ラブシーンに緊張、玉森裕太インタビュー
累計発行部数150万部を超える東野圭吾のベストセラー小説を映画化した『パラレルワールド・ラブストーリー』。ある日突然2つの世界に迷い込んでしまった主人公・敦賀崇史を演じたのがKis-My-Ft2の玉森裕太だ。複雑に入り組むストーリーゆえに“実写化は不可能”と言われた作品の映像化。製作サイドだけではなく、演じる側にも大きなチャレンジがあったようだ。4年ぶりに映画の主演を務めた玉森が、過酷だったという撮影現場を振り返った。
■常に緊張感にあふれた撮影現場
Q:複雑なストーリーラインの作品。役を捉えるのは難しかったのではないでしょうか?
「パラレルワールド」というタイトルの通り、台本を読んでいても自分がどこの世界にいるのか理解するのが難しい役。現場の雰囲気も、ワイワイとした感じではなかったので、常に緊張感が漂っていました。
Q:常に緊張感が漂っている撮影現場は初めてでしたか?
そうですね。あまりこういう雰囲気の現場は経験したことがありませんでした。特に初日は緊張しました。僕は冷静を装っていますが、メッチャ緊張してしまうタイプなので、心拍の音がほかの人にも聞こえているんじゃないか、というぐらい鼓動がすごかったです。でもこうした緊張感は嫌いではないんです。そこから生まれるものもあると思うし、森(義隆)監督からもしっかり指導していただいたので、貴重な経験でした。
Q:森監督にかなり追い込まれたとお聞きしました。
追い込んでいただきました(笑)。何回も撮り直しがあるなど、決して優しい雰囲気ではなかったですが、嫌だったとか苦しかったという思いはなかったです。どのシーンも一つ一つ丁寧に話をしながらやらせていただいたので、学ぶことは多かった。自分自身で追い込んでいった部分もあったんです。
Q:特に厳しかったシーンはありますか?
全部に近いです(笑)。あえて言うなら、感情があらわになるシーンがいくつかあるのですが、特に時間をかけて撮りました。
Q:4年ぶりの主演映画でしたが、どんなことを得られましたか?
当たり前のことなのかもしれませんが、森監督には現場での居方や立ち振る舞い、役へのアプローチ方法などを細かく指導いただきました。いままで教わったことがないことが多く、改めて“演じる”ということを考えさせられた現場でした。
■東野圭吾作品に出演することは大いなるプレッシャー!
Q:森監督は、玉森さんのことを「人を引き込むオーラがある」と表現されていましたが、どのように普通の青年を演じましたか?
演じるうえで、個の自分というのは必要ないものですよね。その意味では自分を殺さなければいけないとは思っていました。でも、そもそも僕にはオーラなんてないですから(笑)。普通にしていれば普通の人になれますよ。ただ監督からは「演じようとしないで欲しい」と言われていたので、いかに自然に崇史になれるかは考えていました。
Q:人気作家の原作の作品に出演するプレッシャーはありましたか?
これまで演じたことのないタイプの役柄でしたし、東野圭吾さんの作品ということもあり、撮影前は不安しかなかったです。記憶をなくすという経験も未知なこと。どう役と向き合っていくかは、最初の方は本当に手探り状態でした。
Q:崇史という役で共感できる部分は?
大事な親友を失ってでも、その人が欲しいと思えることが愛なのかなというのは、崇史を演じて実感しました。崇史は嫌な奴に感じるかもしれませんが、ピュアでまっすぐな男でもある。そういう部分は共感しました。
Q:玉森さんがもし親友と同じ人を好きになったらどうしますか?
僕は引きます。親友との時間が長ければ長いほど、「お幸せに」という感情になると思います。
■キスマイのメンバーを羨ましいと思うことも
Q:宇多田ヒカルさんの主題歌「嫉妬されるべき人生」は作品にマッチしている曲でした。玉森さんも“嫉妬”という感情に駆られることはありますか?
たくさんあります。キスマイのメンバーにも嫉妬します。僕にないものをたくさん持っていますからね。嫌な意味ではなく羨ましいと思うし、尊敬する部分は多いです。
Q:具体的にはどんな部分に嫉妬するのですか?
バラエティー力や見せ方とか、僕はあまり得意ではないので。真似したいけれどうまくできない。「あ~悔しいな!」と思うことも多いです。
Q:逆にメンバーから嫉妬されることは?
どうなんでしょうね。褒め言葉かわかりませんが「なにも気にしない人だよね」とはよく言われます。僕は起こってしまったことは「しょうがないな」と思ってほとんど気にしないんです。
■親友とは本気のケンカができる!
Q:親友役の染谷将太さんとはどんな話をしましたか?
森監督と一緒に「親友とはどんな存在か」というのを染谷くんともゆっくり話しました。
Q:玉森さんにとって親友とはどんな存在?
友達のなかでも特別な存在ですよね。僕が「この人とは親友だな」と思えるのは、ケンカができるかどうか。そこが基準です。本当に仲が良い人とは、本気のケンカをしたことがあります。
Q:吉岡里帆さんとはラブシーンもありましたね?
いままであそこまでのラブシーンは経験がなかったので、すごく緊張しました。ただあまりラブシーンということを意識するのではなく、そのときの素直な気持ちをぶつけようと心掛けました。
■取材後記
アイドル活動と俳優、普段はスイッチがしっかりと切り替わっていたというが、本作では撮影期間中、プライベートでも役柄が抜けなかったという。「ここまで没頭していたのは初めて」と撮影を振り返っていたが、その表情は充実感でいっぱいだ。“初めて”の経験がたくさんあった20代が終わり、玉森は来年30歳を迎える。男の30代は大きな変化が見込まれる。その最初の大きな助走となる本作には、強い意気込みと決意が感じられた。(取材・文:磯部正和)