コンプライアンスや好感度は気にしない!『麻雀放浪記2020』インタビュー
斎藤工と白石和彌監督に、全編iPhoneで撮ったという映画『麻雀放浪記2020』について直撃! どんな作品なのかかなり楽しみにしていたところ、届いた試写状にはまさかの日程が書いておらず、これってどういうことですか? 映画を全く観ずに憶測だけでインタビューなんてヤバすぎ! 想像の斜め上から返答が降ってくる、カオスすぎるインタビューをお楽しみください。(取材・文:森田真帆 写真:日吉永遠)
斎藤工は全編ほぼふんどし姿?の衝撃!
Q:和田誠監督の『麻雀放浪記』とは関係はあるのでしょうか?
白石和彌監督(以下、監督):ほとんどないんですけど、『麻雀放浪記』で加賀まりこがやる積み込みのシーンはベッキーが完璧に真似していますね。何回もやり直したいと言っていて多分14回くらい回したと思います。
斎藤工(以下、斎藤):ベッキーさん、すごく振り切った芝居をしていて、めちゃくちゃいいんです。
監督:すごくよかった! 和田版の加賀まりこと本当に同じだから! だから和田監督版も観ておいたほうが「あそこのシーンはこうなったか!」って分かるので、より楽しめるとは思います。とは言え、全然違うから(笑)。爆笑ですよ。爆笑だけど、斎藤工は笑わせる芝居を全くしていないんです。すごいシリアスにカッコよくやっている分、よけいに笑えます。
Q:一体どんな映画になっているんですか!? 全く想像がつきません!
監督:多分、たくさん麻雀を打っているイメージがあると思うんですが、主人公の坊や哲があまりにも大変なことになっていくので、そういう麻雀のイメージはどうでもよくなると思います(笑)。
斎藤:たしかに!
Q:気になる! 大変なことになるってどういうことですか?
斎藤:僕が演じた坊や哲は、ほぼふんどしに学ランです。いや、もはや学ランという概念すらない。羽織です。
監督:昭和の男ですから!
斎藤:でも面白かったです。役者って衣装を着替えるとき手伝ってもらうのですが、今回ばかりは自分でやらなければならなくて。
Q:前貼りは着けていたんですか?
斎藤:着けてないです。でも毎日自分でふんどしを締めていたら、日に日にふんどしとの距離が近くなっていくのが分かるんです。通気性もいいし、すごく過ごしやすかった。
監督:ふんどし姿で麻雀しているよね。
Q:なんですと! 絶対に映画を観に行きます。
斎藤:行くんかい(笑)。
Q:じゃあ、全編通してふんどしと学ランというスタイルなんでしょうか?
監督:いや、一回侍姿はさみます。
斎藤:ミスターKという謎の男と一緒に巌流島に行って麻雀します。サムライ麻雀、すごいですよ。
荒廃した東京で麻雀のゲームアプリにガチハマり!?
Q:舞台となっている2020年の東京はどうなっているんですか?
監督:世界大戦が起きている設定ですが、見た目はそんなに変わらないですね(笑)。でも全然人がいません(笑)。
斎藤:哲は戦後から戦後へ行くわけで、最初は全然気づかないんです。
Q:麻雀も変わっていますよね?
監督:麻雀は、現代の麻雀をするんですが、昭和の時代と違うのは全自動卓になっているんです。だから、それにめちゃくちゃ苦戦します(笑)。哲は積み込みのプロだったのに、全自動卓だから積み込めないわけです。
斎藤:つまり、イカサマができない(笑)。
Q:1945年から現代にやって来るとは、具体的にどういうことなんですか?
監督:例えば哲は、現代にやって来て、飲まず食わずの状態で徹夜で麻雀アプリにハマります。
斎藤:現代病にかかるんです。昭和の男が、現代でスマホに依存してしまいます。
監督:設定が振り切れまくっているんで、その世界の中に斎藤さんをぽいっと放り込むだけで勝手に振り切れてくれました。俺はもうずっと爆笑していました(笑)。
Q:白石監督といえば、暴力とエロっていうイメージがありますが、今回はどうですか?
監督:いや、グロもエロもそんなに入れてないです。笑える感じ! ヒロインがチャラン・ポ・ランタンのももさんなんですけど、彼女と挑戦はするけどセックスはできないので(笑)。
斎藤:そうですね。ヒロインは人間とセックスができないです。
Q:え? どういうことですか?
