これで本当に終わり!最終話「ゲーム・オブ・スローンズ」圧倒的な映像美とサプライズに涙!
ゲーム・オブ・スローンズの魅力
ついにやってきた最終回。8つのシーズンを通して語られてきた壮大な物語は、どんな結末を迎えるのか。最後に“鉄の玉座”に座るのは誰なのか。その答が今、明らかになる!(平沢薫)
※ご注意 なおこのコンテンツは「ゲーム・オブ・スローンズ」最終章について、ネタバレが含まれる内容となります。ご注意ください。
ゲーム・オブ・スローンズの魅力 連載:第15回(最終回)
<これから観る方向け:ネタバレなし>クリエイターコンビがずっと構想してきた最終回、その結末をじっくり見届けたい
ついにやってきた最終回は、クリエイターコンビ、デヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスの描きたかったものを明確に打ち出すエピソードになっている。それもそのはず、監督はこのクリエイター2人自身。彼らはそれぞれ単独で本作中のエピソードの監督を手掛けたことはあるが、2人一緒に手がけるのは今回が初めて。それほどこのエピソードは特別なのだ。そして、脚本も第3話からずっとこの2人が担当している。彼らが考えに考え抜いたクライマックスなのだ。
それが出来たのも、本作はこのシーズンで終了することがあらかじめ決まっていたから。ほとんどのアメリカのテレビシリーズは、人気が高ければ次のシーズンが製作されるのが通例で、前もって最終回が決まっていることは少ない。この「ゲーム・オブ・スローンズ」はその珍しいケース。本作は2016年春、シーズン6の放送開始前からクリエイターコンビがシリーズの終わりを考えていることを発表、同年夏には、HBOがあと2シーズンで終了することを発表。それからずっと、最終回を目指して作られてきた作品なのだ。それがどんなラストなのか。最後まできっちり見届けるしかない。
<もう観ちゃった方向け:ネタバレあり>最終話ならではの充実感!そして最後までサプライズが待っている
大満足。8シーズンをかけて語られてきた壮大な物語の終結としての充足感、ますます格調高い映像美、そしてこれまでも楽しませてくれた本作流のサプライズ、そのすべてを味あわせてくれるのだから。
ここ数話のデナーリス(エミリア・クラーク)の変化については説明不足の感があったが、それも、牢に入れられたティリオン(ピーター・ディンクレイジ)がジョン(キット・ハリントン)に語る形で説明される。ティリオンは、彼女はこれまでも、対象は悪人たちだったが大虐殺を続けてきており、それを自分たちが賞賛してきたことが、現在の彼女の状態を招いたのだと語るのだ。
そしてこのエピソードは、観客が“終わり”をたっぷり楽しめるように、エンディングを3回やるような内容になっている。
まず、最初のエンディングは“鉄の玉座”の最後。壁も天井も失われた廃墟のような城の広間で、鉄の玉座だけが無傷で残っている。そこに、まるで極寒の地ウィンターフェルの雪のように、白い灰が降り注ぐ。そこにデナーリスが近づいていく。この光景を観るだけで、鉄の玉座さえなければ、これまでのさまざまな悲劇や惨劇は起こらなかったのに、と痛感せずにはいられない。
するとその少し後、観客のそんな気持ちを代弁するように、ドラゴンが玉座に向かって火を吹きかける。玉座にこだわることの愚かさに人間は気づけず、それを見抜けるのは、人間ではないドラゴンだけ。しかしそのドラゴンは遠くへと飛び去ってしまい、もう人間の前には姿を現さないだろう。これからはドラゴンのいない世界になる。このシーンで、玉座をめぐる壮大な物語は終わりを迎える。その完結感、美しさ、ほろ苦さ。
この終焉(しゅうえん)の意味深さに比べると、その直前に起きた、ジョンのデナーリスへの悲痛な決別ですら、このための序章のように思えてくる。そして結局、最後に鉄の玉座には誰も座らない。このサプライズも見事。
そして、2つ目のエンディングは、七王国を統べる王の決定。この結果もサプライズだろう。ウェスタロスの有力な諸侯が集まる場所で、ティリオンが王に推薦する名は、“三つ目の鴉”となったブラン(アイザック・ヘンプステッド・ライト)。その理由は「何より強いのは物語であり、ブランはすべての物語の番人だから」。
この「何より強いのは物語」という主張は少々唐突に登場するが、これこそがクリエイターコンビ、デヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスが描きたかったことであり、この作品全体のテーマだろう。そして、これまで長期に渡って“物語の力”で酔わせてくれた、この作品にふさわしい。このテーマを強調するように、女騎士ブライエニー(グウェンドリン・クリスティー)はジェイミー(ニコライ・コスター=ワルドー)の物語を書物に記し、サム(ジョン・ブラッドリー)は戦いの歴史を書物に記すのだ。
最後、3つ目のエンディングでは、その後の人々の状況と、これから行く道が丁寧に描かれる。この長さがたっぷりあるのがいい。何しろこの長い道のりを共に歩いてきたファンは、結果を観ただけでは満足しない、その余韻にたっぷり浸りたい。それに、ずっと観てきた登場人物たちがどうなったのかをしっかり見届けないと物語が完結した気分になれない。そんなファンの気持ちに、クリエイターたちはしっかり答えてくれる。
そして、彼らの行く道はどれもが腑に落ちる。それぞれが、その道を選ぶだろうと思われる道を選び、そのことで喜びや希望を手に入れる。ティリオンが仕切る御前会議の顔ぶれにも納得、サンサ(ソフィー・ターナー)とアリア(メイジー・ウィリアムズ)の選ぶ道にも納得だ。
やはり最後に描かれるのは、ジョン。“冥夜の守人(ナイツウォッチ)”になることを命じられたジョンが、守人の砦の門を開けたとき、野人のトアマンド(クリストファー・ヒヴュ)が待っているのが目に入ると、彼が孤独ではないことがわかって思わず目頭が熱くなる。ジョンがこの地で、彼の白いダイアウルフのゴーストという、彼を無心に慕う存在に再会するのも胸を熱くする。そしてジョンが野人たちと共に、権力の椅子とは無縁の場所に歩みを進めて行くという光景は、まさにこの物語の終わりに相応しいではないか。
こうして最後の光景を見届けて、改めてこれまでを振り返れば、あらゆる人々、あらゆる出来事が、この美しい終わりに向けて見事に編み上げられていたように思えてくる。そして、このシリーズの物語構成の緻密さ、登場人物たちの描写の巧みさに改めて感動せずにはいられない。それから、もう一度、最初から観たい、そんな気持ちになってしまうのだ。
<今週の名セリフ>
「この世に物語以上に強力なものはない」——ティリオンが諸侯たちへの演説で
この前に「人々を団結させるものとは? 軍? 金? 旗? 物語だ」があり、この言葉の後に「物語は誰にも止められない。敵に敗れることもない」と続く。これがクリエイターコンビ、デヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスの信念だろう。彼らはそれを「ゲーム・オブ・スローンズ」という作品を創り出すことで実証してみせた。それを高らかに宣言するのが、ティリオンのこの言葉だろう。
そんな2人はすでに『スター・ウォーズ』シリーズの新たな三部作を手がけることもが発表されている。舞台はガラリと変わるが、そちらでもこの信念の実践を試みるのに違いない。
「ゲーム・オブ・スローンズ 最終章」はBS10スターチャンネルにて4月15日より<世界同時放送>
「ゲーム・オブ・スローンズ」は、スターチャンネルオンデマンド、Hulu、Amazonプライム・ビデオなどで視聴可能