間違いなしの神配信映画『天下無敵のジェシカ・ジェームズ』Netflix
神配信映画
ラブロマンス編 連載第2回(全7回)
ここ最近ネット配信映画に名作が増えてきた。NetflixやAmazonなどのオリジナルを含め、劇場未公開映画でネット視聴できるハズレなしの鉄板映画を紹介する。今回はラブロマンス編として、全7作品、毎日1作品のレビューをお送りする。
“好き”という気持ちが、どれほど人生を豊かにしてくれるものなのか
『天下無敵のジェシカ・ジェームズ』Netflix
上映時間:83分
監督・脚本:ジェームズ・C・ストラウス
出演:ジェシカ・ウィリアムズ、クリス・オダウド、レイキース・スタンフィールド
主人公はニューヨークのブルックリンで成功を夢見る劇作家のジェシカ・ジェームズ(ジェシカ・ウィリアムズ)。恋人デーモン(レイキース・スタンフィールド)と破局し傷心が癒えない中、ブラインドデートでアプリデザイナーのブーン(クリス・オダウド)と出会い、新たな人生を始めようと四苦八苦する姿をコミカルかつ演劇ネタもふんだんに盛り込んで描く。監督兼脚本は、『最高の家族の見つけかた』(2016)の脚本などを手がけたジェームズ・C・ストラウス。2017年にサンダンス映画祭でプレミア上映され、Netflixが全世界配信権を獲得した作品だ。
アメリカのコメディー専門チャンネル「コメディ・セントラル」の人気番組「ザ・デイリー・ショー」で活躍し、女優・コメディアン・脚本家・プロデューサーとマルチな才能の持ち主ジェシカ・ウィリアムズの個性がフルスロットルで弾けまくる。やけくそになって踊りまくったり、親友と赤裸々なセックス談義も現代的。戯曲はなかなか認められず、キャリアに行き詰まりながらも創作と子どもたちとのワークショップに情熱を傾ける。その日常は、誰にとっても“あるある”のほろ苦さが入り混じる笑いに満ちている。
例えばインスタグラム。過去を断ち切るためにジェシカの元カレのデーモン、ブーンの元妻マンディのアカウントを一緒にフォロー解除するが、すぐに後悔する2人は、ジェシカがマンディ、ブーンがデーモンのアカウントをフォローしてチェックすることに。最初は「君の元カレって超かっこいいね!?」とか「あなたの元奥さんのお料理って素敵」と無邪気に報告し合うが、お互いの距離が縮まっていけば、その意味合いも変化するわけで。さり気なくもインスタの扱い方を通してわかる心の変化は、どんな言動よりも、もしかしたら正直なのかもしれない。
ジェシカが白昼夢のごとくデーモンの幻影をみながら脳内で対話する姿にも共感しまくる。なんで別れたの? どうして? あなたのおかげで人生、何もかもがうまくいかないじゃない! と八つ当たり気味のジェシカのやるせなさ。さらに1つつまづくと負の連鎖は雪崩のように襲ってくるもの。ワークショップの子どもたちとうまくいかなかったり、大昔に離婚した両親のことも、大人になって自立した今でもまだ引きずっていることに気がついて落ち込んだり。そんなジェシカのどん詰まり感を打開するきっかけになるのが、トニー賞受賞歴のある女優で劇作家のサラ・ジョーンズ(本人)の存在だ。
舞台『Bridge and Tunnel』で高く評価されたジョーンズは、女性をエンパワーメント(力を獲得すること)する活動に貢献し、ユニセフ親善大使でもある。憧れてやまないジョーンズから、ジェシカは何を学んだのか?
本作はラブコメディーの体裁を取っているが、結局のところは“好き”が持つパワーについての普遍的な物語なのだ。“好き”に理由はいらない。血のつながりがあろうがなかろうが、“好き”を理解してくれない人たちに自分を合わせる必要はない。何かを、誰かを“好き”という気持ちが、どれほど人生を豊かにし、楽しくしてくれるものなのか。ジェシカの心からの笑顔が、何よりもそのことを伝えている。(今祥枝)