ブラピとアンジー、ドロ沼離婚劇に至るまで～運命の出会いとキャリア

ハリウッド随一のおしどり夫婦として、かわいい子供たちに囲まれ幸せな結婚生活送っていたかのように見えたブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー。しかし、2016年に離婚申請をしてから、もめにもめて、ようやく先月、法律的にはお互い独身となった。そんな2人は、よくある離婚劇につきもののお互いのけなし合戦はしていたものの、キャリアでは常にすばらしい功績を残しており、その評判が地に落ちることはなかった。ブラピは映画制作会社プラン・B・エンターテインメントを率いアカデミー賞作品を次々と世に送り出したり、一方のアンジーは人道支援のアイコンになったりと、米Forbes誌の2013年度最も影響力のあるカップルにリストインしたこともある2人の出会いから今日までのキャリアと私生活の軌跡を追ってみた。（西野悦子）

恋多き二人、交際のきっかけは『Mr.&Mrs. スミス 』(2005)

　2004年1月、アンジョリーナとブラピが『Mr.&Mrs. スミス 』（2005）の撮影を開始。これが2人の出会いとされている。アンジーの父親でオスカー俳優のジョン・ボイドが何度も不倫をし母を傷つけた経験を踏まえ「不倫がどれほど人を傷つけるのか、誰よりも知ってるわ。その私が他人の夫を好きになるなんてあり得ない」とアンジーは当初噂を否定していたが、後年あるインタビューで撮影中にブラッドと恋に落ちたことを認めている。

　もともと恋多き2人、それまでの噂の相手はアンジーがイーサン・ホーク、オリヴィエ・マルティネス、コリン・ファレル。実際に結婚した相手は1995年から約4年続いたジョニー・リー・ミラーと2000～2003年のビリー・ボブ・ソーントンだ。一方ブラピのそれまでのお相手は、歌手のシニータ、シャレーン・マッコール、ジル・ショーレン、ロビン・ギヴンズ、クリスティナ・アップルゲイト、エリザベス・デイリー、ジーナ・デイヴィス、ジュリエット・ルイス、タンディ・ニュートン。アンジーとの離婚申請後はケイト・ハドソンと。実際の婚姻歴は『セブン』（1995）で共演したグウィネス・パルトローとの婚約を1997年6月に解消した後の、2000～2005年のジェニファー・アニストンのみだ。　

それぞれの離婚からラブラブの蜜月時代まで

　2003年5月にアンジーはビリー・ボブ・ソーントンと離婚。2005年3月にブラピも、原因がアンジーでないことをマスコミに示しながらもジェニファーとの離婚を申請。彼は2002年に彼女とブラッド・グレイとの3人でプラン・B・エンターテインメントを設立したが2006年には2人が抜けブラピが単独経営者となった。ジェニファーとの離婚申請の約2か月前に撮影された雑誌「Ｗ」のツーショットの見出しが「至福の我が家」（Domestic Bliss）だったためジェニファーは「思いやりのかけらもない」（Sensitive chip missing）と批判した。この頃からブラピとアンジーのラブラブな様子がマスコミを賑わせ2008年には全米映画俳優組合賞、カンヌ映画祭と共に仲睦まじく登場している。

グローバルな2人、親子共演もぬかりない仲良し家族

　2000年の『トゥームレイダー』のカンボジア撮影で孤児の姿を見て人道支援に目覚めたアンジー。撮影後もUNHCR職員と現地で慈善活動。翌年エチオピア、カンボジア、チェチェン、英国を舞台にした10年愛の叙事詩『すべては愛のために』の撮影に入る。2002年にはカンボジアからマドックス （生後8か月）と養子縁組。彼はパパ主演の『ワールド・ウォーZ』にゾンビ役で出演。この作品のジャパンプレミア時にはアンジーとブラピが“手つなぎ”ラブラブウォークで注目された。2005年生まれのブラピ、アンジーとの間の子供シャイロも『ベンジャミン・バトン　数奇な人生』でブラピの娘役に。『マレフィセント』では2008年にノックスと双子で生まれたヴィヴィエンがオーロラ姫の子供時代を演じママと大役を果たしパックス、ザハラも共演した。

