーク・ラファロマット・ボマーテイラー・キッチュ

 ハリウッドで、多様性あるいはインクルージョンの意識が急速に高まりつつあるのは先日の第91回アカデミー賞の結果からも明らかだ。候補作の多くが、何らかの形で人種やLGBTQなどマイノリティーに光をあてる内容だった。さかのぼること5年前の2014年、「glee/グリー」や「アメリカン・クライム・ストーリー」シリーズなどで知られるライアン・マーフィー監督がHBOで撮った「ノーマル・ハート」は、当時未知の病だったエイズの危機に直面した1980年代前半のニューヨークのゲイ・コミュニティーを描いている。

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ノーマル・ハート
『ノーマル・ハート』より - (C)HBO / photofest / ゲッティ イメージズ

 脚本家ラリー・クレイマーが1985年に発表し、トニー賞にも輝いた自伝的内容の舞台「ノーマル・ハート」の映像化だ。物語は同性愛の男性たちの間に謎の伝染病が広がりはじめた1981年から始まる。自身もゲイであるジャーナリストのネッドはエイズ(AIDS/後天性免疫不全症候群)治療に当たる病院を訪ね、担当の女性医師エマに取材する。患者の致死率の高さから研究は急務のはずが、同性愛への偏見や差別もあって医療の現場や自治体の反応は鈍い。そんな中でネッドは協力を求めてニューヨーク・タイムズ紙の記者フェリックスを訪ね、それが縁で2人はパートナーになる。

ノーマル・ハート
『ノーマル・ハート』より - (C)HBO / photofest / ゲッティ イメージズ

 ネッドはGMHC(ゲイメンズ・ヘルス・クライシス)を設立し、仲間たちと啓蒙運動に従事するが、事態は少しも好転しない。エイズがゲイ・キャンサー(ゲイのガン)と呼ばれ、多くの人間が他人事として無関心だった時代に、実は誰もが罹患(りかん)する危機があることを社会に広めようと、顔も名前もさらし、過激な言動を繰り返すネッドは仲間からも疎まれ、やがてGMHCから追い出される。自分と同じ勇気を持てない者を理解せずに突っ走る人望のなさは、確かにリーダーには不適格だが、手をこまねいてはいられない彼のいら立ちは理解できる。孤立を深めながらも、ネッドはエイズを発症して衰弱していくフェリックスを献身的に看護しながら、沈黙することなく活動を続ける。

 自身がゲイであることを公表しているマーフィーの演出は、クレイマーが作品に込めた感情一つ一つを確かにつかみ、当事者のヒリヒリした焦燥感、絶望の縁に立った心境を掘り下げ、リアルに描き出す

ノーマル・ハート
『ノーマル・ハート』より - (C)HBO / photofest / ゲッティ イメージズ

 キャストにはマーク・ラファロ、マット・ボマー、ジュリア・ロバーツと豪華な顔ぶれが揃う。劇中に名前が出てくるイギリスの学者アラン・チューリングを描いた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)などゲイが主役の名作は少なくないが、ハリウッドでは大半がヘテロ(異性愛者)の俳優によって演じられてきた。本作もネッド役のラファロはゲイではないが、ボマーやジム・パーソンズといったゲイを公表している俳優たちが出演。パーソンズも出演し、トニー賞を受賞した2011年の舞台で、ネッドを演じたジョー・マンテロらの真摯な演技は胸を打つ

 クレイマー自身をモデルにしたネッドを演じたラファロは愛する者を失う恐怖と対峙(たいじ)しながら戦い続ける男を熱演し、全米映画俳優組合賞(SAG賞)テレビ映画/ミニシリーズ部門主演男優賞を受賞、大幅に減量し、フェリックスの壮絶な闘病生活を演じたボマーはゴールデングローブ賞テレビ部門 で助演男優賞を受賞した。少女時代にポリオ(急性灰白髄炎)を患って車椅子生活となったエマを演じるのはマーフィー監督の『食べて、祈って、恋をして』(2010)に主演したジュリア・ロバーツ。エイズ研究の必要性を政府に訴え続ける医師を力強く演じている。エイズが死に至る病ではなくなった今、疎まれながらも決して屈せず闘い続けたネッドとエマの姿は、声を上げ続けることの大切さを切実に伝えている。(文・冨永由紀)

Amazon Prime Video『ノーマル・ハート』デジタル配信中

#間違いなしの神配信映画

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