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『新聞記者』シム・ウンギョン&松坂桃李インタビュー

 『デイアンドナイト』の藤井道人監督が、東京新聞記者・望月衣塑子の同名ベストセラーを原案に撮り上げた骨太エンターテインメント『新聞記者』。ダブル主演を務めるのは、新聞記者・吉岡役のシム・ウンギョン&内閣情報調査室に勤めるエリート官僚・杉原役の松坂桃李だ。インタビューに流暢な日本語で受け答えをするシムと、多彩な役柄にチャレンジし日本映画界に爪痕を残し続ける松坂。日韓が誇る若手表現者の2人が、お互いへのリスペクトを明かした。(取材・文:柴田メグミ 写真:サイトウ ムネヒロ)

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芝居のスパークを感じた瞬間

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Q:日本では珍しいタイプの社会派エンターテインメントですが、出演の決め手となったのは?

松坂桃李(以下、松坂):僕はウンギョンさんと共演できることが大きなポイントでした。今回のお話をいただく前から、『サニー 永遠の仲間たち』や『怪しい彼女』などウンギョンさんの作品を観ていて、ひとつの表情からいろんな感情が伝わってくるのがすごく印象的でした。こういう女優さんもいるんだなってずっと思っていたので、まさか共演できるとは。すごくうれしかったです。そして藤井監督と仕事ができること、メッセージ性を感じる物語が面白いと思ったことの3つです。

シム・ウンギョン(以下、シム):私も松坂さんと同じ理由です。真面目な俳優さんというウワサを聞いていましたし、私の大好きなドラマ「ゆとりですがなにか」でもそうですが、芝居そのものから真面目さが感じられるのも素晴らしい。撮影現場でどう芝居するかをひとりでずっと考える松坂さんの姿を見て、私ももっと頑張らなきゃと思いました。私はちょっとノンビリしちゃうタイプなので(苦笑)。

松坂:いやいやいや(笑)。ウンギョンさんの表情や表現から本物の感情が伝わってきて、たくさん刺激をもらいました。監督の言葉や撮影現場にあるたくさんのヒントを吸収しながら、毎回、滑らかに変わっていく。すごいですよ。しかも今では、撮影当時よりもさらに日本語がうまくなっている! 撮影が終わってからまだ半年くらいしかたってないんですよ。そんなストイックさも含めて、本当に僕は尊敬します。

シム:ありがとうございます(照)。撮影現場ではたくさん松坂さんに助けていただきました。特に印象的だったのは、(高橋和也が演じる杉原の元上司の)神崎さんの家で、羊の絵が描かれたFAXについて会話するシーンです。2人の信念や考え方がよく見えるシーンで、芝居のスパークをすごく感じる瞬間がありました。俳優として、すごく楽しかったです。

松坂:ありがとうございます(照)。あそこはとにかくヒリヒリした緊張感のあるシーンで、ある種ちょっとしたぶつかり合いみたいなところもあったはずです。杉原として作品のなかに生きていくうえで、とても重要なシーンだったと思いますね。

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『新聞記者』は人間ドラマ

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Q:役柄の職種について、独自にリサーチなどはされましたか?

松坂:杉原の所属する内閣情報調査室の仕事は非常にベールに包まれていて、詳細はあまり明らかにはなっていないんです。台本に書かれている杉原の言葉や行動を頼りに、監督と相談しつつ、一つ一つの感情を大事にしながら演じていきました。

シム:私は実際に新聞社へ行って、記者の方々と話すことができました。新聞がどうやってできるのか、皆さんの努力や大変さを知り、吉岡の役づくりの参考にしました。

Q:お芝居に関しての挑戦はありましたか?

松坂:これだけ葛藤し自問自答のすえに決断し、あのようなラストシーンを迎えるというのは今までやったことのない芝居の流れでした。ひとりの人間としての立場や感情を踏まえたうえでの、杉原の最後の表情。僕としては初めてでしたし、ウンギョンさんとの間でどういう化学反応が生まれるかも、興味深かったです。

シム:私にとっては、この作品のすべてがチャレンジでした。まず日本語のセリフ、それも普段の生活では日本の方も使わない言葉も多かったので。発音やイントネーションを一生懸命に頑張って練習しました。そして私は『新聞記者』を人間ドラマだと思っているので、人間味をちゃんと見せることに集中しました。

Q:完成作をご覧になって、何を感じられましたか?

松坂:ひとりでも多くの方に観ていただきたいという気持ちが、より一層強くなりました。そして真実にしろ偽物にしろ、いろんな情報が誰でも手に入る時代だからこそ、自分の目を養わないといけないと。情報に流されずに、きちんと自分の考えを持つことが大事だと改めて実感しました。

シム:松坂さんがおっしゃったとおりで、この映画の持つメッセージを観客の皆さんにも感じてほしいです。そしてサスペンス映画としても楽しんでほしいです。この世の中をどう生きるのかを考えるきっかけになればうれしいです。

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いかに作品の一部になれるか

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Q:海外作品の撮影現場では、語学力以外では何が大切だと思われましたか?

シム:いちばん大事なのは、海外でも韓国のでも、芝居を考える真心ではないでしょうか。キャラクターの何を見せたいのかを考え、キャラクターと私がひとつにならないといけないと思っています。

Q:俳優としての松坂さんの理想や信念も教えていただけますか?

松坂:いかに自分がその作品の一部になれるか、ですね。カメラマンさんや監督、照明部や録音部などいろんな部署があるなかで、自分も俳優部のひとつの歯車として、きちんと作品の役に立てることがいちばん大事です。

Q:ウンギョンさんとの共演が実現して、海外作品出演への意欲が湧いてきましたか?

松坂:異なる国や環境で育った役者同士が同じ空間でお芝居をするのは、すごく刺激的だと今回初めて知ったので、またそういう機会に恵まれるとうれしいですね。できればもう1回、シム・ウンギョンさんと今度はコメディー作品で共演したいです。

シム:私も同じ気持ちです。最近シリアスな作品が続いていたので、『サニー 永遠の仲間たち』や『怪しい彼女』のような面白いコメディーを、松坂さんと一緒にやれたらいいなと思います。

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(C) 2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

権力とメディアの“たった今”を描く野心作で、孤高のキャラクターを演じたシムと松坂だけに、作品の世界に没入した撮影現場では歓談時間もなく「ポスタービジュアルのように距離があった」と笑い合う。そんな2人それぞれの言葉から、そして互いの言葉に耳を傾ける姿から、リスペクト感が自然にあふれる取材となった。再タッグを熱望する2人によるコメディー作品が、早く実現しますように……いち映画ファンとして、夢の再競演を願って止まない。

【シム・ウンギョン】ヘアメイク:遠山美和子(THYMON Inc.)、スタイリスト:Babymix 【松坂桃李】ヘアメイク:AZUMA(M-rep by MONDO-artist) 、スタイリスト:TAKAFUMI KAWASAKI (MILD)

映画『新聞記者』は6月28日公開より全国公開

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