夢見る少女が飛躍的に成長サンサ・スターク～美しき戦略家

　Entertainment Weekly 誌3月15日号の表紙は、なんと「ゲーム・オブ・スローンズ」のキャラクターで16種類を発行!!　いよいよ4月15日の最終シーズン放送開始が近づいて、周囲も盛り上がってきた。今回は、過酷な運命と戦うサンサ・スタークをクローズアップ！　シリーズ一番の成長株は彼女かも!?（平沢薫）

※ご注意　なおこのコンテンツは「ゲーム・オブ・スローンズ」について、ネタバレが含まれる内容となります。ご注意ください。

ゲーム・オブ・スローンズの魅力　連載：第8回

サンサは自分の生存戦略を自覚してその技術に磨きをかけていく

　このシリーズで、ドラゴンの女王デナーリス（エミリア・クラーク）と同じくらい成長幅が大きいのが、スターク家の長女サンサ（ソフィー・ターナー）。彼女の“本心を隠し、状況に適応して生き延びる”という生存戦略は、万人に肯定されるものではないかもしれないが、彼女が置かれた状況で効果的だったことは間違いない。その証拠に、父や兄弟は死ぬが彼女は生き延び、次第に権力を持つようになっている。

　ちなみに、ティリオン（ピーター・ディンクレイジ）は最初から彼女のそんな資質を見破っている。シーズン2で、ティリオンが甥である王ジョフリー（ジャック・グリーソン）の残虐な行動を見かねて、サンサにジョフリーとの婚約を解消したいか尋ねたとき、サンサは本心を隠して「わたしは王に忠実です」と答える。その表情を見たティリオンは「君は生き残れるかもしれないな」と言うのだ。

　サンサはこのような“その場で求められていることを言う技術”を磨いていくが、それも、それを求められる状況が、次々に出現したからだ。まず、王都への旅の途中で、当時は王子だったジョフリーが妹アリア（メイジー・ウィリアムズ）の友人を殺し、その証言を求められたとき。サンサは何も見ていなかったと証言する。そして、王都では父を殺されて「わたしは王に忠実です」と言うしかなくなる。

　王都から脱出した後は、自分を助けたピーター・ベイリッシュ公（エイダン・ギレン）が妻となったライサ・アリン（ケイト・ディッキー）を殺すのを目撃するが、諸侯に証言を求められて、ライサは自殺だったという嘘を涙ながらに語って周囲を納得させる。と、同時に自分の本当の身分を明かして、保身を固める。実はサンサは、自分の得意な技を自覚し、その技術を磨いていくことができる、知性と度胸の持ち主なのだ。

自分の得意技が通用しない相手に出会ってさらに強くなる

　しかし、その技術がまったく役に立たなかったのが、ルース・ボルトン公（マイケル・マケルハットン）の私生児ラムジー・ボルトン（イワン・リオン）との結婚生活。サンサは、ベイリッシュの策略に乗せられて、彼女の故郷ウィンターフェルの城主となったラムジーと政略結婚をするが、ラムジーはサディストで、同じ趣味の愛人がいて、サンサは後継ぎを生ませるための道具でしかない。サンサはここで、自分の技術が効力を発揮しない世界もあることを痛感したのに違いない。そして、精神力もかなり鍛えられたのだろう、ここから脱出してからのサンサは、一皮むけたような強さを発揮するようになる。

　ジョン・スノウ（キット・ハリントン）と合流し、ウィンターフェルをラムジーの軍勢から奪い返した彼女は、まず、ラムジーに逆襲する。それも彼の飼っている犬たちに生きたまま食わせるという、残虐な方法で。そして、ベイリッシュへの対応も変わる。本心では、ベイリッシュがラムジーの性癖を知りながら自分と結婚させたことに怒りを覚えているが、彼の協力が必要な場面では、本心を隠して協力を仰ぐ。しかし、ベイリッシュが自分と妹アリアを仲違いさせようとしても、その陰謀を見抜く。そして、過去の悪行を暴いて、彼を処刑するのだ。