斎藤:坊や哲は、童貞なんです。でも年頃の男の子なので、突破しようとする。
監督:そうだね。2度ほど突破しようとするけど、失敗します。
Q:斎藤さんほどのエロマスターが、二十歳の童貞なんて全く想像できません!
斎藤:死ぬ気で役づくりしました。
Q:こういう役は役者にとってリスキーではないのですか?
斎藤:役者が好感度を気にして映画の出演を決めていたら、それこそどんどんつまらなくなってしまうと思います。自分が面白いと思ったものに出演していきたいんです。
監督:映画も一緒です。コンプライアンスとかそういうものを気にしながら映画なんて撮っていたら、いい子な映画しかできなくなってしまうし、全然面白くない。こういう時代だからこそ、戦っていきたいっていう気持ちはあります。
麻雀映画?コメディー?そしてまさかのSM!?
Q:コメディー、そして童貞もの……。いよいよ麻雀から離れてきました。一体ジャンルは何なのでしょう?
斎藤:学園ものかも。
Q:えっ? なんか本当に分からなくなってきました。コメディーで学園ものの麻雀映画? どういうことですか? それに、タイムスリップするってことはSM!?(SFと言おうとして間違えた)
監督:おっ。SM!
斎藤:なかなかするどい。
白石:まだ何も言えないんですけど、まあ竹中直人さんとSMは出てくる。
Q:あの、この映画は全編iPhoneで撮ったそうですね。
監督:全編iPhoneです。もう意地になっちゃって、テレビカメラの映像なんかも妥協することなくiPhoneで撮っていますね。全部で20台くらいのiPhoneを用意したんですけど、全部使うわけじゃなかったですね。ただ、CGは使っています。
Q:役者として大変なことはなかったですか?
斎藤:映画『シン・ゴジラ』に少しだけ参加させていただいたのですが、iPhoneを使って撮影するカットが多かったので、そこまで大変なことはありませんでした。逆に機能の高さに驚かされましたね。フィルムの時代を大事にする方は、あれ? と反応をする方もいるみたいですが、撮影現場に流れている空気自体は「映画の現場」という感じでした。
Q:最後に、映画の見どころを聞かせてください。
監督:昭和の男が2020年という近未来に来て、麻雀をすることのギャップ、現代に生きることのギャップを感じるところはとても滑稽。でも、物語が進んでいくにつれてあまり笑ってもいられなくなってしまうんです。多分観客の皆さんは「あれ? 何観ているんだろう?」って感覚に陥ると思う。こんな風に話していると、麻雀のことを描いているか不安にさせるかもしれませんが、麻雀愛にあふれているんです。絶対、麻雀が好きになると思います!
斎藤:そもそも、この映画を始めるときに全員が脚本を読んで集まっていると思うんです。だから、何かされることに関しては、あきらめに近い決断をして、ここに向かって作品を作るという覚悟を決めてきていると思います。とにかく急所を狙うわけでもなく、全力投球をするスタイルは、どの邦画もできていないと思うので、本当に楽しみでした。この船に乗ろうと決意してみんなで航海をした感じなので、撮影現場はずっと楽しかったです。
映画を予測しながらインタビューするという、前代未聞の作戦でしたが、本当に意味が分からないので一度情報を整理します。
- 舞台は2020年東京
- 斎藤工はほぼほぼふんどしと学ラン
- サムライ麻雀も入ってくる!
- 坊や哲は、麻雀アプリにガチハマりする
- ほぼほぼコメディーだけど、ジャンル分け不可能!
- ハタチの童貞・坊や哲の童貞喪失チャレンジシーンあり
- ヒロインは人間とセックスできないコンプレックスがある
- SMもあり
インタビューを敢行して分かったのは、斎藤工と白石和彌という最高のコンビが作り出した映画はかなりとんでもないことになっているということ。全くもって、作品の様相が分かりませんが、このぶっ飛び作品の全ぼうを明らかにすべく、映画館にGO!
その後、出演者のピエール瀧が麻薬取締法違反の容疑で逮捕された件を受け、公開が危ぶまれた本作。最後に、公開中止や延期もせず、しかもノーカット版で上映されることについて、会見での白石監督のコメントを抜粋します。
「配給会社には、作品を仕上げたベストな形で公開したいという正直な気持ちを伝えました。作品そのものには罪はないという思いのもと、公開できることになりホッとしています」
【斎藤工】ヘアメイク:赤塚修二(メーキャップルーム) スタイリスト:井嶋一雄(Balance)
映画『麻雀放浪記2020』は4月5日より全国公開