ウーマン村本の悪さレベルは低かった? - 『アメリカン・アニマルズ』
映画たて・よこ・ななめ見!
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回は、アメリカで実際に起きた事件を映画化した『アメリカン・アニマルズ』をななめ見。本人たちまで登場するオドロキの構成に二人の反応は?(取材・文:シネマトゥデイ編集部・森田真帆)
今月の激オシ映画はコレ!
『アメリカン・アニマルズ』
アメリカの大学生が実際に起こした強盗事件を映画化。大学の図書館に所蔵されている貴重な画集を盗んで売りさばこうと考えた、4人の大学生の犯行を描く。若手俳優が演じる若者たちと共に、出所した犯人たちも出演。フィクションとドキュメンタリーが融合したスタイルや、当事者の証言の食い違いまで映像化するユニークな語り口は必見。
ガチ犯罪者を映画に出す!
村本:面白いよね。事件の犯人が映画にも登場するなんて、なかなかないじゃない。アメリカでは、罪を犯した人が復活することも楽しむって聞いたことがあって、多分、この映画で犯人たちが有名になった部分もあると思う。日本なら、罪を犯した人をとことんたたき潰すところがあるから、もしやろうとしても「被害者感情はどうするんだ」ってなって、映画にすらならないはず。それが面白い。やれても絶対名前変えたりするはずやもん。
中川:(犯人たちの)インタビューが出てくるけど、まさか本物の犯人とは思わなかったから、そこも役者が演じてるんかと思ってたわ。あ、フェイクドキュメンタリーみたいなやつねって(笑)。しかも、その犯人たちを悪者に見せる撮り方もしてない。時折、笑顔も見せたりするし、それぞれ証言は食い違っていれども、みんなが素直に話している感じを受けたわ。
村本:本当に自然すぎるからな。この事件には被害者のおばちゃんがおるんやけど、なんか俺も日本という国に育ったからなのか「このおばちゃんの気持ちはどうなるんやろ」とか、「この人ら、この映画でもらった金で遊びまくれるやん」とか、ネットでたたきそうな人たちと同じ感情を持ってしまってる自分もおったね。
中川:わかるわ~。大事件の犯人が手記を出版することとか、日本でもあるやん。やっぱりその度に、稼いだ金とかどこに行くんやろとか考えてしまう。
既婚者コンパみたいな4人組!?
中川:ただ、この映画の場合、実際の犯行は結果的にめっちゃ間抜けなことになってしまって、それは面白かったな。最初は仲間が増えたりしていってかっこよかったのに、これかいっていう(笑)。
村本:中途半端な計画も含めて、犯人たちが大学生ってところは大きいと思う。これまで、おじいちゃんたちが強盗する映画や、少年が強盗するっていう映画もあったはず。でもこの映画の主人公たちくらいの年齢って、大人と子供のちょうど半分くらいの頃とうか。「何者かになりたい」っていう気持ちが彼らを動かしていて。それってやっぱり、あの年頃じゃないと出てこない気持ちなんかなって思う。
中川:主人公のスペンサー(バリー・コーガン)って、友達のウォーレン(エヴァン・ピーターズ)に引き込まれていった感じがあってさ。何でウォーレンも最後まで付き合ってしまったのかって考えると、例えるなら「既婚者コンパ」やっているときみたいなもんなのかなって。ダメなことだと思ってる人でも、それを一緒にしてる人らと気持ちを共有して団結していくみたいな。
村本:……何を言うてんの? こいつら、お前みたいにナチュラルで悪いヤツやないやん。全員が、これまで悪いことをしたことがないから、みんなビビりながらやってたやんか。ぜんぜん関係ないけど主人公が俺の弟にめっちゃ似てんねん。それもあってずっと「もうやめなさい! 断れ!」って考えてたよ。せやから、不倫してるようなヤツらの変なコンパに重ねんな! ただ、本当は嫌なのに友達に誘われたから断れないって言うのは、確かにめっちゃリアルやった。「友情を壊したくない」って。
村本は巻き込まれ型
中川:実は僕、主人公のスペンサーってめっちゃ村本っぽいなって思っていたんですよね。
村本:お、なかなか鋭いことを言っているね。
中川:村本ってめっちゃ悪いやつって思われがちなんやけど、人間の悪さレベルでいうとね、実はそんなに悪くなれないんですよ。だから、もしもこういう悪い計画があったとしたら、スペンサーみたいにどんどん巻き込まれていくタイプやと思う。僕はきっと、映画の中で言えば悪いことに乗っかって行くウォーレンタイプ。嫌がっても断ることはないから。
村本:お前、それ息子がいる親の発言とは思えへんな。
中川:だって、息子がいるなんて関係ないわスタンスだからな(笑)。
村本:ほんまに悪いヤツらってもっとどうしようもないけど、この子たちはずっと真面目に良い子で、息苦しさを感じながら人生を生きてきて、ついに爆発しちゃっただけというか。ほんまに人を殺してしまわなくて良かった。この映画を観たときにさ、誰が悪いかって考えなかったわけよ。それよりなんでそうなってしまったのかをちゃんと考えてる映画やと思う。
監督はあの騒動を映画化しろ!
村本:この映画の監督(バート・レイトン)ってさ、この映画を作る前に何回も刑務所に行って本人らに取材して、全員が出所するのを待ってから作ったんやって。僕も、空いた時間があると、例えば基地問題でわからないことを沖縄に行って話を現地の人から聞いたりしているから、そこはすごくよくわかる。だって聞いて見なきゃわからないことってめっちゃあるから。
中川:この映画を観るとさ、彼らが犯してしまった犯罪は一つだけなのに、その一つの犯罪がどうして行われたかとか、そういうことって結局、当事者にしかわからんやろなって思わされるよな。だからこそ面白くて。同じ出来事でも、4人それぞれが違う見方をしているとこまで描くからさ。そこはすごいなって思うわ。
村本:うん。4通りの考え方があって、きっとそこには4通りの真実があるんやと思う。この監督は、そのなかの一つの視点や考えで作っていなくて、犯罪者本人たちの気持ちを一番大切にしながら作っているという感じがあったな。
中川:三者三様やもんね。監督だって、ほんまは一個の見方を持っているはずやし、その主張にそって撮ってしまいそうになると思う。でもそこをちゃんと入れずに、4人それぞれの意見を尊重していたからすごいなぁって。
村本:今やったら NGT48の騒動がめちゃくちゃ取り上げられてるけども、あれも当事者全員から話を聞くのも大事だと思う。この監督にはぜひ、NGTをテーマにした映画を撮ってほしい!
映画『アメリカン・アニマルズ』は新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中
映画『アメリカン・アニマルズ』オフィシャルサイト
(C) AI Film LLC / Channel Four Television Corporation / American Animal Pictures Limited 2018
※記事内容には個人の意見が含まれています
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。