そうして手に入れた強さが逆に彼女の弱点になっているかも？

　だが皮肉なことに、この強さが、今のサンサの弱点になってしまっているかもしれない。彼女は、諸侯たちの前でも、ジョン・スノウへの反対意見を言うようになっている。ジョンは、サンサのこの行動はみんなをまとめるためには逆効果だと考えて、後からサンサに「みんなの前で俺の決断に口を挟むな」と注意するが、サンサはこう答えるのだ。

　「父より賢くならないと。兄ロブよりもね。2人とも愚かな間違いをして、命を奪われた」

　このサンサの意見は、まったく正しい。ジョンが今でも「父ならこうした」と言ってばかりいるのは、確かに心配だ。しかし、サンサがジョンにこう言う時、彼女は心の中で、苦労していろいろ学んできた自分の方がジョンより賢い、自分なら父や兄のような間違いはしない、と思っているのではないか。そんな気もしてしまうのだ。

　今やサンサはウィンターフェルの女領主になっている。ひょっとして、サンサはジョンと対立するようになってしまうのか？　今後のサンサがどう動くのか、まだまだ安心はできない。

気になるサブキャラその1：剣が大好きな少女が無敵の暗殺者に、アリア・スターク

　シーズン7最終話時点のアリアは、もはや敵なし。スターク家の姉妹はどちらも、シーズン1に比べて見違えるほどの強さを手に入れたが、2人はかなり異なる道を歩んで、別のタイプの強さを手に入れた。しかし、2人とも最初から持っていた資質に磨きをかけたという点では同じ。

　最初から裁縫よりも武術が好きだったアリアは、男装して生き延びる。暗殺の名手に出会い、彼のいる“顔のない男たち”の館で特殊な体験をして、武術的にも精神的にも徹底的に強くなる。今や兄と母の仇を一族丸ごと殺すこともできる。姉のサンサとは今も性格は正反対だが、彼女の意見にも耳を傾け、協力してベイリッシュの陰謀を砕く。それほど精神的にも成長を遂げている。

　とはいえ、彼女はまだ“殺したい人リスト”を忘れていない。彼女の内部には、父を殺されて逃亡したばかりの頃の、夜も眠れずに“殺したい人たち”の名前を何度も数えていたあの少女がまだ生きている。この少女はきっともう一度、大暴れをする。そんな気がしてならない。

気になるサブキャラその2：シリーズ1のヘタレ男は、ここからが正念場、シオン・グレイジョイ

　卑怯で非力なこのシリーズきってのヘタレ男が、シオン（アルフィー・アレン）。なのだが、たま～に勇気を出して何かやったりするので、その行動を気にしないではいられない。幼い頃からスターク家に人質として預けられたものの差別されずに育ったのに、シーズン1から落とし子のジョン・スノウを目下の者扱いしていた卑小な性格の持ち主。スターク家を裏切るが、敵に拷問され去勢され、ますます弱虫に。そのヘタレぶりは、姉ヤーラ（ジェマ・ウィーラン）が救出に来ても、逃げるのを拒否するほど。やっとサンサの逃亡を手伝ったことから故郷に帰り、姉に協力して彼女を王にしようとするが、ここでも叔父ユーロン（ピルー・アスベック）に妨害されてしまう。

　この男勝りの姉ヤーラとの関係には、思わず胸が熱くなるエピソードがある。シオンは実父にも同郷の者たちにも軽んじられているが、唯一、姉だけが彼を見捨てない。その理由はヤーラいわく、「泣いてばかりいる赤ん坊だったが、うるさいから首を絞めてやろうかとのぞき込んだら、わたしの顔を見て笑ったんだ」。ヤーラはこの瞬間のことだけで、弟を愛し続けている。グレイジョイ姉弟は、あの冷酷な父の元、そこまで人の暖かさを知らずに育ったのかと思うと胸が痛い。

　シーズン7のラストで、シオンはついに叔父に誘拐されたヤーラを助けるために立ち上がったが、果たして彼女を救えるのか。ここからがシオンの正念場だ。

「ゲーム・オブ・スローンズ　最終章」はBS10スターチャンネルにて4月15日より＜世界同時放送＞

「ゲーム・オブ・スローンズ」は、スターチャンネルオンデマンド、Hulu、Amazonプライム・ビデオなどで視聴可能