狂気のカリスマ!歴代ジョーカー比較
今週のクローズアップ
バットマンの宿敵ジョーカーの誕生を描くDC映画『ジョーカー』がベネチア国際映画祭やトロント国際映画祭に選出され、映画祭ディレクターたちから「オスカー間違いなし」「ホアキン・フェニックス史上最高の演技」といった手放しの賛辞を受けて話題になっています。そこで今回のクローズアップでは、これまでも名だたる名優たちが演じてきた実写映画版ジョーカーをピックアップ! それぞれの特徴を比較してみました。(編集部・市川遥)
陽気で狂気!ジャック・ニコルソン版ジョーカー
ティム・バートン監督作『バットマン』(1989)でジョーカーにふんしたのは、『カッコーの巣の上で』など3度のアカデミー賞に輝く名優ジャック・ニコルソンです。本作におけるジョーカーの本名はジャック・ネーピア。マフィアのナンバー2だった彼が女絡みでボスの不興を買い、銃撃戦の末に化学工場の薬品槽に落ちて肌は真っ白&顔の神経も全部やられ、闇医者の手で“常に笑った顔”のジョーカーへと変貌する姿が描かれます。
ジャック・ネーピア時代も相当な悪でしたが、薄汚れた病院で顔の包帯を取り、その顔を初めて見て高笑いするシーンはまさにサイコ。紫のスーツにオレンジシャツと派手すぎる衣装に、愉快な音楽に合わせて踊りながら登場するなどコミカルな印象が強いですが、ジョークで人の顔に酸をかけたりとやっていることはかなり凄惨で、陽気と狂気のバランスが絶妙に彼の恐ろしさを際立てます。ニコルソンは「薬品槽に落ちて違う人格が出てきたわけだから、精神が不安定なキャラクターを演じた」と振り返り、バートン監督は「完璧以上。まさにジョーカーそのものだった」と絶賛で、ニコルソンの演技を見たいがためにテイクを重ねたと明かしています。
得体の知れない狂気!ヒース・レジャー版ジョーカー
クリストファー・ノーラン監督作『ダークナイト』(2008)でジョーカーを演じたヒース・レジャーさんは、撮影終了後の2008年1月22日に処方薬の過剰摂取で死去。28歳の若さでした。生前には、狂気を人の形にしたようなジョーカー役にのめり込むあまり、体は疲れ切っているのに考えることをやめられず、1日2時間ほどしか眠れないと打ち明けたことも。ホテルに引きこもって誰にも会わず、ジョーカーのアイコニックな笑い声から理解不能な大量殺人鬼の内面まで突き詰めたことも原因といえるかもしれません。
ヒースさん版ジョーカーの特徴は、何と言ってもその得体の知れなさ。本名もどこから来たのかも不明で、なぜ口が裂けているのかという理由も「酔った父親に切り裂かれた」「妻のために自分で切り裂いた」と説明するたびにバラバラ。脅しも交渉も通じず、“ただ世界が燃えるのを見たい”という純然たる狂気の体現は、アメコミ映画に対する世間の見方を大きく変え、ヒースさんはこの演技で第81回アカデミー賞助演男優賞を死後受賞することになりました。
セクシーな狂気!ジャレッド・レトー版ジョーカー
デヴィッド・エアー監督作『スーサイド・スクワッド』(2016)でジョーカーにふんしたのは、『ダラス・バイヤーズクラブ』のオスカー俳優ジャレッド・レトー。ジャレッド自ら「僕のジョーカーにはどこかセクシーなところがあると思う」と語るように、恋人ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)との病んだ愛も描かれるとあって、ジャレッド版ジョーカーは狂っていながらも超セクシー。肌は漂白されたように白いですが口は裂けておらず、鮮やかな緑の髪をオールバックにし、顔も体もタトゥーだらけ。素肌にジャケットを羽織ってネックレスをじゃらじゃら下げるなど、今時のお兄ちゃん的でもあります。
ジャレッドも周囲との連絡を完全に絶って徹底した役づくりを行い、撮影中は常にジョーカーに成り切っていて、共演者たちにネズミや死んだ豚、使用済みコンドームといった奇妙な品々を送りつけるという奇行も。ジャレッドは「ジョーカーは、自分がハーレイを“こっちの世界”に連れて来たと思っている。ハーレイを創造したのは自分なんだってね」とジョーカーの心理を説明しており、確かに彼の狂気はハーレイを通じても感じることができます。
そしてトッド・フィリップス監督と3度のアカデミー賞男優賞ノミネート歴を誇るホアキン・フェニックスが主演を務めた『ジョーカー』は10月4日より日本公開。社会から軽視されてきた貧しいコメディアンのアーサー・フレックを主人公に、コミックからは離れて「ジョーカーのような人間はどのようにして生まれるのか」を暴力的かつダークに描いているといい、ホアキンが新たな解釈のジョーカーをどう演じているのか、公開が待ち切れません。