最終章第3話「ゲーム・オブ・スローンズ」死者の軍勢と繰り広げる怒涛の戦闘!
ゲーム・オブ・スローンズの魅力
前回は戦い前夜、今回は戦い当日! 期待を上回る怒涛の戦闘が繰り広げられていく。そしてもちろん、犠牲者が出る。生き残るのはいったい誰!? そしてこの戦いはどうなる!?(平沢薫)
※ご注意 なおこのコンテンツは「ゲーム・オブ・スローンズ」最終章について、ネタバレが含まれる内容となります。ご注意ください。
ゲーム・オブ・スローンズの魅力 連載:第12回
<これから観る方向け:ネタバレなし>監督は「落とし子の戦い」のサポチニク!脚本はクリエイター2人が自ら担当!
今回は長い、82分! これまではシーズン7第7話「竜と狼」が最長の80分だったが、それを上回った。それでいて、まったく緊迫感が途切れない。
今回は戦闘を描くエピソードなので、監督は、シリーズ中の名バトル回「落とし子の戦い」を手がけたミゲル・サポチニク。彼はこのシリーズは本作で5作目だが、このシーズンは2作、今回と第5話を手がけている。
ちなみに彼は「落とし子の戦い」が評価されて、長編映画の監督に抜擢され、今はドリームワークス製作のSF映画『バイオス(原題) / BIOS』を撮影中。『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のトム・ハンクスと『スリー・ビルボード』のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが共演、アポカリプス後、人間がいなくなった地球を舞台に、ロボットが人間とは何かを学んでいく物語だそうで、そちらも楽しみ。
そして脚本は、この番組のクリエイターコンビ、デヴィッド・ベニオフとD・B・ワイス。2人はこのシーズンの第3話から第6話までの脚本をすべて担当している。この壮大な物語の集結は、クリエイターコンビ自身が描くのだ。
だから、シーズン最終話となる第6話は、このコンビが監督も担当! 2人は脚本家出身で監督作は少なく、ベニオフは短編の監督作が1作あるが、あとはこのシリーズで2話、シーズン3第3話「処罰の道」とシーズン4第1話「二本の剣」を手がけたのみ。今度の最終話は他の監督に任せられないほど、2人の情熱が注ぎ込まれているのに違いない。
<もう観ちゃった方向け:ネタバレあり>闇と炎!ドラゴン同士の戦い!シリーズ史上最高の激闘!
前回が感動ドラマ編なら、今回は過激アクション編。そして、映像の力で観る者を圧倒する。「ゲーム・オブ・スローンズ」は物語や人物像だけではなく、映像表現も素晴らしいのだということを再認識させてくれる。
何しろ、監督は名エピソード「落とし子の戦い」のミゲル・サポチニク。今回はあれ以上のことをやってくれるはずだと期待しながら観たが、その期待を裏切らなかった。至近距離から描写されるバトルが、まるで自分が戦闘の真っ只中にいるかのような臨場感なのは「落とし子の戦い」でも体感させてくれたが、今回はそれに加えて、上空から広大な大地を見下ろす、壮大な光景も加わった。ドラゴンに乗るジョン・スノウ(キット・ハリントン)やデナーリス(エミリア・クラーク)の視点で見る戦場、“三つ目の鴉”となったブラン(アイザック・ヘンプステッド・ライト)の視点で見る光景が、激闘の中に織り込まれ、戦闘規模の大きさ、そして物語の壮大さを痛感させるのだ。
そして「落とし子の戦い」は日中だったが、今回は夜。“暗い”という状況をたっぷり活用する。視聴者の画面が暗くて何が起きているのかよくわからないという状況は、その戦場に立つ兵士たちが体感しているものと同じなのだ。
そんな闇の中、歩く死者たちの群は、まず、“得体の知れない闇”として出現する。そして、その闇を裂くように兵士たちの剣に炎が燃える。紅の炎の剣を持つ騎馬戦士たちの集団が、その巨大な闇に向かっていくさまを、俯瞰(ふかん)で描く。黒い闇の中に、赤く輝くものが動いでいく。その光景の美しさ。
