『キングダム』山崎賢人 単独インタビュー
ものすごい熱量で向き合った
取材・文:磯部正和 写真:高野広美
中国の春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になると誓いを立てた戦災孤児と、中華統一を目指す若き王が繰り広げる壮大な物語を描いた原泰久の人気漫画を実写化した『キングダム』。本作で主人公となる信を演じたのが、主演作が途切れることがない俳優の山崎賢人だ(「崎」は「たつさき」)。大役を担う前から原作への思いが強く、この作品との出会いは“運命的”と語っていた山崎が、その熱き思いを語った。
オファーを受けたときは「フワフワした状態」だった
Q:これまでの山崎さんのコメントなどを拝見していると『キングダム』という作品への熱い思いが伝わってきます。
映画化という話の前から、原作は本当に大好きな作品で、僕自身、いろいろな部分でパワーをもらっていたんです。だから実写化の話があったときから、ものすごい熱量で向き合っていました。
Q:連載10周年のとき、実写特別動画で山崎さんは信を演じていますが、そこから映画化のオファーがあったときは、どんな心境だったのですか?
最初話を聞いたときは「本当ですか……」と聞き返してしまいました。そうしたらプロデューサーから「映画化決定です」と再度言われたんです。そこからは淡々と「わかりました、頑張ります」と話したのですが、正直夢なのか現実なのかフワフワした状態でした。最初は「よっしゃー」という気持ちだったのですが、だんだん「ヤバい」というプレッシャーもあったり……。すごく鮮明に覚えています。
Q:フワフワした状態が、現実味を帯びてきたのはいつ頃でしたか?
衣装合わせの段階で「いよいよ始まるぞ」という少しギアが上がって、そのあと漂とエイ政の姿の“おりょう”(吉沢亮)を見て「おー『キングダム』だ」とだんだん実感が湧いてきました。あとはアクション練習が始まり、アクション監督の下村勇二さんと信の野性的な見せ方などを話していくうちに「本当に映画を撮るんだな」と思うようになりました。
デビュー当時には想像できなかった“いま”
Q:撮影現場で集中力が途切れることがなかったとお聞きしました。
熱くなるんですよ! 本当に大好きな作品で、夢をまっすぐ追いかける姿勢もすごく共感できるし、恵まれない環境で全力で頑張っている信が、自分の心に火を付けてくれて、ずっと高いテンションで作品に入れました。
Q:“好き”がモチベーションなんですね?
これだけまっすぐなメッセージが伝えられるのも『キングダム』の魅力だと思ったので、とにかく自分の身体を使って、全力で信を演じることだけに集中しました。
Q:今年、俳優デビューから10年目に入りますが、もともと大好きだった作品の主演を務めるという未来は、俳優を始めたとき想像できていましたか?
まったく想像できなかった現実です。いろいろな人との出会いや縁があったからこそ、たどり着けた。『キングダム』で信を演じられるというのは夢のような出来事。本当に幸せです。
「信をもっと生きたい」
Q:キャスト、スタッフが一丸となって壮大なエンターテインメント作品を作り上げました。
現場で、込められる思いはしっかり込められたと思います。信という男を生きることだけに集中させてもらえた現場。出来上がった映像を観たとき、率直に「すごい画になっている」と感じました。あとは映画が公開され、多くの人に広がっていけばいいなと思っています。
Q:『キングダム』の世界観をあらわしたプロジェクションマッピング投影式で「信をもっと生きたい」と話されていましたね。
クランクアップしたとき「まだ天下の大将軍になっていないので……」というあいさつをしたんです。普通だと、撮影の思い出を語って「ありがとうございました」というのが定番なのですが、『キングダム』のときは、信の気持ちでしゃべっていたんです(笑)。そのぐらい役と一体化して気持ちが入っていました。だから「もっと信を生きたい」というのは、夢がまだ続いているという感じなんです。
とにかく全力で演じることが作品のためになる!
Q:豪華キャストのなか、主演を務めることへの意識は?
ただただ全力でやるしかないという気持ちでした。僕が役に向き合う姿を見ていただいて、なにか感じとってもらえればいいなというぐらいです。信を全力で生きることが作品のためになると思って挑みました。
Q:全力という意味では、アクションシーンもかなり大変だったのではないですか?
左慈役の坂口拓さんをはじめ、その道のプロの方とご一緒できたのは大きかったです。アクションの経験もあまりないなか「本気で狙ってきていいよ」という言葉をいただき、自分自身も戦っているような気持ちになれました。すごくいい経験をさせていただきました。
Q:この作品を経て、どんなことを得ましたか?
「絶対死なねー」と思いました。僕はこの作品からパワーをたくさんもらいました。映画が公開され、観てくださった方にも、僕らの熱い気持ちが伝わればいいなと思っています。
思いが強ければ強いほど、胸の内を言葉にする際、うまく表現ができないことがある。これまで数々の作品に出演し、主演を務めることが多かった山崎賢人だが『キングダム』の取材では「なにを言っているかわからないですよね?」と苦笑いを浮かべながら、こちらに気を使うシーンが多々あった。確かにズバッと単語が出てこないことはあったが、逆に作品への熱い思いはビシビシと伝わってきた。「すべてをかけて臨んだ」と胸を張る山崎の姿は、これまでの柔和なイメージに、大将軍を目指すギラギラした迫力もプラスされ、より魅力的に感じられた。
映画『キングダム』は4月19日より全国公開