　『カンフーパンダ３』でもパックス10歳、ザハラ9歳、シャイロ7歳がボイス出演。2015年のカンボジアのクメール・ルージュ政権を描く骨太Netflixテレビドラマ『最初に父が殺された』でも監督のアンジーがマドックスに初めてせりふのある役を与え、製作者としても息子を俳優デビューさせた。2017年にも、家族を飢えから救うために少年になりすまして働くアフガンガールアニメ『生きのびるために』プレミアではシャイロがプロデューサーのママをエスコートした。

チャリティ活動も華やかに

　2011年、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが設立した財団法人の納税記録が公開され、2人は2009年だけで総額490万ドル（約3億9,200万円）を慈善団体に寄付していたことが明らかになった。（2011年当時のレート1ドル80円で換算）。ハリケーン・カトリーナへの復興寄付額も世界第2位となった。SOSチルドレンズ・ビレッジにも多額の寄付を行い、他にもカンボジアの慈善団体、ザ・グローバル・ヘルスカウンシルという世界中の病気削減団体への寄付などがメディアを賑わした。写真提携権利金もシャイロの時、数百万ドルを全額チャリティへ寄付したり、双子の時の市場最高額1,400万ドルもジョリー・ピット基金へ寄付したことも話題になった。

　Huffingtonpost.comによれば2011年、2人はホロコースト記念博物館で行われたアンジーの初監督作『最愛の大地』の試写の直後オバマ大統領を訪問。ボスニア紛争を題材にした自身の監督作に関連して大量虐殺と女性への性暴力をなくすための活動について話し合ったようだ。この頃ブラピは娘をかばいじん帯を損傷し、杖での写真も微笑ましい。2013年2月、2人はワインビジネスも開始した。さらには2008年のAFP通信によると、ブラピは同性婚支持メッセージを発表。「米国で結婚を望む全ての人が結婚できるようになったら自分たちも結婚するだろう」と2人のポリシーを声高にとなえた。

ついに婚約

　2012年4月ついにブラピとアンジーは婚約発表。薬指にはデザインに1年かけたというゴージャスなリングが。結婚という法律的なしばりがなくとも深い絆で、と2人も周囲も気にしなかったが、子供たちが次第に「結婚して」とせがんだとのことだ。夏やクリスマスの頃には「挙式はもうすぐ」とのデマも多かった。翌2013年春、ブラピに常に付き添われ、アンジーが乳がん予防のために両乳腺の除去手術を数回にわけて行ったとニューヨークタイムズが報じた。検査で乳がんと卵巣がんになりやすい遺伝子に異変が見られたためだが、最愛の実母マルシェリーニ・ベルトランを卵巣がんで、叔母を乳がんで亡くしたことも決断のきっかけだろう。ブラピは決断した彼女を誇らしい、と語った。

　その頃、米Forbes誌の2013年度最も影響力のあるカップルのリスト第5位に。ちなみに1位はオバマ大統領夫妻であった。また、6月には子供を現在の6人から8人にしたい旨を漏らす。7月、ブラピが2004年にパイロット免許資格を取ったアンジーへもっと会えるよう飛行機をプレゼント。ちなみに今までもアンジーのために自宅敷地内の射撃場や子供たちへは動物園を造ってあげたりしていた。

家族愛溢れる挙式となった

　2014年8月南フランスのお城とその中の教会で家族そろって挙式。招待客は新郎の両親、弟、妹とその家族の計22人のみ。アンジーの実ジョン・父ボイドとアンジーは2010年に復縁したが招かれなかった。結婚許可証は前もってカリフォルニアでとっていたそうだ。バージンロードでのエスコートはマドックスとパックス。ザハラとヴィヴィアンが当日の朝に採取した新鮮なバラの花びらをまきフラワーガールを務めた。婚約指輪同様のプロコップデザインの結婚リングを運ぶ役はシャイロとノックス、6人はさぞ楽しかったことだろう。

　アンジーとブラピは共に涙ぐみながら手書きの誓いの言葉を読んだ。ドレスは知人ルイジ・マッシの「アトリエ・ヴェルサーチ」のデザイン。優雅でシンプルなデザインだがベールにも一工夫。子どもたちの絵の刺繍付き！　動物、花、手をつないだ家族の絵に「DAD」「MOM」の字まである。愛する実母の写真入り金のペンダントも胸に。新郎は息子から借りたネクタイに黒のスーツ。ケーキはパックスとその友の共作。23～28日は家族水入らずで過ごし最終日は8人でゴゾアイランド（マルタ共和国）へ。　

