『名探偵ピカチュウ』竹内涼真 単独インタビュー
ポケモンが現実にいてほしかった
取材・文:高山亜紀 写真:中村嘉昭
かつてポケモンが大好きだった青年ティムが、行方不明になった父親を名探偵ピカチュウと共に捜すさまを描いた『名探偵ピカチュウ』。ジャスティス・スミス演じる主人公ティムの日本語吹き替えを担当したのは、ポケモン世代ド真ん中の竹内涼真。本作を通じて、さらにポケモン愛が深くなったという彼が、映画を観て再確認したというポケモンの素晴らしさを語った。
普段は字幕派だからこそ、こだわったディテールの数々
Q:竹内さんはポケモン世代ですよね?『名探偵ピカチュウ』でポケモンが実写映画化されると聞いてどんな気持ちでしたか?
ポケモン世代ですから、嬉しかったですね。僕自身、ピカチュウが喋ることに抵抗がなくて、むしろライアン・レイノルズが声をやると聞いてテンションがあがりました(笑)。作品がまだ完成していなくて、ほんのちょっと映像を観ただけですが、素晴らしいです。いろんなCG技術がありますけど、これはちょっと別の次元なんじゃないかって感じるほどクオリティーが高くて、観た時は感動しましたね。
Q:ティム役に関して聞かせてください。吹き替えにあたり、心がけたことは?
今回、初めての吹き替え挑戦なんです。普段、映画を観る時も吹替版でなく、字幕版で観ることが多くて。僕みたいに吹替版に慣れていない人もいると思うので、今回は極力本人のお芝居に合わせて僕も動きながら声をあてて、違和感が生まれないようにしたかったんです。ジャスティスのナチュラルで細かい芝居に声をあてることはとても難しいですが、できるだけ自然にお客さんに届くように意識しました。ティムは何か突出した能力があるわけではありません。足も速くないし、力も強くない。お父さんとの確執のせいで世間に対して反発していた彼が、勇気を振り絞って事件を捜査するなかで成長していく。それがこの作品の見どころでもあるので、最初は全然気が合わないピカチュウと、だんだん息が合っていく感じは特に気を付けて丁寧にやっていました。
Q:実際にジャスティスと会ったことで、何か意識することはありましたか?
彼の何かというより、声をあてる時に考えたのは彼が現場でどんな気持ちで喋っているのだろうということ。やっぱり、そのまま声をあてるだけじゃ、どうもハマらないんです。語尾にしてもそう。なので、監督さんと相談して、語尾を変えたりすることもありました。
Q:英語の吹き替えは口を合わせるのが大変とよく聞きますが?
僕は口を合わせることをそこまで意識はしていませんでしたけど、何回かやっているとだんだん合ってきました。「ここはこういう気持ちで言っているんだろうなぁ」と思ってせりふを口にすると、いつしか自然と口が合致していましたね。
吹き替えだけでなく、カメオ出演も
Q:以前取材した時、竹内さんは反抗期がなかったと言っていましたが、父親に反発するティムの気持ちはわかりましたか?
反抗期がなかったというと語弊があるかもしれません。なかったというより、表に出さなかっただけです(笑)。どうして自分のことがわかってもらえないんだろうと、もやもやする気持ちはわかります。みんなが通る道ですから、きっと誰もがティムの気持ちに入れると思います。
Q:今回は本編に出演もしていますね。
少しだけ、カメオ出演です。劇中でポケモントレーナーを演じているんですが、ロンドンに行って監督と綿密に話し合いながら撮影しました。作品の仲間になれた感じがして光栄でした。
本当にポケモンがいたら、やってみたいこと
Q:ポケモンが世界中の人に愛される理由はどこにあると思いますか?
かわいい。かっこいい。強い。戦う。一緒に連れて行ける。種類の多さ。いろんな理由がありますよね。自分には、たくさんいる中から好きなポケモンを選べる点がとっても魅力です。男の子はかっこよくて戦えるものが漠然と好きなんですよ。気づいたら、ゲームもテレビアニメもハマっていました。それに、日本人にはサトシという不動のキャラクターがいます。アニメの第一話なんて、本当に泣けます。サトシは本当に愛されているから、みんなサトシのポケモンを欲しがるんじゃないかな。捕まえて自分のものにしたい。「Pokemon GO」が出た時はしびれましたよ(笑)。
Q:そんなポケモンの世界の一員になれるなんて、本当にうらやましいです。
劇中に登場するライムシティが魅力的なんです。ポケモンと人間が共存していて、こんな街が本当にあったらいいのになって思います。随所に出てくるポケモンたちにも、ちゃんと役割があって意味がある。本当にリアルなんです。
Q:本当にポケモンがいたら、してみたいことはありますか?
相棒が欲しいです。ピカチュウは絶対的存在なので、選ばないですけどね(笑)。映画を観たら、フシギダネですかね。いいタイミングで登場するんです。でも、進化はさせない。フシギバナになっちゃうと一緒に生活できない(笑)。巨大な庭とかあればいいですけど、普通のマンションだったら難しいです。実際の大きさは相当だと思うんです。
Q:サイズ感が出るのも実写ならではの面白さですね。
そうなんです。アニメでもわかりますけど、実写の人間と並んでいることでよりわかりやすいです。アニメでは表現しきれない部分やゲームでは伝わらないことが、この映画に詰まっている。これまで気になっていたポケモンの質感や動き、生息地の様子。ファンの人が観て「えっ?」と違和感を覚えるようなものじゃなくて、逆に「こうなっているんだ!」と納得できる映像なんです。イメージが膨らんで、よりポケモンへの愛が強くなると思います。
ポケモンが実際にいてほしかった
Q:多くのファンが本作を楽しみにしています。
ポケモンファンの方が観たら絶対、もっと好きになると思います。「次、ないのかな」って思うぐらい楽しんでもらえるはずです。ポケモンとはいえ、『名探偵ピカチュウ』という新たなシリーズの始まりのような気もします。この作品のよいところは、「こういう人向け」という垣根のないところ。親子の物語としても面白いので、ファンじゃなくてもみんなが楽しめる作品になっています。CG技術も感動するほどすごくクオリティーが高いですし、本当に面白い映画だと思うので、心から楽しんで頂きたいです。
Q:シリーズ化したら、また出演したいですか?
「ポケモントレーナー役でまた来てよ」って言われるのかな(笑)。今回は探偵ものでしたけど、今後はバトルをやっていくのかもしれないですし、夢が広がりますね。
Q:竹内さんは子供の頃、ポケモントレーナーになりたかったですか?
ポケモントレーナーになりたいというより、ポケモンが実際にいてほしかった。モンスターボールとか、かっこいいじゃないですか。僕は基本的にクイックボールの見た目が好きですね。
Q:「ポケモン好き!」という理由がキャスティングにつながったのでしょうか?
そんなことはないと思います(笑)。逆にキャスティングして頂いてから、こんなに詳しいんだと驚かれたと思います。自分でもこんなにポケモンのことを話せる機会がやってくるとは思ってもみませんでした(笑)。
聞けば聞くほど、ポケモンに対する深い愛を語った竹内涼真。作品に対する愛情だけでなく、その知識量にもびっくりで、付け焼き刃じゃないと取材現場のスタッフが驚くほどだった。ポケモン史に名を刻む日本代表のキャストとして、彼ほどふさわしい人はいないはず。願わくば、シリーズ化されて今後もポケモントレーナーとして出演し続けてほしいものだ。
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映画『名探偵ピカチュウ』は5月3日より日本先行公開