また、壮大なバトルの過程を具体的に描写するという演出は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを連想させるもの。どの集団を誰が率いて、彼らはどの位置に何のためにいるのか、戦闘はどういう順序で行われるのかがわかりやすく描かれるので、戦いの状況がよりリアルに感じられる。そうやって激しい戦闘を描きながら、主要キャラクターたちを全員登場させるという荒技までやってのけるのだから、もう、ひれ伏すしかない。
もうひとつの見どころは、ドラゴンたち。まずドラゴン同士の空中での戦いは、互いにかみつき、鉤爪で体を引き裂き合うというすさまじさ。そして、死者たちに身体によじ登られたドラゴンが、彼らを振り落とそうと地面から飛び上がって体を震わせるときの、生物らしさ。そのためデナーリスを地面に落としてしまうが、生き物なのだからしょうがない。そのように生物らしく描く一方で、彼らが雲の上に飛翔し、月の光を背にしている光景の、この世のものとは思えない美しさを描くことも忘れない。
その過酷な戦闘の中で、ドラマチックな出来事がいくつも起きる。少女領主リアナ・モーモント(ベラ・ラムジー)の果敢な戦い。最後まで“冥夜の守人”仲間を救う総帥エッド(ベン・クロンプトン)。ようやく光の王の使命を果たすベリック(リチャード・ドーマー)。シオン(アルフィー・アレン)の見事な晴れ舞台。本望を遂げたであろうジョラー(イアン・グレン)。死は容赦なくやってくるが、今回の死はどれも満たされた死だ。
さらに、最後にサプライズが! 確かにアリア(メイジー・ウィリアムズ)はシーズン3第6話で、紅の女祭司メリサンドル(カリス・ファン・ハウテン)が王位を狙うスタニス(スティーヴン・ディレイン)のためにジェンドリー(ジョー・デンプシー)を連れ去る時に、彼女に会って劇中のような「青い目」の予言をされたが、こんな意味があったとは!
いや、振り返れば、かなり冒頭近くからちゃんとヒントはあった。城に突然やってきたメリサンドルが、アリアを見つめる。中盤でもメリサンドルは、アリアを守ったベリックを見て光の王の役目はこれだったと言う。しかし、その後でいろんな出来事があり、夜の王はドラゴンの炎を生き延び、ジョンは氷のドラゴンに妨害されて夜の王に接近できず、もちろんシオンも倒され、じゃあどうするんだと観客を焦りまくらせたところで、このサプライズ。見事としか言いようがない。
と、夜の王との戦いが終わっても、ジョンたちは休む暇がない。彼らが兵力を失ったところで、準備万端のサーセイ(レナ・ヘディ)が攻めて来るはず。次回は、次の戦闘の前夜か? 残すところあと3回。怒涛の展開が続きそうだ。
<今週の名セリフ>
「尖った方で刺すの」 ——アリアがサンサに
いよいよ城壁も危なくなり、アリアがサンサ(ソフィー・ターナー)に地下室に逃げるようにと言って短剣を渡すと、サンサは「使い方がわからない」と戸惑う。そこでアリアが言うのがこの言葉。これは、シーズン1第2話でジョンがアリアに言った言葉。彼は冥夜の守人になるために家を去るとき、アリアに細身の剣を贈り「尖った方で刺すこと」と言ったのだ。
今回のアリアにはもうひとつ、シーズン1を思い出させるセリフがある。メリサンドルがアリアに「死神には何と言う?」と聞くと、アリアは「まだ死なぬ」と答える。これはシーズン1第6話で剣の師匠シリオ・フォレル(ミルトス・イェロレムー)がアリアに教えた極意、「死神に言うことは一つ“まだ死なぬ”」を踏まえたものだ。
「ゲーム・オブ・スローンズ 最終章」はBS10スターチャンネルにて4月15日より<世界同時放送>
「ゲーム・オブ・スローンズ」は、スターチャンネルオンデマンド、Hulu、Amazonプライム・ビデオなどで視聴可能