二人の仲がこじれたきっかけ

　このマルタ共和国で2人は約２か月間、10年ぶりの共演作『白い帽子の女』を撮影。ブラピは製作・出演、アンジーはそれらに脚本・監督も兼ねる。毎日顔を突き合わせたことで問題が生まれたようだ。一緒にいる時間が長すぎると良くないと共に気づいたという。過酷な撮影も影響したとのことだ。この頃ブラピは10度目の来日時に「子供たちは、日本のおもちゃとキャンディーは世界一だと言っているよ。点数稼ぎにいっぱい買いあさってきた」と子煩悩な一面をのぞかせたし、アンジーも夫の50歳の誕生日ギフトでハート型の島を送っている。2年前は滝を送ったそう。行動とこじれ始めとの関係は本人たちにしかわからない。

　2014年末、アンジーの監督としては2回目作品『不屈の男　アンブロークン』プレミアが行われた。肝心のアンジーが水ぼうそうのためロサンゼルスのホテルへ移りブラピ、マドックス、パックス、シャイロが出席し、注目された。距離を置きべったりではなく自分の時間が増えたことで2人のバランスは良くなったとのことだ。翌年にもアンジーが週2日夫から離れることでよい夫婦仲を保っている、とあるマスコミに漏らしていたのだが……。

こじれた離婚条件や親権問題

　挙式から1年弱で夫婦でのレッドカーペットは『白い帽子の女』プレミアで最後のものに。その数か月後ブラピの英国での家購入の噂も持ち上がる。さらにはアンジー側から「和解しがたい不和」のため離婚申請がなされた。それに対しブラピ側の関係者が、アンジー側は「悪質なうそをついている」との報道。妻が離婚に踏み切った一因には夫のマリファナやアルコールの消費量にうんざりし、それらを摂取した際夫が感情的になり子供たちにとって危険だと考えたことがあるとされていた。また離婚原因は、ブラピが出演した『マリアンヌ』での相手役マリオン・コティヤールとの不倫!?　ともされた。

　ロンドンのマダム・タッソーでも「ブランジェリーナ」の展示場所が離された。のちに疑惑は晴れたものの、FBIによるブラピの児童虐待疑惑捜査の噂も駆け巡り、疑惑を晴らすため自ら薬物＆アルコール検査をしたとの情報も。2016年も離婚申請が成立しないまま、もめ続けるが2018年4月、お互いが法的に独身に戻る「分岐手続き」が裁判所に認められ、家、財産、養育権等の問題が未解決のままでも離婚のステータスを先に得る。単独親権を望んでいたアンジーもブラピ提案の「共同親権」で合意したとも伝えられている。

そして二人は今…キャリアとプライベート

　アンジーの活躍から。今年2月Netflix作品『The Boy Who Harnessed the Wind（原題）』試写会に子供6人全員と登場し、モデレーター(司会のようなもの）を務めた。『ダンボ』試写会にも子供たちと登場。4月にはマーベル・スタジオの新作映画『ジ・エターナルズ（原題） / The Eternals』に『新感染』のマ・ドンソクや浅野忠信と出演。5月には仲の良いセリーヌ・ディオンの伝記映画主演のオファーを断った、とのニュースも入っている。

　一方ブラピは『ビューティフル・ボーイ 』（2018）や『バイス』（2018）製作に続き、タランティーノ9本目監督作、共演ディカプリオの8月30日日本公開『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』（2019）に出演、さらには20世紀FOX配給、『アド・アストラ（原題）』で自閉症の宇宙工学エンジニア兼宇宙飛行士の主人公を演じる。20年前に知的生命体を調査するため海王星へと旅立ったまま行方不明になっているトミー・リー・ジョーンズ扮する父を探しに行くSF大作だ。なお、ブラピは米情報サイトRadar Onlineに、離婚が成立し次第暴露本を出版するつもりだと明かしている。アンジーは1億1,600万ドルともいわれる全財産を長男マドックス（現在18）に相続させ、ブラピに味方した他の5人には1ドルも与えないつもりであるとも報じられているが真相については定かではない。